上田藍選手 特別インタビュー

フィニッシュの瞬間に思った「リオデジャネイロオリンピック」

-横浜大会お疲れ様でした。率直な感想を聞かせてください。

上田:昨年8位に入った相性のいい大会で、なおかつ私がコースづくりに少しだけかかわったこともあり、元気な姿を見せたいと、気持ちの面ではものすごく仕上がっていました。でも、1ヶ月半前のロンドンオリンピックに身体のピークをもっていったので、身体がついてこないもどかしさがありました。試合前の会見でも「出るからには粘り強い勝負をしたいです」とやや弱気なコメントをしてしまいました。

-ロンドンオリンピックは2回目の出場でした。どんな気持ちで臨まれましたか。

上田:1年前にロンドンオリンピックとまったく同じコースで世界トライアスロンシリーズロンドン大会が開かれました。順位は11位でしたが、トップとの差は39秒しかなく、金メダルを目標にしてきました。私はランが得意なのでまずそれを磨こうとランの目標を立てました。トップ争いをするには最後のラン10kmを1km3分20秒のペースで走らないといけないので、その数字をめざして練習し、目標に近いタイムも出るようになっていました。

-スイムはどのような練習をされたのですか。

上田:人の後ろにぴったりとくっついて泳ぐトレーニングをしました。人の後ろにつくとその選手がつくった前に進む水の流れに乗ることができるので、独泳するより速くなるのです。練習は1日8時間するときもあり、スイムは1日3,000~6,000m、バイクは30~100kmくらい走っていました。

-ロンドンオリンピックのレースはどのようなシナリオを描いていましたか。

上田:スタートから300m先にブイがあるのですが、そこを通るときは集団が密集する状態になります。ここでブイのインコースをとってすり抜け、あとはなんとか集団に食らいついていく。バイクはスイムが終わった時点で走力のある選手をチェックし、その選手についていく。そして最後に得意のランで勝負する、というものでした。

-どのような気持ちでスタートラインに立ちましたか。

上田:やるべきことはやった、と不安なくスタートラインに立つことができました。ところが、スタートしてすぐに遅れてしまって。観ている人は「藍ちゃん遅れちゃった!」と思っていたと思います。泳力の差が出る展開になってしまいました。ただ諦めたわけではなく、当日雨が降って路面が濡れていた影響からバイクで落車する選手がかなりいて、「まだいける」という思いでいました。しかし、私がいた集団の中にバイクの得意な選手がいなくて思ったようにタイムが伸びないなど不利な展開となってしまいました。ランでなんとか盛り返そうと走ったのですが、39位という結果に終わりました。

-フィニッシュした瞬間、何を思いましたか。

上田:悔しかったですね。やってきたことをレース展開に活かすことができなかった悔しさがありました。このままでは終われない。4年後のリオデジャネイロオリンピックをめざそう! と思いました。

好きなもので一番になったらもっと幸せ

-今度のリオデジャネイロオリンピック出場を決めると3度目のオリンピックとなります。何がモチベーションになっていますか。

上田:私は笑顔をとても大事にしています。いつも楽しんで笑顔でいると、しんどい顔をしているときに周りの人たちが「大丈夫だよ、いけるよ」って自然と励ましてくれるようになる気がします。私の郷里は京都ですが、私が今いる千葉の稲毛の人たちはまるで家族のように接してくれます。私を通して夢を見てくれる人たちの輪が広がっているのを実感しています。その人たちと表彰台で君が代を歌える瞬間って、どんなに幸せなんだろう、そう思います。自分だけの夢じゃなくなってきているというんでしょうか。それが大きな力の源になっています。

-上田選手にとっての“最高の瞬間”はどんなときですか。

上田:私は後半追い上げ型のレースをしますが、どんな離れたレースでも大どんでん返しで勝ったりすると、少し差がついても周りは「藍ちゃんいける!」ってものすごく応援してくれます。その「何か起こすのでは」と期待して応援してもらっているなかで、私も「抜ける」と信じて前を追っているときが一番気持ちいいです。それが勝利に結びついたときが最高の瞬間ですね。

-経験された“最高の瞬間”を1つ教えてください。

上田:北京オリンピックのトライアスロン日本代表を決めた2008年のアジア選手権は印象深く残っています。優勝すればトライアスロン日本代表が決まるレースで、バイクを終わった時点で1分19秒差が開いていました。でも「追いつけるから見てろよ」という気持ちで走り、5km過ぎで並び、最後の2.5kmで一気に引き離しました。後ろを振り返ると2位の選手はずっと遠くにいる。追いつかれないだろうと思いました。余裕ができたことで今までのことが次々と思い出されたんです。コーチと一緒に頑張ってきたこと、応援してくれた人たちのこと、中学や高校時代に陸上や水泳でなかなか勝てなかったこと。そんな自分が本当にオリンピックに出られる。そう思ったらこみ上げてきてどうにもならなくなったんです。いつも笑顔でフィニッシュする私が、そのときはしゃくり上げながらフィニッシュしました。レースで泣いたのはあとにも先にもそれ1回だけです。

-トライアスロンをやめたいと思ったことはありますか?

上田:一度もないです。私は一番になる手段としてトライアスロンに取り組んでいるわけではなく、トライアスロンそのものが大好きです。好きなもので一番になったらもっと幸せだろうな、という思いでトライアスロンを続けています。

-最後にリオデジャネイロオリンピックの目標を教えてください。

上田:当然、金メダルです!

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