導入事例

写真左：
株式会社セガホールディングス IT本部 インフラシステム部 インフラ企画チーム
芳田 圭太郎 氏

写真右：
株式会社セガホールディングス IT本部 インフラシステム部 インフラ構築チーム
加藤 知史 氏

ゲーム開発では日々膨大なデータのやりとりが行われる。グループ全体の観点からITインフラの整備を進めるセガホールディングスは、高速かつ安全な大容量データの転送を実現するべく高速データ伝送ソフトウェアSilverBulletを導入。採用のポイントは、動的に速度を自動調整し同一回線を利用する他システムの通信を遮らないという特徴だ。トラフィックが逼迫したときにユーザーへ利用中止の電話を入れる手間からも解放され、安定運用のもと4倍の転送速度を実現。今回、NetAppも合わせて導入しデータの保全性も向上。高信頼性のもとゲーム開発や通常業務のスピードアップに貢献している。

課題と効果

トラフィック逼迫の回避と速度向上を可能にする
高速ファイル転送システムを実現したい

静的な速度の上限設定に加え、動的な速度の自動調整により同一回線上の他システムの通信を遮ることなく、大容量データの高速転送を実現。安定運用と運用負荷の軽減を両立し、速度も従来の4倍向上

グループ全社の業務でも利用するため、
ユーザが簡単に利用できる仕組みにしたい

使い慣れたFTPライクのユーザーインターフェースにより、ユーザはとまどうことなくすぐに利用することができ、即戦力として業務の効率化を実現

高速ファイル転送システムにおける
データの保全性を高めたい

SilverBulletと合わせてNetAppを導入し、高速ファイル転送システムのバックアップを実現。サーバがダウンしてもデータを守り信頼性が向上

世界中の人々に驚きと感動を与えるエンタテインメントを生み出すセガ。“「遊び」を通じて社会に貢献し、文化形成に寄与する”、1951年設立以来、セガの根底に流れる精神は変わることがない。2015年、市場やお客様のニーズにいち早く対応するため持株会社のセガホールディングスを設立しグループを再編した。グループ共通の価値観「創造は生命」のもと「お客様の感動体験を創造し続ける」というミッションを掲げ新たな一歩を踏み出した。
新生セガグループはコンシューマやアーケードなどのゲームコンテンツから玩具、映像、アミューズメント施設運営までエンタテインメント事業を幅広く展開。分社による事業最適化とともにグループのシナジー効果で新たな価値を創出していく。
新生セガグループにおいて扇の要となるのがセガホールディングスだ。同社はグループ会社の経営管理やIP(知的財産権)管理、ITインフラの整備・提供などを行っている。「セガホールディングスのIT本部ではグループ全社向けのネットワークやサーバ基盤、グループウェアなどを担っています。IT本部で統合的に管理することによりグループ全体の観点からコスト削減や業務の効率化を図っています」とIT本部 インフラシステム部 インフラ企画チーム 芳田圭太郎氏は話す。
グループ全社向けのITインフラで重要なテーマとなるのが増加するデータ量への対応だ。「コンシューマ向けゲームでは、CD-ROMが700MB、DVDが4.7GB、ブルーレイディスクが一層25GB/二層50GBとメディアの容量が加速度的に増大するのに伴い、開発現場で扱うデータ量も増え続けています。高速かつ安全に大容量データのやりとりを行うことは、セガグループの生命線に関わる重要なテーマです」(芳田氏)

ゲーム開発では1ファイルで100ギガバイトを超えるデータのやりとりも珍しくないという。「開発側でデータをアップロードし、協力会社がダウンロードして編集後にアップロード、それを開発側が確認し修正する。日々、その繰り返しです。100ギガバイトのデータをFTPで転送したら1日以上はかかってしまいます。ダウンロードやアップロードの時間を短縮し開発に使う時間を創出するために高速ファイル転送システムを導入したのですが、運用面の問題から性能を活かしきることができませんでした」とIT本部 インフラシステム部 インフラ構築チーム 加藤知史氏は話す。
運用面で問題となったのは、同一回線上で高速ファイル転送システムだけでなく、他システムの通信も行っており、高速ファイル転送システムの利用状況によってトラフィックが逼迫するリスクがあったことだ。「既存の高速ファイル転送システムでは速度制限の設定はもとより、トラフィックを常に意識し帯域をたくさん使用しているユーザに対し電話をかけて一時的に使用を止めてもらうようにお願いしていました」(芳田氏)
トラフィックを意識することなく性能の向上を実現できないか。この難題を解決できたのは高速データ伝送ソフトウェアSilverBulletだけだったという。「SilverBulletは静的に速度の上限を設定できるだけでなく、ソフトウェア側で他の通信が行われていることを把握し、回線の“空き”を自動的に検知し動的に速度を自動調整することで他の通信を遮りません。また静的と動的の2つの制御により速度制限の上限を上げることも可能です」(加藤氏)
グループ全社の業務でも利用するため、高度な暗号化技術によるセキュアなデータ転送の実現はもとより、使い慣れているFTPライクである点もSilverBulletの高評価につながった。またコストの観点では、同社が求めている要件をすべて満たしておりカスタマイズなど追加コストがかからないことも採用のポイントとなった。

同社は性能、運用、ユーザーインターフェース、コストなど総合的に評価しSilverBulletの採用を決定した。100Mbpsから1Gbpsの帯域で利用できる「SilverBullet for Enterprise」を丸紅情報システムズから購入。データセンターにあるグループ全社向けシステムの1つとして、サーバにSilverBulletの専用ソフトをインストールし、サーバーとクライアントPC間の高速ファイル転送、拠点間や関係会社との間のデータのやりとり、グローバル連携を実現した。
今回、SilverBulletと合わせ、高速ファイル転送システムのストレージとしてNetApp FASシリーズも丸紅情報システムテムズから購入し構築の支援を受けた。
「高速ファイル転送システムの場合、元データは発信元にあるわけですが、利用頻度の高いビジネスのデータのやりとりもしています。サーバがダウンしてハードウェアのデータがすべて消失することになれば大きな混乱を招くことになります。今回、バックアップによる信頼性向上は重要な課題でした。NetApp FASシリーズは高可用性はもとよりSnapshot™機能による短時間でのオンラインバックアップなど優れた機能を有しています。IT本部としてNetAppは使い慣れていたことも採用のポイントとなりました。また丸紅情報システムズに構築支援を受けたことでスムーズに導入することができました」(加藤氏)

2016年6月、同社はグループ全社に対しSilverBulletによる高速ファイル転送システムのサービス提供を開始。ユーザが実感できる導入効果として転送速度が4倍に向上した。 「転送速度は、FTPを利用していたときは最大10Mbps程度、既存システムで最大75Mbps、今回SilverBulletの導入により最大300Mbpsと大幅に向上しました」(加藤氏)
SilverBulletの動的な速度調整により、常にトラフィックを意識することもユーザーに利用中止の電話を入れる手間もなくなり、安定運用のもと運用負荷の大幅軽減も図れた。
またNetApp FASシリーズの導入によりデータの保全性を高めながら優れた拡張性も実現。「clustered Data ONTAP(CDOT)搭載のNetApp FASシリーズはテラバイトから数十ペタバイトまでシームレスに拡張が行えるため、どんどんアップロードされる大容量データに柔軟に対応できます。ボリューム不足のときもやりくりを考える必要もなく、ボリュームが不足しそうなときは、システムが判断し自動的に余裕のあるボリュームに切り替えてくれます。稼働中でも停止することなく機器の交換や拡張が行えるなどノンストップ(無停止運用)を実現できるメリットは大きいです」(加藤氏)
今後の展望について芳田氏はこう話す。「当社とイギリスのグループ会社との間で事前に性能検証した結果では300Mbps以上の転送速度を確認しています。回線増強することで制限速度の上限をさらに上げていきたい。またグローバル開発で海外の開発拠点とのデータのやりとりが行われるようになると、長距離や低回線品質でも高速転送を実現するSilverBulletの特長が活きてきます。将来的には、高速ファイル転送の標準ツールとしてSilverBulletをグループ会社に展開できたらと考えています。SilverBulletの開発元のSkeed社には機能強化やサービスの拡充に期待しています。丸紅情報システムズにはSkeed社と密に連携しNetAppも含めたトータルサポートをお願いいたします」

セガ SilverBullet+NetAppシステム利用構成図