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「2022年版ものづくり白書」に見る「変化」とは?掲載日:2022/08/24

このコラムでも毎年取り上げてきましたが、2022年5月31日に経済産業省ウエブサイトで「2022年版ものづくり白書」が公開されました。日本のものづくりに関する様々な調査や統計の結果が大変参考になりますが、少し昨年と違う「変化」があり、それは

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

2022年版ものづくり白書と昨年版からの変化

今年の夏も酷暑、大雨など、連日「記録的」や「異常」と報道されるような天気が続き、もうこれが「平年並み」になってしまうのではと、しても仕方がない心配をしていますが、なんとなく家の近くでもセミや蚊が少なかったような気がしますし、ここ数日は涼しいからか、夜は早くも秋の虫の音が聞こえていて、自然界にもいつもと違った変化があるのかもしれません。

さて、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、2022年5月31日に経済産業省ウエブサイトで「2022年版ものづくり白書」が公開されました。この白書についてはこのコラムでも昨年はこちら一昨年はこちらで、毎年取り上げてきました。これまで同様、経済産業省、厚生労働省、文部科学省が共同で作成し、以下のURLからPDFファイルでダウンロードすることができます。

2022年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html

本文は274ページで読むのも大変なので、下記の概要版を読まれることをお勧めします。https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/pdf/gaiyo.pdf

過去同様、日本のものづくりに関する様々な調査や統計の結果があり、貴重な資料であることには変わらないのですが、一方2022年度版を見て、筆者は驚いたというか、正直「なぜ?」と思った「変化」がいくつか見られました。

まず、例えば2021年度版では初めの「総論」に「我が国ものづくり産業が直面する課題と展望」として「製造業のニューノーマル/レジリエンス・グリーン・デジタル」と簡潔なキーワードが示され、白書は「これらの観点から我が国製造業の生き残り戦略に資する動向分析を行う」とし、確かに日本の製造業が直面している課題と、それに対して求められること、取り組むべき提案が書かれていて、良し悪しは別にして、危機感も含め国が考える「進む方向」が示されていて、とても参考になりました。

ところが、2022年度版では、冒頭の概要に下記のように書かれていました。

・2022年版では、統計や各種調査を活用し、我が国製造業の業況等の動向を分析するとともに、大きな事業環境変化として、カーボンニュートラル、人権尊重、DX(デジタルトランスフォーメーション)等に関する動向・事例をまとめた

その次には昨年あった「総論」が無くなり、すぐに「第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題」が始まり、続いて国の施策について書かれていました。

つまり、調査統計を図表にしてわかりやすくしたり、分析して現状を「まとめて示した」もので、「これからどうするか」の大事な提言の部分が弱くなっていると感じました。あまりに不透明で複雑で変化が急かつ予測できないので、「なんとも言いようがない」からなのか、どういう理由や背景があるのかはわかりませんが、筆者にとっては残念な変化でした。

もう一つは、元々白書ではあまり具体的な技術やツールは取り上げていないのですが、全体版PDFの中で単語「3D」や「3D プリンタ」を検索すると、ヒットする件数は昨年と比べて大きく減っていました。

「3D」 2021年度版=20件 → 2022年度版=3件
「3D プリンタ」 2021年度版=4件 → 2022年度版=1件

もちろんこれだけで結論は出せませんし、「3D」や「3D プリンタ」が普通に使われるようになったのでキーワードとして出て来なくなったのかもしれませんが、2022年度版では、「ものづくり」そのものより経済、経営、ビジネス、人材におけるデジタルやデータ活用の話題や視点が増えたような「変化」を感じました。もちろんこれらも大事なのですが、2021年版で多く出てきた「ダイナミック ケイパビリティ強化」の話題も減っていて、それらも実情は改善解決されているとは思えず、「なぜ?」と思いました。

その中で、広い意味で3Dプリンティングも含まれるであろうデジタル技術について下記引用の調査分析がありました。

・ものづくり企業におけるデジタル技術について、「活用している」とした企業が67.2%にのぼり、そのうち、5割を超える企業が「生産性の向上」との効果が出ていると回答。

「デジタル技術の活用により効果が出た項目」のアンケート結果中で複数選択上位5つの2番目に「開発・製造のリードタイムの削減」(41.5%)があり、効果が出ている企業は増えているものの、まだ活用自体や効果を出せる余地がまだまだ多いのではと考えています。

また、国の施策として、ご存じの通り中小企業、教育機関へ新しいものづくり導入の様々な金銭的支援があり、その他にも白書「ものづくり産業の振興に係る施策」の中では多くの施策が実行または計画されていることもわかります。

3Dプリンティングに直接かかわる施策は

積層造形部品開発の効率化のための基盤技術開発事業(2億4百万円)

しか見つけられず、例えばこのコラムでもご紹介したアメリカの「AM Forward」と比較すると寂しくはありますが、今後需要発展が見込まれる分野での、3Dプリンティングがどこかで役立ちそうな施策も多数あり、一部を以下に引用しますが、これらの中で活用が進めばと期待しています。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(2,300億円(2020年度第3次補正)の内数、2,001億円(2021年度補正)の内数))

電動車普及に向けた取組(155億円(当初)、116億97百万円(経済産業省36億97百万円、環境省80億円)(2020年度第3次補正)

小型衛星コンステレーション関連要素技術開発(12億20百万円)

宇宙船外汎用作業ロボットアーム・ハンド技術開発(2億70百万円)

省エネ型化学品製造プロセス技術の開発事業(22億84百万円)

健康・医療情報を活用した行動変容促進事業(44億55百万円の内数)

革新的ロボット研究開発等基盤構築事業(6億57百万円)

ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(40億円)

「ものづくり」の「もの」と「つくりかた」あっての3Dプリンティング

筆者の偏った見方かもしれませんが、昨年までのものづくり白書では、「ものづくり」、つまり「もの」と「つくりかた」が主で、そのための「サプライチェーンやダイナミックケイパビリティ、レジリエンスの強化」が課題で、その改善・実現の手段や基礎としてデジタル、人材育成、基礎科学技術が必要で、そのための支援施策という流れがあったように思いますが、2022年度版は、そのデジタル、AI、データサイエンスや、それらが使える人材育成という「手段」をどうするかが主になっているように見えました。例えば、「教育・研究開発」の中で「Society 5.0実現のための研究開発」として以下引用の現状分析と提言がありました。

国内外における情勢変化と新型コロナウイルス感染症拡大の中、科学技術・イノベーション政策については、Society 5.0の前提となる研究環境等のデジタル化が十分進んでいない。
・ Society 5.0の実現に向け、第6期科学技術・イノベーション基本計画に基づき、総合知やエビデンスを活用しつつ、バックキャストにより政策を立案し、イノベーションの創出により社会変革を進めていく。
・革新的な人工知能、ビッグデータ、IoT、マテリアル、光・量子技術、環境・エネルギーなどの未来社会の鍵となる先端的研究開発の推進が必要。

Society5.0は日本の目指す社会としてはわかりますが、少し遠すぎる、大きすぎるゴールであり、今の製造産業として国際市場でどの分野でどう競って儲けていくのか、または国内の経済、生活の課題や需要を解決して内需拡大に資する製造・科学・情報技術のなかで、重点的に直近で取り組むべき分野、もの、つくりかたはなにか、そのための国の支援施策の提言が薄まっているように感じました。「もの」と「つくりかた」をどうするかが主にあって、3Dプリンティングはその手段の一つとして「どう使うか」が出てくるので、ものづくり白書も今後また「もの」と「つくりかた」を主にした総論や提言が含まれるものになればと個人的に期待しています。みなさんはどうでしょう?

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