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なぜ教育・開発に3Dプリンティングを使うのか?掲載日:2020/08/17

今回のタイトルに「何をいまさら…」とお感じになる方も多いと思いますし、「3Dプリンティングは試作よりDDMだ」と我々も含め言ったりする方も増えていますが、教育・開発に3Dプリンターを使う理由、利益を実は十分理解されていないのではと思うことがあります。それはどのようなことかというと…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリングソリューション技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

RPとDDM

お読みの皆様の中にも夏季休暇を「いつもと違う」過ごし方で終えられたか方も多いと思います。筆者もそうでした。特に子供、学生にとっては遊びでも勉強でも不平、不満、不安が大人以上に大きかったのではと、我が息子たちを見ていても思います。しかし「自分ではどうにもならず出来ないことを嘆くより、出来ることをやろう」というのはどの時代でも同じですし、まず大人がそれを見せなければと自戒も含めて思っています。

さて、先回のコラムでも「出来ること」のひとつとしてウエビナーを取り上げましたが、先月弊社丸紅情報システムズからお届けしたウエビナーや、第4回3Dプリンティング/積層造形・オンラインカンファレンス(JAMM)を通してあらためて考えたことは、3Dプリンティングを教育や製品開発の中で使う理由や、それで得られる本当の利益は何か、以前と変わっていないか、それらをお伝えできているか?ということでした。

3Dプリンティングをご存じの方には「何をいまさら…」と思われるかもしれませんし、「3Dプリンティングは元々RP(ラピッドプロトタイピング)と呼ばれほぼ試作に使われてきたが、これからはDDM(実機能品製造)に使われる」と我々含め多くの方から言われることがよくあり、広く知られてもいます。それは間違えていないのですが、筆者はRPの時代から、今でも、これからも、3Dプリンティングが生み出す社会的、産業的、経済的な価値や利益は「教育や開発」で使われることによる方が総量は大きく、また時代や3Dプリンターが新しくなることで、「RP時代」から変わった、またはこれから変わることもあると考えています。

教育・開発で使う利益は「レバレッジ」が大きい

ご存じの通り「レバレッジ」とは「てこ」のことで、小さな力や動きを大きな力や動きにするものであり、金融や経済では小さな自己資本で大きな取引や利益率を上げる意味でも使われます。筆者は3Dプリンティングを教育・開発で使う方がDDMより寧ろレバレッジが効くと考えています。

以前にも示しましたが、筆者が頭の中でいつも考えている3Dプリンティングの価値創造サイクルは下図の通りです。

よく3Dプリンティングの利益を考えるときに、「試作のコストが下がる」「試作・開発の期間が短くなる」「量産品に近い試作ができる」など、どうしてもモノのQCDに関わり、数値化しやすい点に注目しがちですし、それだけで投資対利益を考えてしまいがちな一方、それよりレバレッジが効くのは「人と情報と時間」の利益と考えます。ただこれがまた簡単に見えにくく数値金額化しにくいのが厄介なところです。

筆者の体験も含めてレバレッジの例を挙げます。自分がメーカーで設計をしていた時、最初は紙に鉛筆と手で図面を書いていました(年がばれます…)。その後2D、3DCADを使うようになりましたが、3Dデータを作っても結局モノを作るには2D図面が必要で、かえって工数が増え「何のための3Dデータ?」と不満に思っていたころに、今でいう3Dプリンターが出てきて、「2D図面なしでいいんだ!」と感動したことが実は今の仕事の動機にもなっているのですが、現実として今でも試作を社内他部署、社外に頼む場合は2D図面が必要なことがまだまだ多いと思います。3Dプリンティングによりこの「設計者が図面を描く工数と時間」「試作品が出来るまで待っている時間」が減るだけでなく、その時間を考えることに使って出てくるアイデアの価値まで金額化できれば、そのレバレッジの大きさは想像いただけるのではないでしょうか。自分も正直手書き図面の設計者に戻りたいと思いませんが(夢で戻ることが今でもありますが)、特に若い技術者のなる気、やる気をデジタルツールや3Dプリンティングにより増やせるとすれば更にレバレッジは大きくなります。

教育にも似たようなことがあり、日本でもようやくデジタル活用のひとつとして学校への3Dプリンター設置が広がり始めましたが、限られた教育時間の中で自分の考え、目の前でカタチになる体験を数多く出来た人たちが、将来生み出すアイデアとやる気を考えれば、3Dプリンティングのレバレッジの大きさは無視できないと思っています。

上の図で「アイデア」を三角の頂点に置いたのは「始まり」の意味もありますが、「人と情報と時間」により生まれる価値として最も大きいと考えているからです。

開発で使う利益とレバレッジの事例

特に製造企業の製品開発で3Dプリンティングを使った事例は山ほどありますが、実は前述の「レバレッジ」については、さっと読んだだけではわからなかったり、直接書いていない「行間」からしか読み取れないことがよくあります。

丸紅情報システムズ株式会社のホームページでご覧いただける事例からそのようなものをいくつか紹介します。

・タニタ様「くるっとシリコーンタイマー」の開発

詳しくはこちらをご覧いただきたいのですが、商品は下のようなもので、飲食店や家庭でタイマーにラップを貼り、汚れたら貼りなおす使い方で、きれいに簡単に貼ることが出来る、これまでにない機能を持っています。

表面的にはフルカラーPolyJet、FDMの3Dプリンター、3Dプリント樹脂型で試作して短期に商品開発出来たことが読み取れますが、ここで含まれる「レバレッジの利いた利益」には次のことがあると思います。

①商品開発担当者ではない新たな人材とアイデアを活かせたこと

忘年会の雑談で「3DCAD はおろか設計自体について素人も同然」な研究者がアイデアを思いつき、そのまま開発担当を初めてされたとのことですが、設計や試作を社外に頼るにしても、その方々に求める機能と形状を伝え、カタチにする点でも3DCADと3Dプリンティングによって新たな人材とアイデアを商品、収益に転換できたことは大きいと思います。

②アイデアの価値を「体験」で経営者に伝え、速く正しい決定が得られたこと

どんなに良いアイデア、形状であっても商品化の決定権者に伝わり、承認を得られなければ最後の価値に転換できませんが、現物に近い色、形の見た目だけでなく、持った感じ、使った感じの「体験」により伝えられ、速く正しい決定を引き出せ、商品化できたことは上記の3Dプリンティングへの投資に対してレバレッジの効いた利益ではないでしょうか。特に柔らかい材料は削っては作れず、3Dプリンティングで量産材料の感触の再現が難しい場合は、3Dプリンティング型による成形が適しています。

その他に過去の事例でもレバレッジの部分を解説します。

山洋電気様の事例

冷却ファンの設計において社内で3Dプリンターを使い始めたことにより、「これまでは、先輩たちの経験値から『こういうものはうまくいかない』とされたアイデアには、チャレンジしてきませんでした。しかし、3Dプリンター導入後は手軽に試作ができるようになったので、思いついたアイデアをみんな形にできるようになりました。多くはないですが、思いついたアイデアで製作したものが想像以上の結果を出したこともありました。」それまでのファンは5~7枚羽根が主流であったが、試しに3枚羽根にしてみたところ、狙った性能が出たという。「3枚だと見た目は本当にスカスカです。ところが試作品を製作してみると、結果は従来品を上回ったのです。経験値だけでなく、一見突拍子もないアイデアでも挑戦してみることが重要なのだと改めて感じました。」

とあり、このように経験が浅い若い設計者がまず「挑戦する気」になれたこと、埋もれてしまったかもしれないアイデアをカタチにできただけでなく、実験で物理的に価値を証明できた成功体験は、この件だけにとどまらずその後の商品価値を大きくする「レバレッジ」が効いた利益だと思います。

日置電機様の事例

電気計測機器の開発における試作に社内3Dプリンターを使われた利点を挙げられていますが、「最初のフェーズのテストサンプルは『失敗してもいい期間』なんです。その段階で何度もチャレンジできるので(製品の)クオリティも間違いなく上がっています」

とあり、短いコメントですが、市販製品の品質が上がるということは、ユーザーの満足度が上がり、良い評判が広まったり、リピート購入につながるという「見えるプラス」以上に、もし不具合が発生した場合の修理、原因調査、対策の金型改修などの実損害や企業イメージ低下を含めた「見えないコスト」を無くせたとすれば、寧ろそちら方が大きなレバレッジが効いた利益になっていると思います。

和歌山工業高校 様の事例

こちらは教育の一環として、3Dスキャナーと3Dプリンター、手作業塗装により、地域で古い文化財の複製を作られていますが、「仏像の盗難」を解決するための「お身代わり仏像」を作られ、「生徒たちは仏像が住民から愛されていると知ることで、社会貢献につながっていることを肌身で感じ取れると思います。レプリカではありますが、高校生と大学生が真心を込めてつくったことも伝えています」とあり、あるお寺の住職は「確かに『身代わり仏像』ですが、本当に誠心誠意つくってくれた心が伝わってきます。信仰の対象としての心ある仏像です」と仰っています。

これは教育の点にとどまらず。社会や文化にも広がるお金に変えられない大きなレバレッジの効果を生み出しています。

教育・開発で使う利益が変わる

突然ですが、下は最近発売されたStratasys J55の利用シーンと、人が見ているプリント品の写真ですが、良くご存じの方は「これまでとの変化」に気付かれるのではないでしょうか?

それは、デザイナー・設計者のすぐ横にPoly Jetフルカラープリンタを置いて使っていることです。

J55は小型ながらフルカラープリントが出来ること、トレイが回転テーブル円盤であることなどが注目されていますが、これまでとの大きな違いは動作音が小さく、匂い少ないため、作りたい人と同じ部屋に置いて使うことが出来ることにあります。このようにプリンターの置き場所が変わったり、CMFと言われる色、質感、触感や電子表示まで表現できるリアリズムの高い試作品が出来るようになることで、前述の教育・開発に3Dプリンターを使う理由、利益、レバレッジも変わると思います。

今後世の中に出てくる装置、材料、ソフトウエアなどにより、更に変わることは想像に難くないことです。皆さんも是非レバレッジの効いた3Dプリンティングの使い方でまずは「今出来ること」に活かされてはいかがでしょうか?

 

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