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群馬大学
Coventor Wareは、MEMSデバイスを生成、モデリング、解析、インテグレーションを実行する4つの製品、Architect・Designer・Analyzer・Integratorから構成されている、MEMS専用設計解析システムです。開発元であるCoventor社は、1995年に設立され、マサチューセッツ工科大学(米国ボストン)との共同でマイクロマシンの解析シミュレーションを開発し、世界に先駆けてマイクロマシン解析ソフトウエアを商品化しました。Coventor WareはワールドワイドでMEMSとMicro Fluidicsのトップメーカー10社を含む150社以上の企業・研究機関で使われており、注目すべきは大学・教育機関では1700ライセンス以上使われています。




経歴: 1982年3月 東京大学大学院 工学系研究科 (計数工学専攻)修士課程修了
1982年4月 株式会社横河電機製作所 入社
1989年12月 カルフォルニア大学  ロサンジェルス校電気工学科大学院 修士課程(集積回路とシステム専攻)
同専攻修了
1997年4月 群馬大学工学部 助教授
2002年6月 現職
受賞: 1994年 日本神経回路学会 論文賞 受賞
2003年3月 横山科学技術賞
2004年6月 第6回LSI IPデザインアワードIP賞

「群馬アナログ技術立国構想」を掲げて産学連携を積極的に推し進める群馬大学工学部。アナログ集積回路研究会の開催などを通じ、人材や技術の交流、情報交換が盛んに行われています。
電気電子工学科小林研究室では、産学連携を推進する企業からの依頼によりMEMS研究を開始。アナログ集積回路の設計にMEMSを活用し、回路研究における新たな局面を実践しています。
〈写真右〉群馬大学 工学部 電気電子工学科 小林春夫 教授(工学博士)
〈写真中央〉群馬大学大学院 工学研究科電子情報工学専攻 博士後期課程 小林研究室 光野正志氏
〈写真左〉群馬大学大学院 工学研究科電気電子工学専攻 博士前期課程 小林研究室 木村圭吾氏

最近は産学連携が盛んに進められていますが、
群馬大学工学部でもエレクトロニクス分野において
産学連携を推進しているそうですね。
これについてお聞かせください。

小林教授: 群馬県は実は製造業が盛んな土地なんです。中でもアナログ集積回路およびそれを用いたエレクトロニクス製品の分野では、高崎市にルネサステクノロジ、大泉町の中島飛行機跡に三洋電機の主力工場があるなど、高い技術力を持った優秀な企業が数多く存在しています。
群馬大学は国立大学として、産学連携においてもリーダーシップを取る立場にあるわけですが、平成7年に群馬大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(以下、GU-SVBL)を設立し、群馬大学工学部を中心として、産業界とエレクトロニクス分野での連携を進めています。このSVBL(またはVBL)は現在、理工系大学院を有する全国の国立大学三十数校に設置されていますが、GU-SVBLはそのうち一番最初に設立されたひとつなんです。

小林教授が研究をされているアナログ回路の分野では、
具体的二度のような取り組みを?

小林教授: GU-SVBLではアドバンスト・マイクロデバイス関連の研究プロジェクトを進めていますが、このうちのひとつがアナログ集積回路研究部門になっています。研究会では、産業界から技術者を招いて講演会を開催したり、技術討論を行ったりしています。「群馬アナログ技術立国構想」として、産学にくわえて県にも支援してもらっています。
国立大学はあくまで中立・公正の立場ですから、こうした技術交流ネットワークの中心としても機能し得るわけです。

実際に産学連携を進められている中で、
そのメリットはどこにあるとお考えですか?

小林教授 一般的に産学連携というと産業界から大学への資金援助のようなイメージがありますが、もっとも大切なのはそこではありません。確かに資金面の協力も重要ですし欠かせませんが、産学連携における最大のメリットは、技術交流と情報交換にこそあるのです。産業界としては、大学に基礎研究や開発を期待できますよね。一方、大学としては、現実のビジネス現場からのフィードバックを受けられるということが挙げられます。工学部というのは、工学の研究はするものの実際の生産手段を持たないため、産業界と交流しなければどうしても研究教育内容が産業界とは乖離しがちな傾向にあります。産学連携を進めることで、「現実の問題は何か」という活きた情報を得られるのが大学にとっての最大のメリットと言えるでしょう。GU-SVBLでは、産業界からの客員教授招聘や大学院への社会人入学などにより、こうした共同研究を進めています。

小林研究室では2003年4月よりMEMS技術へも取り組まれていますが、
これはどういう経緯で始められたのでしょう?

小林教授: 元もと、アナログ回路の研究とMEMSが絡んでくるとは考えていなかったんです。半導体の研究の場合、(1)設計(2)試作(3)評価、という段階があるのですが、日本の大学でのMEMS研究はおもに(2)の試作に位置するものが多い。つまり、プロセス系や機械系の研究者が中心となっているように思います。
ところが、産学連携を進めている企業のひとつであるアジレント・テクノロジー社から、電気系の回路研究者もMEMS研究が可能であることを示唆されました。外部ファンダリと提携して試作をまかせることで、MEMSでの回路設計に集中することができる。研究者はアイデアのみ、つまり(1)の設計にあたる部分だけを考えればいいわけですね。
そこでアジレント・テクノロジー社からMEMSの調査研究依頼と同時にMEMS設計・解析ソフトCoventorWareの紹介を受け、ベンチャー企業のアナログチップデザイン社もスポンサーに加わることで、当研究室でのMEMS研究が始まったのです。

アナログ回路とMEMSというのは毛色の変わった組み合わせだと思いますが、
どのような方向性で研究を進められているのでしょうか?

小林教授: LSIとMEMSが融合した付加価値の高いシステムということで、トータルで小型・低消費電力・低コストを実現できるようなものを開発しています。たとえば現在の当研究室では、可変インダクタンス・可変容量・スイッチの設計を行っています。これは携帯機器への搭載を目指したものですね。特性可変なバンドパスフィルタや周波数可変な発振回路を実現し、一台の携帯機器で複数の規格に対応できるようになります。規格の違う世界中のどこでも使えるようになります。携帯機器というものは、やはり市場のニーズが高いですし、研究成果が与えるインパクトも大きいですから、研究をする意義は大きいと思います。
当研究室でのMEMS研究そのものはまだ日が浅く、ようやく実学としていくつかの成果が上がってきているという段階ですね。今は研究のみですが、これからは学生への教育にも組み入れていきたいと考えています。

では、これからの産学連携をどのように進めていくべきか、
小林教授の考えをお聞かせください。

小林教授: まず、産学連携というのは「産学協同」であると同時に「産学競争」でもあるべきです。「大学と企業が同じ研究をしても勝てないから、現在必ずしも産業界の関心の高くない別の分野の研究をすべきという意見が一部にありますが、これは間違い。工学である以上は産業界と競争するマインドを持ち、論文のための研究だけでなく、現実の問題に対する研究をすべきなのです。
もちろん、同じテーマに向かって企業が本腰を入れたら大学はかないません。したがって、利益を追求すべき産業界ではなかなか手が出せない問題を先回りして研究するとか、大学ならではの決断の早さや身の軽さを活かすなどの工夫が求められるでしょう。「利」だけでなく、「人の心を打つ何か」を求められるのも、大学ならではかもしれませんね。そうして産学それぞれの特色を出した上で、人が集まり技術と情報を交換する。それが目指すべき産学連携の姿でしょう。
また、産業として成り立たせるための戦略的な視点も忘れてはいけません。エレクトロニクス分野は中国や韓国、台湾などの成長が著しく、もちろん欧米も先端を走っており、真っ向からぶつかっても難しいものがあります。日本はどの領域で競争力を高めるべきなのか、そのためにどのような教育を行うべきかを明確にした上で、産学連携を進めていくべきではないでしょうか。

最後に、小林教授の研究者としてのモットーをお聞かせください。

小林教授: 米国UCLAの大学院に2年間留学したことがあるのですが、そのときの先生に言われたことが「よい仕事はたくさんの仕事から」というものでした。要するに、よい研究成果を上げるためにはたくさんの研究をしなければならない。逆に、時間をかけてたくさんの研究をすれば、自ずとよい成果が上がってくると。この言葉が非常に印象的で、今でも私の研究方針となっています。

 
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