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CNano Technology 導入事例

カーボンナノチューブ

すでに、20年近くもの歳月が流れた。
1991年、画期的な1つの素材が発見される。
カーボンナノチューブである。
その優れた数々の特性から、瞬く間に普及していくかに思われたが、
いまだ我々の生活の隅々にまで行き渡っているとは言いがたい。
「それは、カーボンナノチューブには普及を妨げる壁があったからです」
CNano Technology社(以下、シーナノ社)のシンディ・ウー社長は言う。
「でも、それらの問題もようやく克服することができました。
これからカーボンナノチューブは普及し、我々の未来も変わるはずです」
“20年の沈黙”を打ち破ろうとする、2007年設立のベンチャー企業を追った。


カーボンナノチューブについて

カーボンナノチューブは、直径0.7〜70nm(1nmは1mmの百万分の1)で、長さが数10um(1umは1mmの1000分の1)程度の円筒の形を した炭素の結晶で、新素材として大いに期待されています。丸紅情報システムズでは、シーナノ社製の多層カーボンナノチューブ「FloTube 9000」を中心に、その純度や形状など、ご要望にあわせて販売しています。多層だけでなく、単層・二層のカーボンナノチューブやマスターバッチ、リチウ ムイオン電池用導電性ペーストも取り扱っています。

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カーボンナノチューブの普及を阻むある理由

シンディ・ウー氏好青年が、そのまま社長になったような誠実そうなビジネスマンだった。
シンディ・ウー氏。シーナノ社の社長兼CEO。中国で生まれ、1983年に交換留学生としてアメリカに留学したのち、ロスアラモス国立研究所、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ヤフーなど名だたる研究所や企業でキャリアを築いてきた。
「中国・上海の復旦大学では物理学を専攻し、英語もほとんどわからない状態で渡米しました。留学先の大学で博士号を取得して研究者としてスタートしましたが、やがてビジネスの世界に興味をもつようになり、複数の企業で事業戦略などを経験したのちに、シーナノ社の社長に就任しました」
シーナノ社はシリコンバレーに2007年に設立されたばかりのベンチャー企業。カーボンナノチューブの専業メーカーである。
1991年、現在は名城大学教授の飯島澄男氏によって発見された素材で、カーボン、すなわち炭素でできており、六角形がいくつも結合した姿は蜂の巣のようでもある。直径は文字通りナノメートル単位(10億分の1メートル)と極小だが、その特性が徐々に明らかになるにつれ、一躍脚光を浴びることになる。
重さは、「軽い」といわれるアルミニウムの半分ほどしかなく、熱の伝わりやすさを示す熱伝導性は銅の約10倍、引っ張り強度は鋼鉄の約20倍にも達する。さらに電気伝導性、すなわち電気が流れる量は銅の約1,000倍もあり、水素の貯蔵能力も最大で13~14%ある。また、いくら折り曲げても簡単に劣化しないしなやかさをもち、薬品に対しても強い——。
こうした数々の優れた特性から、半導体、自動車用電池や薄型ディスプレイ、医学分野などへの応用が期待され、飯島教授はノーベル賞候補に挙がるほどだ。
しかし、カーボンナノチューブはその注目度に反し、ほとんど普及していないのが現状である。なぜなのか?
「1つは安全性に関する悪評が先行し、各企業の営業的な決定権者が商品化できるのかどうかの判断をするのに時間がかかったこと。もう1つは、カーボンナノチューブは細長い構造のため複雑に絡まってしまう性質があり、ほかの材料と混合し均一に分散する技術が確立していなかったことです」
そして、これらの問題点が背景となり、もっとも大きな問題を引き起こしていたと、ウー社長はいう。
「価格です」


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シンディ・ウー氏

歩留まりの悪さが高価格の原因

「私はもともと研究者だったため、カーボンナノチューブの存在は以前から知っていました。しかし、当時からあるデメリットが言われていました。それは価格があまりにも高いということです。技術の進歩によって価格は下がってきてはいるものの、純金よりも高い値段で取引されたこともあるなど、今もって価格は普及の最大の障害になっています」
カーボンナノチューブは、チタンやリチウムなどのレアメタルと違い、「炭素」というごくありふれた素材を扱っている。にもかかわらず、なぜそれほどまでに価格が高いのか。
「もっとも大きい原因は、製造の難しさにあります。カーボンナノチューブを製造しても、不純物がたくさん含まれたり、カーボンナノチューブの形を成していないものが多く含まれたりして、初期投資のわりには良質なものができず非常に歩留まりが悪い。そのためにどうしても価格が高くなってしまいます」
実はシーナノ社を立ち上げたのはウー社長ではなく、ウー社長が研究者だった頃からの友人であるリチャード・リー氏である。現在はシーナノ社のCTO(最高技術責任者)を務めているが、ウー社長を誘ったのはリチャード・リー氏だった。
「カーボンナノチューブは大量生産が難しいため、価格を下げることは無理だろうと思っていました。ところが、リチャードはそれを安くする方法を知っていると。そこにシーナノ社の大きな可能性を感じました」
コストを下げるには、大きな設備をつくって大量生産することが欠かせない。そのためには、なによりも資金が必要だが、シーナノ社には投資家から多くの資金が集まった。投資家が注目したのも、高価格なカーボンナノチューブを安価に提供できるという点だった。
そして、技術畑のリチャード・リー氏がCTOに就任し、マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルタントを務めるなど、ビジネスの経験が豊富なシンディ・ウー氏が社長兼CEOとなり、2007年5月、シーナノ社は船出する。
20年近くもの間、数多くの企業や研究者が果たせなかった良質なカーボンナノチューブを、低コストで大量に生産する技術。シーナノ社はいかにしてそれを実現することができたのか。
「カーボンナノチューブは、リアクターと呼ばれる化学反応を起こす装置の中に、ガスや触媒などを入れて製造します。まず、注入するガスの種類を変えることでコストを削減し、さらに触媒に使う素材や温度調節も工夫しました。それによってもっとも変わったのが歩留まりです。一般にカーボンナノチューブの歩留まりは30~40%ですが、当社は95%にも達します。また、1回の製造時間も1時間ほどです。この製造効率の高さによって、低価格を実現することに成功しました」
北京に工場をつくり、世界最大規模の年間500トンを生産する体制を整える。価格は多層カーボンナノチューブ※1kgで11,000円。これは市場平均価格の2分の1~3分の1でしかない。分散液も同時に開発し、分散の問題にも対応した。
ウー社長は「技術的には確かに大変だったものの、カーボンナノチューブという“モノ”を相手にしているため、それほどの苦労は感じませんでした」と語る。だが、ここからシーナノ社の本当の意味での試練が訪れることになる。

※多層カーボンナノチューブ
 炭素原子が複数の層で連なった分子構造を持つカーボンナノチューブ。


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多層カーボンナノチューブの構造

多層カーボンナノチューブの構造

思いもよらぬ障害

価格を下げれば売れる。ウー社長たちはそう思っていた。しかし、ふたを開けてみると、思ったような反響を得られなかった。
「価格を安くすればすぐに売れ、当社のカーボンナノチューブを使ってクライアントがさまざまな製品を工夫してつくってくれると思っていました。ところが、カーボンナノチューブはほとんどの企業が扱ったことがなく、また、さまざまな材料に混ぜて使われるため、ただ販売するだけではクライアントはどう扱っていいのかわからない。つまり、混ぜ方のノウハウも一緒に提供する必要があったのです」
この問題について、シーナノ社では、リチャード・リーCTO自らが研究に着手するとともに、優秀な人材を多く採用することで、少しずつクリアしていく。樹脂や染料、カーボンナノチューブなどを混合したマスターバッチを開発し、さらにリチウムイオン電池用のペーストも開発した。
そしてもう1つ、ウー社長が「予想外だった」と語るものがある。売れるまでの時間の長さだ。
「新素材の場合、クライアントがその素材を使って商品を開発し、まずそこで評価をされます。次に、エンドユーザがその商品を購入して評価をする。つまり二重評価になるわけです。そのため売れ始めるまでに時間がかかり、1年くらいはあっという間に経ってしまうのです」
リチウムイオン電池用のペースト状の商品も、開発してから1年間ほどは大きな反響はなかったが、1年半ほどすると評価も高まり、ようやく売れ始めたという。
こうしてようやく売れる体制が整ったが、シーナノ社は設立当初から価格戦略とは別に、もう1つまったく違う戦略も掲げていた。
「超高性能な、カーボンナノチューブの開発です」


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電気伝導性が300~1,000倍のすごいやつ

価格を大きく引き下げたカーボンナノチューブは「FloTube9000」という商品だが、それとは別にまったく新しいタイプの商品も開発中だ。これこそ、シーナノ社が「超高性能」と呼ぶ秘密兵器である。
「これは、一般のカーボンナノチューブに比べて、電気伝導性が300~1,000倍もあります。つまり非常によく電気を通すカーボンナノチューブなのです。クライアントの中にはさらに高品質な製品をつくりたいという要望があり、そのニーズに応えるためにこの商品を開発しています」
高性能の秘密はチューブの形にある。カーボンナノチューブは、通常の直径がナノメートル単位の極細なチューブ状のため、そのままだと毛玉のように丸くなってしまう。ところがこれは、丸まらずに細長い形をそのまま維持できる。そのため電気がスムーズに通りやすく、高い伝導性を実現できるという。
「もっとも考えられるのは、ITO(酸化インジウムスズ)の代替品としての用途です。タッチパネルや電子ペーパーなどは電気を通す素材を使う必要があり、その材料としてITOが使われてきました。しかし、ITOは高価で、なおかつ折り曲げに弱く、さらに主成分であるインジウムは希少金属なので資源の枯渇が心配されています。そこで、ITOの代わりに高性能なカーボンナノチューブを使えばこれらの問題も解決できるわけです」
通常、カーボンナノチューブは色が黒く、タッチパネルなどの用途ではパネルの表示が見えにくくなるため適していない。しかし、この商品は超高性能なため、使用する量もごくわずかで済み、膜が透明になるほど薄くしても性能を発揮できる可能性があるという。


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シンディ・ウー氏

いざ眠れる獅子を起こす

2009年秋、シーナノ社は丸紅情報システムズと販売代理店契約を結び、日本での販売を開始した。カーボンナノチューブは、我々にどんな未来をもたらしてくれるのだろうか。
「現在、もっとも可能性が大きいのはリチウムイオン電池分野です。電極に塗布することで出力や寿命が飛躍的に向上し、例えば、将来は電気自動車の電池をたった5分でフルチャージが可能となり、それに伴い電気自動車が急速に普及していくことも考えられます。また、セラミックに混ぜることで電磁調理器への活用や、電気を流すと曲がる特性を利用して、ものを動かすアクチュエータとしても期待できます。さらに、人工筋肉などにも応用できる可能性もあります」
シーナノ社では今も人材を次々と投入し、エポキシ樹脂や金属に混ぜて、もっと強度が高い素材が開発できないかと研究を重ねている。さらに蓄電分野にも使えないかと、さまざまなノウハウを構築しており、直径2~3ナノメートルという極小のカーボンナノチューブの開発にもすでに着手しているという。
「これまでいくつものベンチャー企業をみてきて、株式上場することが決して簡単でないことは十分にわかっています。でも難しいからこそ、それに向かってチャレンジするのが楽しいのです」
経験に裏打ちされた戦術、若者のような野心。その2つを武器に、シーナノ社はカーボンチューブという眠れる獅子を、目覚めさせようとしている。


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