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ビジネスリスクと3Dプリンティングが出来ることは?掲載日:2020/02/19

ものづくりとビジネスのグローバル化が進む中、利点がある一方リスクも表裏一体の関係にあります。そのリスクを減らしたり、乗り越えていくために3Dプリンティングに出来ることは何かを考えてみると...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

ものづくりとビジネスのグローバル化のリスク

前回のコラムを書いた時には想像していなかったのですが、ここ2週間で新型コロナウイルスの影響は急激に広がっていて、かつ「終わりが見えない」という大変難しい状況にあり、お読みのみなさまの中にも公私にわたり直接または間接に影響を受けられている方もいらっしゃると思います。今朝も通勤電車は混んでいて、大勢の方が閉じた空間にいるという、普段当たり前のことが「リスク」になってしまう状況にあると思います。

3Dプリンティングのビジネスにおいても、2月に中国で行われる予定だった展示会が無期延期になったり、国内でも筆者が講演予定であったイベントが中止されたりして実際の影響が出てきていますし、これからも増えてくることは間違いないでしょう。もちろん経済全体がグローバル化している現在ですが、特に製造産業は中国への依存度が高く、他の産業以上に影響が大きくなる可能性もあると思います。

このような時にこのコラムで取り上げることは適切ではないかもしれませんが、敢えて筆者個人として考えたことをお伝えし、リスクを減らしたり、乗り越えていくために3Dプリンティングが出来ることは何かをみなさんと共に考える題材に出来ればと思います。

ビジネスリスクに対して3Dプリンティングが出来ること

今回起きたことで直面しているリスクに次の2つがあると思います。

①モノが移動できないリスク
②ヒトが移動できないリスク

これらは今回の件に限らず、自然災害や政治的な問題によっても起こりうるリスクで、グローバル化の利点と表裏の関係にあり、もちろん3Dプリンティングが出来ることはごくわずかだと思いますが、平時に知っておいたり、少しずつ準備をしておいたりすることで悪影響を減らせる可能性があると考えています。

① モノが移動できないリスク

これまで、特に型成形で生産する部品は、特定の場所、企業、工場で集中生産し配送する、また、安定供給のために生産地でも需要地でも相当の在庫を持つという方法が主でしたが、3Dプリンティングによる生産の利点の一つとして、分散かつ需要地の近くで生産できること、輸送時間やコスト、またオンデマンド生産により在庫が減らせる可能性があることが以前より知られています。もちろん適用には限られた条件がありますが、製品開発当初から3Dプリンティングでの生産によるサプライチェーンを組んだ場合は、「地産地消」であれば供給や物流停滞のリスクは少ないですし、仮に1か所の生産地の問題で供給が滞ったとしても、他の生産地に同じ装置と材料と造形条件があれば短期間に切り替えて生産再開が出来る場合があります。社内のプリンターでなくても、復旧まで一時的に社外のプリントサービスを使うことも考えられます。

例えば生産機械の部品を海外や遠隔地で製造していて、その供給が滞った場合、もし3Dプリンティングを活用出来る環境があれば、供給が元に戻るまでの短期間の「代用品」を3Dプリンティングで作ることによって機械を稼働させることが出来る可能性もあります。

②ヒトが移動できないリスク

製造だけでなく研究開発においても、国内外でヒトの移動が制限されると情報伝達の遅れによる障害が生じ、場合によっては製造以上の損失につながる場合もあると考えられます。例えば人が移動して会議でのデザインレビューにより開発を進めていた場合、ネット会議であればヒトの移動は無くて済みますが、それぞれの場所で3Dプリンティングが使える環境にあれば、モノやヒトを送ることなく、データを送り3Dプリントすれば同じ現物を手に取りながら意見や情報交換もできますし、仮にある開発拠点が機能しなくなり、他の拠点で引き継いだりする場合でも、それまでの試作品を送ることなく、新拠点ですぐに作って再開することも考えられます。

このような考え方は「絵に描いた餅」ではなく、特に航空機体やエンジンのメーカーが、部品のサプライチェーンを変える目的で3Dプリンティングの活用研究と、いま出来るところからの部品製造を積極的かつ急速に進め、既に実現している背景には、前述のようなビジネスリスク対策も含まれていると考えています。(下の写真はformnext展示会にて航空機の部品の左 従来品と、右 品質認証を受けた3Dプリント品の例)

繰り返しますが、全ての製造に3Dプリンティングが使えるわけではありませんが、これからも変わり続けるビジネスリスクを少なくする観点でも、「地産地消化」「分散化」「柔軟化」「事業継続性」も期待できる効果として3Dプリンティングを含めたデジタルエンジニアリングの活用に取り組む価値は今後も高まると思います。みなさんはどのようにお考えになるでしょうか?

「次世代3Dプリンタ展」のお知らせ

先回のコラムでもお伝えしましたが、2月26~28日に千葉の幕張メッセで「次世代3Dプリンタ展」が開催されます。

主催者ホームページ https://www.japan-mfg.jp/ja-jp/about/am.html

丸紅情報システムズ株式会社の出展はありませんが、弊社説明員が下記2つのブースに参加し、筆者もどちらかのブースか会場内にいる予定です。

株式会社ストラタシス・ジャパン 【小間番号】 50-55

Desktop Metal(アメリカ本社) 【小間番号】 56-30

来週の時点で状況がどうなっているかわかりませんが、ご来場される場合は是非お立ち寄りください。


【2月25日上記一部訂正】2月25日のストラタシスジャパン様の発表により、新型コロナウイルス対策により展示は縮小され、弊社説明員は不参加となりました。それに伴い、筆者も不参加と致します。申し訳ございません。

 

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