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人を派遣する仕事から、人を作る仕事へ国井氏は、1973年に松下電器産業(現パナソニック)に入社後、人事・採用・労務部門を中心に歩んできた。ひとことでいえば、人事のエキスパートである。その経験を踏まえ、国井氏は人事について、「普段は社員のことを、元気にしているかな?困っていることはないかな?そうやさしく声を掛け、支えつつ、時として強さをもって、引っぱれるところを引っぱっていかなければなりません。だから、人事には、社員との間に、人間としての絆と信頼が欠かせません」と語る。人事と人材派遣業が、「人」を扱うという点で共通していることはいうまでもない。人材派遣業はいま、働き手と企業を結ぶだけでは成り立たない。絆と信頼をもって教育し、育成する。つまり、「人」を作ることが、企業の成長を支える。 そのために、稼働スタッフや登録スタッフの能力開発向上のための仕組みを作ることは、人材派遣業に求められる重要な役割のひとつである。 「人材育成には時間もお金もかかりますが、昨日より今日、今日より明日という視点をもって取り組んでいけば、派遣スタッフは確実に能力を伸ばします。それが、派遣先企業に喜んでいただくことにつながり、社会のお役に立つことが出来ます。社会のお役に立つというベクトルが、大切なことだと思います」(国井氏) 人材育成の取り組みには、野球も関係しているようだ。国井氏は、03年から07年までパナソニック野球部の部長を務めた経験をもつ。05年11月、大阪ドームで行われた日本選手権大会では、チームを5年ぶり、2度目の優勝に導いた。 「優れた選手がいるというだけでは、チームは勝てません。選手の能力を伸ばし、チームワークを磨けるコーチがいること。そして、コーチを指揮する監督がいること。そういった環境が、組織を強くするのです」(国井氏) |
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めまぐるしく変化するなかでかつて、松尾芭蕉は「不易流行」と説いたという。不易は、不変のもの。流行は、そのまま流行りの意味である。芭蕉によれば、新たな表現には、不易と流行の両方が欠かせない。「2008年9月15日に発生したリーマンショック。これまでの経営環境の変化は過去からの連続的な変化でした。しかし、今回はこれまでと違い、不連続な経営の変化と言っても良い位、劇的な変化です。経営は如何にこの変化に迅速に対応し得るかという「流行」が大切だと思います。一方、人材育成は一朝一夕に出来るものではありません。日常からの弛まぬ努力があってこそ、人材を育てることができるのです。すなわち「不易」な取組みが必要になるのです」(国井氏) だから、同社は「人間大事」の精神を重んじる。「人と企業を信頼で結ぶ」という経営理念に常に立ち返る。同社のあらゆる活動は、ここが出発点である。出発点が明確だから、その先に作られる具体的な取り組みも分かりやすい。 たとえば、登録スタッフが無料で利用できるOAルームの開設。英会話等のスキルアップが図れる各種スクールとの提携。いずれも、人を育てるための取り組みだ。 また、全国各地のホテルやレジャー施設を、優待料金で利用できる福利厚生サービスも整備した。44箇所の保育園と提携し、特別料金で利用できる仕組みも作った。入園費と年会費が無料となり、毎月の保育料の40%が補助されるこの制度は、9割を占める同社の女性派遣スタッフに人気が高い。 今風にいえば、ES(従業員満足)がCS(顧客満足)につながるというビジネス理論になるだろう。それはつまり「不易」なのだ。 |
不易を踏まえて、流行を捉える一方で、時代の変化にも、敏感に対応している。重要なのは、不易を踏まえて、流行を捉えることだ。新たな基幹システムの構築も、時流を捉えるために欠かせない。そこで同社は、08年初頭から丸紅情報システムズとともにERP(Enterprise Resource Planning)システムの開発に着手。内部統制機能を充実させるなどの独自性をもたせ、約2年後の09年10月から稼働させた。 |
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「2%」の労働力人材派遣業界は今も、変化を続けている。中でも、同社が特に着目しているのは、シニアと女性。この2つの層と、派遣という働き方との関わり方だ。シニア層がもつ豊かな経験は、さまざまな業界で注目されている。特に労働人口が減っているなかでは、彼らのもつスキルが、未来の日本を支える源泉ともいえる。しかし、活用の場、つまり働く場が提供されなければ、経験は社会に活かされない。 「シニア層における働き方の希望やカタチは人それぞれです。これまでに培った経験を社会に活かしたいと考える人もいるでしょう。また、実態として、これからは60歳で定年しても、65歳になるまで年金が受け取れません。その間の収入を確保するために、仕事を探す人もいます。そこで、派遣という働き方が1つの選択肢となり得ます。母体がメーカーである当社では、事務派遣などのほか、技術面にも着目しながら、シニアの労働力の活用と関わっていきたいと考えています」(国井氏) もう1つの女性層については、一般に、その労働力人口が、20歳代から30歳代前後にかけて一時上昇し、結婚、出産、子育てによって減少に転じる。その後、ある程度まで子育てが終わったところで、再び、社会で働きたいと考える人が増えてくる。 この動向をグラフにすると、ちょうどM字曲線のような形になる。 ここでも、派遣という働き方が重要な役割を果たす。再び社会で働きたいと考える女性、また、ある程度まで子育てを終え、実際に派遣社員として働いている女性は、その多くが、正社員としてではなく、派遣社員として働くことを希望しているためだ。「現在、派遣スタッフという形で働いている人は200万人ほど。 パートタイムで働く800万人、アルバイトで働く400万人と比較しても少なく、雇用者全体から見れば、その割合は2%ほど。このうち150万人が女性です」と、国井氏はいう。 「たった2%」と見れば、それまでである。 しかし、国井氏は決して軽視しない。150万人の派遣で働く女性が、なるべく希望する労働環境のなかで働けるよう支援するための投資を惜しまない。それが前述の保育園費用の補助、OAルームの開設、 スキルアップが図れるスクールとの提携である。「女性には、子育てをしている間、つまり会社勤めから離れる期間でも、継続的にスキルを磨くことができる仕組みが必要です。たとえば、出産前に事務処理をしていた時の仕事内容と、数年間子育てをし、復帰しようと思った時の仕事内容とでは、新しいソフトウエアの導入やインフラ環境の違いなど、とても大きな変化が見られます。それでは、女性は会社勤めにスムーズに復帰できません」(国井氏) |
誰もが豊かに働ける社会をめざして モノのなかった昭和のはじめ、松下幸之助氏は、誰もが蛇口をひねれば飲める「水道の水」と同じように、安価で安全な製品を、大量に供給する必要性を感じたという。つまり、産業人としての使命を、生活を豊かにするモノを豊富に提供し、社会から貧困をなくすことと位置づけた。これを「水道哲学」と呼ぶ。 |
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