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アジア各国の3Dプリンティング事情は?掲載日:2019/03/05

先日Stratasys社のアジア太平洋地域会議がタイで開催され、参加してきました。世界的に見てもこの地域は3Dプリンティング産業の成長率が高いのですが、それぞれの地域からの参加者に聞いてみると少しずつ事情は違うようで、それはどうだったかというと...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

バンコクはアツかった!

Stratasys社の社員及び正規代理店によるアジア太平洋地域の会議は毎年初に毎回場所を変えて開催されますが、今回はタイ バンコクで先週開催され、筆者も参加してきました。

バンコクには初めて行きました。印象としては上の写真の通り、仏教にまつわる建物がたくさんあり、地震がないからか超高層ビルも寺院も細くて高い建物が多く、色鮮やかな花があちこちに咲いていて、新しいモノと古いモノ、きれいなものとそうでないものが入り混じっている感じでした。2月末でも昼から夜は日本の夏以上に蒸し暑かったのですが、朝は涼しく、南国特有の鳥の声が響いていて、良い感じでした。

ある企画で、タイ料理を作ることになり、パパイヤのサラダとトムヤムクンを作りました。といっても食材はほとんど用意されていて、切ったり混ぜたり煮たりするだけだったのですが、野菜、スパイスやハーブが独特で、加減が分からず、自分が作ったトムヤムクンを食べたらしばらく舌のアツさとしびれが治まらず、本場の辛さを思い知ることになりました。でも程よく辛い、また辛くない料理もたくさんあり、国産ビールもおいしくいただいてきました。

アジアの3Dプリンティングはどうなっている?

会議にはStratasys社のイスラエル、アメリカ本社やアジア太平洋地域の社員と正規代理店社員が一堂に集まり、いろいろな情報交換が出来ました。Stratasysだけで見てもアジア地域の成長率は世界の他の地域より高いとのことですが、それぞれ参加者に聞いてみると、地域ごとに少しずつ事情は違うようです。

今回印象的だったのは、インド地域が急成長していることでした。インドの代理店からの参加者は年々増え、また数年前は「まだ政府や教育機関以外はなかなか売れない」とのことで、「日本ではどんな活用方法があるのか?」と熱心に質問されることも多かったのですが、昨年は急速に販売台数も増え、公的機関や民間企業もF900などの大型プリンターを導入し始めたとのことでした。特に製造用治工具類への活用は急速に広まっているようで、これはもちろんまだ人的作業が多いので、軽く持ちやすい治工具の需要は他の地域より高いのかもしれませんが、インドはデジタルツールのスキルが高い人は多く、3Dプリンティングを取り入れ始めれば浸透はおそらく速く、3Dプリンティングを活用する意欲が感じられ、他の地域に追いつき追い越すのはそう遠くないと考えます。

3Dプリンティングでもアジアの最先端地域と言える中国は、インドには劣るものの高い成長率を維持しているようです。先日上海で開催された展示会TCT ASIAも日本よはるかに大きい規模で開催され、活況であったとのことことでした。

一方、韓国など比較的3Dプリンティングの発展がアジアの中でも早かった地域は、一時期の高い成長率に比べると緩やかになっているようで、背景には中国・アメリカの貿易問題の影響があると複数の方がおっしゃっていました。

ただ、例えば韓国は最近の統計調査で、製造にかかわる人口あたりのロボットの数が日本含めた欧米先進国の2倍弱になっているそうで、下のようなエンドエフェクタ、エンドオブアーム、グリッパと呼ばれる、つかむモノごとに必要な部品を3Dプリンティングで作る活用が増え、今後も急成長が見込まれます。

その他には、消費者向け製品の容器、パッケージは、おそらくeコマースの急拡大も関係していると思いますが、デザインの重要度が増し、それらをいかに速く最終商品に近いモックアップを作り、評価と修正を繰り返して早く発売するニーズの高まりからか、フルカラープリンターJ750と、半透明で発色の良いVeroVivid材料によるモックアップモデルへの活用も急増が見込まれるようです。

自動車のデザインも似ている傾向にあり、ライト類のデザインがクルマの印象を左右する重要な要素になっていることから、これらもデザインの早い段階で最終品に近いモックアップを速く多数作る需要が高まっているようです。また、中国ではユーザーが自分で好きなデザインをして、自動車メーカーがStratasys 3Dプリンターで作るアクセサリーパーツの販売も始まるそうで、マスカスタマイゼーションと呼ばれるモノ作りがアジアでも広がりそうです。

日本はどうする?

このようにアジア太平洋の中だけでも地域ごとにそれぞれ3Dプリンティング事情は異なるのですが、複数の市場予測レポートで世界全体では年率20%近い成長に対し、日本は他国よりはるかに低い成長率を予測しています。ということは日本は3Dプリンティングに関して言えば既に「後進国」になっていて、世界との差は年々広がることを意味しています。もちろんそれでも製造や経済の国際競争力が保てれば何の心配もありませんが、製造労働人口の低下、高齢化、内需の低下、国際関係の複雑化が進む中で、これほどの大きな差は何かの影響を及ぼすと考えてもおかしくありません。

では日本はどうすればよいかを考えるのに、今回ヨーロッパからのゲストに伺ってとても参考になった話として、人が3Dプリンティングなどの新しい技術に対する魅力の度合いを定性的に表す式をご紹介します。

魅力の商=(欲求 × 量)÷(不確実性 + 努力)

この商が高いほど魅力を感じ、新しいものを取り入れる動機が高まるのですが、筆者が日本で感じるのは、「分子」は高くても、「分母」を実際以上に高く見積もられるので、商が低くなり3Dプリンティングが使われないケースが多いのではということです。「不確実性」も「努力」も多く正しい情報を客観的に分析すると、想定より低くなることもあると思います。逆に欧州亜の3Dプリンティング先進地域はまず「欲求」がとても大きく、「量」も大きく見積もる傾向にあるので、分母が大きくても商を大きくとらえるケースが多いと考えています。

魅力の商を見かけだけ高く見せるのは売り手にも買い手にも良くありませんが、低く見積もりすぎるのも良くなく、また分子の「欲求 × 量」が十分大きいテーマを見つけ、分母を適正に見積もれば、取り組み始めるのに十分な「魅力の商」になると考えています。みなさんはどのようにお考えでしょうか?

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