製造ソリューション事業本部

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デザイナーの役割と3Dプリンティングの関係は?掲載日:2019/11/06

先週まで東京モーターショーが開催され、その会場内で行われた「国際学生EVデザインコンテスト2019」の審査表彰イベントに参加してきました。そこでの素晴らしい作品や、世界で活躍された日本のカーデザイナーの方々によるパネルディスカッションから見て考えた、これからのデザイナーの役割と3Dプリンティングの関係は...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

「国際学生EVデザインコンテスト」とは?

ラグビーワールドカップも終わり、「にわか」ファンになった方も含め、それぞれ楽しまれた方も多いかと思います。筆者は横浜に住んでいても試合は見に行きませんでしたが、電車に乗っても普段以上に多くの外国人の方が乗っていたりして、ワールドカップの盛り上がりを感じることが出来ました。ラグビーに限らずスポーツは人と人をつなげる何かのチカラがあるようで、そのようなつながりがいろいろな課題解決のチカラになればよいと思っています。

さて、行かれた方もおられると思いますが、過去のコラムでもこちらで紹介してきましたが、2019年10月24日(木)~11月4日(月・祝)に第46回東京モーターショー2019が東京ビッグサイトで開催され、その会場内で10月27日(日)に「国際学生EVデザインコンテスト2019」の最終審査、表彰のイベントがあり、筆者も参加しました。このコンテストは過去にもこのコラムでご紹介しましたが、一般社団法人電気自動車普及協会(APEV)が2年に1回開催し、日本及び海外の2019年4月時点で18歳以上の学生によるチームにより、共通課題「ゼロエミッションEVの可能性を最大限に活用した未来のモビリティとその社会のかかわりのデザイン提案(地上を走るのを基本とする)」に対してのデザイン提案を競うコンテストです。弊社丸紅情報システムズ株式会社も協賛企業として参加しました。詳しくは下記コンテストホームページをご覧ください。

http://www.apev.jp/contest/

「Response」でも下記の通り報道されました。

https://response.jp/article/2019/11/01/328293.html

終了後の記念写真撮影の様子です。

詳しい結果は別としまして、最終審査には日本だけでなく、韓国、チュニジア、カナダ、インドを含む10チームがノミネートされ、最終プレゼンテーションをし、審査の結果最優秀賞はHAL東京のチーム「APEX」が受賞されました。

右から2人目の方が持っているのは、コンテスト審査委員長 山下敏男様がデザインされ、丸紅情報システムズ株式会社がFortus450mc、ASA樹脂一体造形したトロフィーです。

チームAPEXの作品は、世界の子供の教育格差問題を改善するための提案で、アフリカ エスワティニ王国での利用を想定し、学校に通えない子供たちを乗せて広場に集め、インターネット通信とロールスクリーン式ディスプレイにより離れた世界各地の先生の授業を受けられるようにするための電気自動車(EV)をデザインされました。

プレゼンテーションパネルはこちら。

このチームは手作業によるミニチュア模型も作られていました。

審査員の方々の総評でも、「10チームの作品はどれも完成度が高く順位は僅差だったが、世界的にも重要な教育の問題を取り上げ、具体的な課題設定をし、EVによる社会課題解決の新たな可能性を示された」点が高く評価されたようです。

全てのチームの作品は全て3次元CGデータとしてデザインされ、プレゼンテーションでも立体的な画像や動画を効果的に使われ、今の学生の方々の発想の豊かさとそれをデジタルで表現するスキルにとても感心、感動しました。

 

これからのデザイン、デザイナーの役割とは?

全てのコンテストの作品は、医療格差、地域過疎、災害、交通弱者、自然環境破壊など日本や世界が抱えている問題や課題をテーマとし、EVの使い方によりそれらを解決改善する提案で、このコンテストだけでなく、一般社会での「デザイン」や「デザイナー」の役割は、ただのカタチを創ることではなく、人の生活や社会の仕組みまで多くの人たちを巻き込みながら作っていくことだとあらためて考えるきっかけになりました。

実はこのイベントではコンテストの審査表彰だけではなく、電気自動車やカーデザインに関する講演やパネルディスカッションがあり、過去2回と同じく今回もその内容から多くのことを学ぶことが出来ました。

基調講演は東京大学大学院教授 堀 洋一氏による、キャパシタによるワイヤレス給電の研究内容でした。現在は蓄電池が主流ですが、充電時間やエネルギーロスの課題もあり、キャパシタの利点や可能性を知ることが出来ました。

またシンポジウム:-自動車業界100年に一度の大変革期に於ける- 「デザイン教育の在り方とは!」では、
中村史郎氏(CEO (株) SHIRO NAKAMURA DESIGN ASSOCIATES、元日産自動車㈱専務執行役員)、
奥山清行氏(工業デザイナー、KEN OKUYAMA DESIGN 代表)、
長屋明浩氏(ヤマハ発動機㈱執行役員デザイン本部本部長)
という、世界で活躍される日本の一流デザイナーをパネリストに迎え、モデレーターである山下敏男氏(INTERROBANG DESIGN 株式会社 代表、APEV理事、元日産自動車デザイナー)により、他では聞くことのできない、貴重な議論を聞くことが出来ました。

もちろん全てをお伝えすることはできませんが、これからのデザイン、デザイナーの果たすべき役割、そのための特に日本での教育の現状の課題と改善策について話されたことから、筆者が解釈したポイントを以下に挙げます。

・これからは社会や消費者の需要に「適合する」のでは間に合わない。デザイナーは「ヒトの経験を創る」ことが大事

・これからのデザインは、言葉や理論で説明できず、予想も出来ない「アート」「文化」の範囲になる

・デザイナーがすべきは「提案する」「つなぐ」「積み上げる」。そのために必要なのは様々な人や企業による「チーム」を作るチカラで、チームを活かすためにこれまで存在した企業や個人の「機密」は無くなっていく

・これからのデザイナーに求められるのは「デザインのスキル(手書きスケッチは重要)」「思考力」「先見性」。デザイナーは「素人代表」であるべきで、人とコミュニケーションが出来、ストーリーを語れるため「言葉のデザイン力」も重要。しかし日本の現状は文系理系を分けてしまう教育や議論や幅広い経験をさせる教育が足りないこと。「好き勝手」と「責任」の両方を持たせる経験をさせ、次世代のリーダーを育てたい。

これからのデザインと3Dプリンティングの関係

シンポジウムの議論から、「乗り物」のデザインやデザイナーに限らず、これから求められる「つながる」「経験を創る」はものづくり全てに当てはまるのではと考えました。特に、「つながる」、そのために「伝える」ことの大事さが更に増していきますが、3Dプリンティングがそのための道具として有効な点があり、それはヒトが自分の考えを「手にして、使って、体験できるモノ」を、コンピュータを使って比較的簡単に、速く、作る技能が無くても作ることが出来、それにより言葉だけでは伝えきれない「ストーリー」や「経験」を、より多くのまたは離れたところにいる他のヒトに伝え、チームのチカラをより発揮するための道具であるということです。

最近はデザインはカタチを創る行為だけでなく、モノごとを考える、または企業を経営することにも活かす、
「デザイン思考」「デザイン経営」も多くの企業で使われ始めています。その中で3Dプリンティングの役割も増えていくと思います。その事例などもこのコラムや弊社のホームページからお伝えしていきたいと思いますが、弊社のお客様の様々な活動をご紹介する特集「Inifit Ideas」で最近2つの新しい事例が公開されました。それぞれ日本の文化伝統の継承や地域社会と学生とのつながりを生む教育、また労働人口低減の課題にロボット技術で挑む研究など、今回の話題にもつながる内容です。是非お読みください。

 

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