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*2 フォトリソグラフィ(Photolithography) |
2つの融合が解決策になる従来、電子回路からなる半導体と、センサ素子からなるMEMSは、個別に製作し、最終工程で1つのパッケージの中に実装するのが通例である。「貫通電極により半導体の3次元化は加速すると思います。またMEMSは、材料が限定されますが、すでに3次元積層化の方向に動きつつあります。この2つが融合することで、新たな高機能デバイスがぞくぞく出現するのは間違いありません。また、ウェハ同士で接合するWOW(ウェハオンウェハ)で、パッケージまで完成させることができれば、大きなコストダウンにつながるでしょう」 山内社長は、ここに新たな付加価値が生まれると考えた。 「3次元積層化のいいところとして、既存の半導体製造ラインで流せることがあげられます。ウェハやチップの積層装置だけ新たに設備投資するだけで実現できます。また、最後の実装工程としてウェハレベルでパッケージできれば、今の後工程と呼ばれる組み立て工程はほぼ不要となり、画期的な削減が達成できるでしょう」 新たな開拓分野の目標は決まった。しかし3次元積層化には、いくつかの難しい課題があった。この技術で大きな壁となっていたものがアライメント(位置決め)である。「3次元積層化」では電極ピッチの微細化にともない、ウェハ同士やウェハとチップ、チップ同士を、理想的には半導体配線ピッチまで、寸分のズレなく積層しなければならない。現在の半導体製造ラインの中のフォトリソグラフィ*2工程で使用している露光装置(ステッパー)であれば、物質と物質を接触させるわけではないので、平面方向の2次元的なアライメントで済む。一方、2枚を貼り合わせて加圧する接合においては、それに高さとあおり方向の軸を加えた3次元的なアライメントが必要。今までは半導体の工程には存在しなかった、“物理的な接触”が必要で、その接触によるわずかな位置ずれが、アライメント精度を悪化させる致命的要因と考えられていた。それは、実績のない非常に難易度の高い技術である。 さらに前述したように、MEMSで要求される真空封止を伴う接合では、高温加熱による陽極接合技術しかなかったため、異種材料接合による熱膨張差や、ガス発生の問題を避けて通るわけにはいかなかった。 「シリコンを材料とする半導体ウェハも含め、異種材料のウェハ同士を貼り合わせるには、熱による材料の伸びを抑えるために低温接合プロセスは必須です。さらに、半導体製造ラインでは、ウェハの大口径化が進んでいます。高温ではウェハを保持するステージに熱膨張によるうねりが生じ、強い圧力を、大口径のウェハ全体に均等にかけるのは非常に困難で、大きくなればなるほど難しくなります。つまり解決するには、低温、低加圧での接合プロセスが必要となります」 「高精度の3次元アライメント」、「低温、低加圧接合」という“夢の技術”に取り組んできたのが、山内社長率いるボンドテックなのだ。 |
「常温接合」という足がかり大手メーカーに勤務していたとき、とある学会で1人の人物を紹介される。表面活性化による常温接合技術の第一人者、東京大学の須賀教授。そのとき初めて、「超真空中常温接合」という技術を知った。半導体の金属電極を利用しての接合では、ハンダからなる合金物質を加熱溶解し、電気的な接合も行う拡散接合技術がよく知られている。ところが、須賀教授の技術を使うと、熱を加えることなく常温で、金属同士や異種材料同士をくっつけることができる。 |
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*3 シーケンシャルプロセス *4 ハイブリッドボンディング |
壁をこじ開けるその方法は次のようなものだ。1つめにはまず材料を接合面が酸化しにくく、付着物が付きにくい性質を持つ金や銅に限定することによって、低真空化が実現可能となる。数Torrの真空度で扱えるプラズマが発生するレベルの処理で表面活性化することができる。金に限定すれば、表面活性化後1時間以内であれば大気圧中でも接合が可能であることがわかった。さらに量産化に向けては、必ずしも常温、無加圧にこだわる必要もなく、多少の加圧や150℃以内の低温加熱により再付着物層を除去して強固な接合を得ることができた。この方法であれば、数Torrという低真空や大気中、低温、低加圧プロセスでの接合が可能となり、電極やMEMSの封止接合にも応用できた。また、2つめにシーケンシャルプロセス*3を用いたプラズマ表面活性化により、シリコンやガラス、酸化膜付ウェハを低温、低加圧、大気中での接合を実現することに成功した。3つめには従来の陽極接合の原理とシーケンシャルプロセスを融合したハイブリッドボンディング*4と呼ぶ新しい実装方法の提案で、従来の陽極接合に比べて低温、低ガス化を実現した。静電力によるボイドレスで、低温、低加圧、かつ短時間での接合に成功した。さらに4つめには、従来の超高真空中での原子ビーム接合も改良を加え、大面積の接合も可能で、さらに真空度レベルを下げ、より扱いやすくすることができる方法を開発した。そして山内社長は、もう1つの課題、アライメント技術においても従来とまったく違った発想によって壁をこじ開ける。これまで、ウェハ上に回路を露光する場合、ステッパーと呼ばれる高額な装置が使われていた。サブミクロンオーダーの高精細な回路を焼き付けるために、微細な振動すら許さない高精度の耐震構造が必要であった。大きく重い御影石などの石定盤を、装置の下に敷いて振動を防ぐ。また熱膨張による誤差を防ぐために、装置の温度を一定に保たなければならない。非常に厳しい温度コントロールができる環境下での運用が必要だ。つまり従来の微細化のための装置設計の発想は「下から積み上げて精度を維持する」という発想だ。しかしこの方法だと大掛かりな構造となってしまい、量産用のステッパーは1台何十億円という高額な装置となってしまう。一方、ボンドテックのアライメント手法は、「下から積み上げて精度を維持する」のではなく、「位置合わせをしたいものを直接把握し、それを接合直前にコントロール、つまり対象物を直接微小に動かせば良い」というごく当たり前であるが、新しい発想からなる。対象物をチャンバの外の離れた位置から赤外線カメラで撮影し、独自開発した「マジックビジョン(MagicVision)」という画像認識システムで赤外線透過画像を高精度に認識する。さらに、対象物が接触する直前に6軸方向を位置制御するこれもまた特殊なピエゾアクチュエータ*5で、ずれた寸法量を微調整し、数十ナノレベルの位置決め精度を実現した。また、真空チャンバ内では使用することが不可能なベアリングを使用しないコンパクトな機構から、超高真空チャンバ内にもアライメントするユニットを搭載することが可能で、大気中と同じ精度を維持することができるのである。山内社長が開発した装置は接合後で0.2μm。これにより、これまでアライメントが難しかった超微細配線同士の接合が十分に可能となった。現在は一桁下の数十ナノレベルの開発を行っている。そして驚くべきことに、装置1台あたり2,000万円から、量産向けの完全フルオートシステム開発でも2億円以下という価格帯を実現した。 |
2つの革新現在、ボンドテックではナノレベルの微細回路を転写するナノインプリント装置の開発も手がけている。 |
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夢を追う、実現する山内社長は言う。「こうした開発には膨大な研究開発費が必要で、いつ回収できるか分かりません。私自身の人生をかける覚悟が必要です。社員の生活もかかっています。プレッシャーで押しつぶされても不思議ではありませんね」 ではなぜ、それに打ち勝つことができるのか。 「ひとつは、“把握する”ということがプレッシャーを軽減してくれます。開発という仕事は、人頼りでブラックボックスが存在すると予想がつきません。すべてを把握して、自分の手の中で動かすことで、最悪の事態と最大の成果をリアルタイムに把握できます。そうすることでプレッシャーはかなり軽減できます。また、プロジェクトの最初と最後を押さえること。商品開発であれば、客先や市場からの要望と完成した商品の完成度を必ず自分で触って把握する。こうすることで、問題解決がすばやくフィードバックされる上に、そこから新たなアイデアも生まれてくるのです」 さらに、もっと重要なことがあると言う。 「もう1つは、かなえたい夢があることです。表面活性化接合技術、ナノインプリント技術を活用し、半導体とMEMSの融合デバイスの製造を可能とする、付加価値の高い製造システムを世に立ち上げること。日々革新的な技術を研究されている先生方の研究成果を具現化したいという夢があります」 淡々とした語り口調であるが、不思議と強い思いが胸に刺さってくる。夢への渇望をあらためて感じるのは、私だけではないだろう。 「当社は開発のスピードを生命線とし、社員が十名未満しかいないにもかかわらず、大企業なら3年はかかるこうした商品を、半年で開発しています。それをやり遂げているのは、志を共にしたメンバーの結束力と集中力、高い技術力がなせる技なのです」 夢は俊足である。捕まえるためには、走り続けなければならない。山内社長はこれからも半導体業界を全力で走り抜けていく。 「このスピードを武器に、高い技術をアイデアで差別化した知的財産を、次々に商品化していきます」 山内社長は、アイデアは夜眠っているときに生まれるという。 「仕事量をこなすのは昼間ですが、頭脳の使用率は表面の10%ほどだけのように思いますね。夜、浅い眠りのとき、無意識の中、問題解決の道を探ると、頭の奥から不思議とアイデアが浮かび上がるのです。そのたびに寝床から身体を起こし、枕元にあるメモ帳に書き留めていきます」 おかげで寝不足になることもしばしばだとか。山内社長は出張のたびに枕を持ち歩く。睡眠が一番の贅沢だという。 「社員や協力スタッフの努力に報いるためには成功しなければならない。そうした思いがあるからこそ、踏ん張ってこれたのです」 当面の目標はアプリケーションを1つでも多く立ち上げること。具体的な数字を聞きたくなるが、 「年商ですか?ひとつアプリケーションが立ち上がると年商100億ぐらいは自然とついてくると思います」 目標としているのは、そこではないようだ。 「これからも大手メーカーができないことをどんどんやっていきますよ」 半導体の変革という夢の足音が山内社長の耳に大きくなり、おぼろげだったその姿は、はっきり実感できることころまで来ているのかもしれない。 |
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