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米JZHC社から学ぶ金属AM活用のポイントは?掲載日:2020/07/20

金属材料を使う3Dプリンティングは国内でも装置やサービスも増え、ユーザーも急速に増えていますが、一方で技術や活用については樹脂とはまた違う理解の難しさもあるようです。そこでアメリカのユーザーが公表した事例から活用を学びたいと思いますが、そのポイントとは…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリングソリューション技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

金属3Dプリンティングウエビナーから感じたこと

「ニューノーマル」について以前のこちらのコラムでも触れましたが、新型コロナウイルス感染防止と経済・生活活動の両立のための「新しい行動様式と働き方」が広まってきました。治療薬とワクチンが十分行き渡るまで、または行き渡ったとしても、他の病気や自然災害、エネルギーや環境の課題に対しても有効なら、これらが本当に「普通」になっていくのかもしれません。もちろん不平不満はありますが、結局は慣れて受け入れてしまえれば、プラスにも出来るのではと考えています。

そのような中で、弊社でもお客様に情報をお伝えする手段として、ウエビナー(インターネットを介したセミナー)を始めたり、個別のオンラインミーティングを行っており、先日はDesktop Metal社の製品紹介含めた金属3Dプリンティングに関するウエビナーを開催しました。ウエビナーの良いところの一つとして、チャット(文字による会話)機能で講演の途中でも質問やコメントを他の参加者には匿名で出せて、また講演後に答えられ、その答えに対してもまた質問できるというように、会場集合セミナーより質問が出やすいと感じています。

一方で、頂く質問の幅と中味が、同じ3Dプリンティングでも樹脂と金属で違うと感じることがよくあります。金属材料を使う3Dプリンティングは国内でも装置やサービスも増え、ユーザーも急速に増えていますが、一方で技術や活用については樹脂とはまた違う理解の難しさもあるようです。これは売る側の私共と買う側のお客様の両方に言えることで、その理由を次のように考えています。

・3Dプリンターで作られるモノの材料としての組織や物性が、3Dプリンター以外のモノと比較して、樹脂の場合は比較的近いが金属の場合は違うことが多い。表面性状、熱処理、内部欠陥など条件によっても違う。

・樹脂の場合、試作目的でもDDM(実機能品製造)目的でも、3Dプリンターから出てきたものを直接使える用途が比較的多いが、金属は仕上げ、2次的な加工、熱処理などを必要とする場合が多い。寸法精度も2次加工で決まることが多い。

・特にDDMの場合、3Dプリンティングの利点を生かし欠点を補う形状設計(DfAM)の仕方や必要な知識が、樹脂より金属の方が比較的複雑、広範で、かつ工法や装置により異なる。

筆者は仕事としてずっと樹脂に関わっていて、樹脂については仕事を通して学びました。金属は大学で基礎を習ったはずなのにすっかり忘れ、ほぼゼロから学びなおすというお恥ずかしい状態ですが、逆に先入観がないことで、「積層工法で出来る金属が他の工法と性質が違ってあたりまえ」であり「単なる置き換えには向かない」として理解しやすいのかもしれません。

その「単なる置き換えではない」使い方について理解するのに参考になる、アメリカのユーザーが公表した事例から活用にポイントを学びたいと思います。

John Zink Hamworthy社のStudioシステム活用事例

弊社丸紅情報システムズ株式会社が正規販売代理店となっているDesktop Metal社から金属3Dプリンティングシステム「Studio」のユーザーの最新活用事例が公開されました。

John Zink Harmoworthy社(以下JZHC、本社アメリカ オクラホマ州)
同社はあらゆる燃焼機器やVOCなど排出ガス浄化装置のメーカーで、多くは個別少量生産です。

Desktop Metal社ウエブサイト内埋め込み動画はこちら
5分50秒で英語のみですが、動面下CCクリックで英語自動字幕が出ます(不明や間違った単語はありますが)。

この事例と語られている言葉から、Desktop Metalに限らず、あらゆる金属AM(Additive Manufacturing)に共通する、活用の3つのポイントを学ぶことが出来ます。動画に出てくる事例順に以下に解説します。

<ポイント1>
型が無くなった古い部品の交換部品を作る

これは燃焼器の燃料噴霧チップで、約30年前に鋳造と切削加工で作られましたが交換の必要があり、残された紙図面から同じ形状を3DCADで設計、ステンレス17-4PH(SUS630)でStudioシステムにより製造しました。これにより、鋳造型を作る場合に比べ72%のコスト節約、数か月が見込まれた工期が数週間になったとのことです。

別の資料にあったもう1例は、アメリカ海軍の揚陸指揮艦ブルー・リッジのシャットオフヨークとハンドルで、これも交換部品が製造されておらず、同じくStudioと17-4PHで作られました。

このように、元部品のメーカーや型が無くなった交換部品を数個作る場合、AMによる時間とコスト両方の利益が得られることがあります。

<ポイント2>
社内カイゼンの治工具をつくる

これはJZHC社内のレーザーカッターノズルで、従来切断端面に金属のカスが付き、人の手作業で除去しなければならないムダを減らすため、窒素ガスを最適に吹き付けることでカスの付着を防ぐ新しいノズルを考案し、初めはPLAプラスチックで作りましたが、熱で壊れたので、Studioと17-4PHで作りました。AMが無かったら考えることも作ることもできなかったそうです。

もう一つの事例は、旋盤のベテラン作業者が手作業で重いバイト(刃物)を交換する際、指だけでは持ちにくく、何度も交換する負担を減らすため、持ちやすいハンドルを考え、初めは樹脂の3Dプリント品を使い、作業者にとても喜ばれましたが、壊れてしまうので、17-4PHで作り直して解決したそうです。

このような持ちやすい曲面的な形状は、塊から切削加工すると時間もかかり切り粉も多く発生します。JZHC社内には当然多数の工作機械がありますが、担当者は「工作機械は売るものを作るのに使うべき」と述べています。

このように、社内工程、5S、安全衛生のカイゼンに最適な形状の治工具を使うと、その製作コストや時間だけでなく、本来利益のために使う機械を社内のために使うロスも減らすことが出来ます。

<ポイント3>
流体に最適な形状を解析結果から設計、実験、改良して作る

これは船舶の燃焼器の燃料と空気を混合して噴霧するノズルで、従来品は切削加工で作られていましたが、競争に勝つために常に新しく優れた製品を出すプレッシャーの中で、コンピュータによる流体解析結果から形状を考案、17-4PHでStudioにより作り実験、改良を短期に繰り返して最適な形状にたどり着き、完成しました。その結果、1個約5日で作ることが出来、また従来品の燃料消費率が120 kg/hrだったのを38 kg/hrまで減らせ、1隻に3台搭載されており、年間の燃料コストを$90,000から$160,000節約できるそうです。「従来はドリル加工の丸直線穴で出来る限られた条件でしか設計できなった制限をAMにより無くすことが出来る。」とゼネラルマネージャーは述べています。

このように、気体や液体、または冷却など熱に関係する部品を、解析から最適形状を求めて設計し、実験改良を短期に繰り返して完成させる使い方は、部品のQCDだけでなく、それが使われるシステムにおいて大きな金額の利益が得られることが世界各地で起きています。

上記の3つポイントは特に金属AMの活用と利益を理解する大きなヒントになると思います。また、型を作らず社内で短期間に作れるので、評価実験が速く出来、部品要求仕様を満たすのであればあれば、金属材質が従来品と異なったとしても実用できると考えた方が良く、「従来金属材料と違うから使えない」ではいつまでもその利益を得ることはできません。

最後に、JZHC 設計マネージャー Jason Harjo氏のコメントを和訳引用します。

「金属3Dプリンティングは遠い未来のことだと感じている会社…もしAMが彼らに何がしかの価値を生み、それにまだ投資していないのであれば、彼らは既に後塵を拝している。」

 

 

ウエブセミナーとウエブカンファレンスのお知らせ

弊社丸紅情報システムズ株式会社がお送りしている3Dプリンティングウエブセミナーとして、筆者も講演する回を下記の通り開催します。ご興味があればぜひご参加ください。

AMを強みにできる 設計者になる、育てる 3つのポイント
開催日時:2020年7月27日(月)13:00~13:45
参加無料

詳細、参加申し込みはこちらをご覧ください。

次にこのコラムでも過去3回ご案内してきましたが、3Dプリンティングの情報交換と人脈づくりを目的に毎月開催されています「3Dプリンティング/積層造形・オンラインカンファレンス」の第4回が下記の通り開催されます。

第4回3Dプリンティング/積層造形・オンラインカンファレンス(JAMM)
開催日時:2020年7月31日(金) 13:00-18:00
参加無料、いつでも入退場可

詳細と参加申し込みはこちらをご覧ください。

筆者も引き続き講演毎の質疑応答と、最後の講演者とのディスカッションに参加します。
また交流時間には丸紅情報システムズ株式会社のテーブルにいますので、個人あてメッセージやテーブルで、オンラインですがお話が出来ればと思います。

 

 

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