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金属組織制御のためのDIC・温度分布同時測定
東京工業大学・中田研究室では、金属組織制御のためのミクロ組織の研究が行われています。その中で、GOM社ARAMISとサーモグラフィの同時測定を活用し、金属組織の挙動を可視化しています。
新規加熱冷却装置を用いた電子基板のDIC・温度分布同時測定
本事例では、エスペック(株)様が開発した観察窓が不要な新方式の加熱冷却装置を用い、GOM社ARAMISによる3D DICとサーモグラフィの同期測定を行うことによって、実装基板の変形と温度分布の同時評価を実現した事例をご紹介します。
自動車のNVH対策のための非接触3D振動計測
GOM社ARAMISは非接触で対象の振動やモーションの多点同時計測が可能です。ソフトウエアは計測結果のFFT解析により、さまざまな製品の実稼働解析(ODS)によるモーダルシェイプを得ることができます。
大型鋳物製品の光学式測定
従来通りに接触式三次元測定機で鋳造品の形状や寸法を測定するには限界が生じる。その為、アメリカの鋳造メーカー:Bradken社は大きな鋳造品には光学式三次元測定技術を活用することで、検査工数の削減、品質の向上、修正工数の削減の業務改善を図ることとなった。
Bradken社は、ワシントン州タコマに位置する長い歴史がある鋳造メーカーであり、1899年にAtlasという名前で当初設立され、伐木企業が盛んな北西地区で鉄製鋳造品生産を始めた。
1930年代に先行して鋼鉄の鋳物生産にシフトし、1950年代は輸送管や精製所や化学工場に使用する為のポンプ製造に重点を置いた。1980年代にはタービンとコンプレッサー生産に重点が置かれ、その数年後強度が高い合金鋼製鋳造品の製造を行い、海上船の部品を生産した。そして、海軍船や潜水艦で適用されるHY-80やHY-100の合金鋼製の部品生産も行うようになった。これら高強度材は1平方メートル当たり700キロトンの水圧でも耐久できる。
社名をAtlasからBradkenに改名した後、Bradken社はタコマ工場での高品質の鋳造品生産を維持する為に新技術に投資した。 今日、工場ではタービン、ポンプ、バルブ、コンプレッサー、25キロトンの重量まである水力発電機まで様々な鋳造品を生産している。
接触式三次元測定機の限界:新たな測定機への投資
高品質な鋳造品の生産量は、多くなるにつれて完全で一貫した品質管理が重要になった。したがって素早く全体形状を測定・検査することができる方法が必要となった。また4.5mもある複雑な形状や寸法を測定できる必要もあった。そして、従来の多関節アーム型接触式三次元測定機では製品の形状/寸法管理に数週間を要した。
アームを動かす度にいつも基準取りを行う必要があり、重複部分の座標計算でエラー起きる等の問題があったからである。さらに操作も難しかった。結果としてBradken内で測定される部品個数の観点で接触式には限界があった。
また公差の厳しい大きな鋳造品はアーム型測定機では測定できず、レーザートラッカーを所有している外注先に測定依頼をしなければならなかった。したがってタコマの工場で自社で検査ができるように、Bradken社は次の観点で三次元測定機を探した。
- 測定時間が短い
- 柔軟性がある
- 高精度
- 大きく複雑形状の鋳造品を完全に測定できる
測定機を選定する中でアーム型レーザースキャナ、ハンディスキャナ、光学式3Dスキャナ等様々な測定機を輸送容器として生産ラインで使用される大きく加工されたドーム型の鋳造品でテストした。
アーム型レーザースキャナとハンディスキャナは測定範囲が小さく測定距離に制限がある為、大きくドーム型の鋳造品の測定が難しく、実際は作業を交代しながらなんとか実物の25%程度をなんとか測定できるにとどまった。
さらにアーム型レーザースキャナは要求した1.5mmの表面精度が満たされず、ハンディスキャナは作業者の負担を鑑みて長時間使用に適さないことがわかった。
一方、レーザートラッカーはドーム型の鋳造品に対し正確な測定ができたが、数点しか測定できなかった為、表面測定としては十分な情報量ではなく、作業者によって結果が変わることも問題であった。
ATOS選定の要因と導入効果
Bradken社は最大1600万画素の高解像度なカメラを搭載している光学式3DスキャナであるGOM社製ATOS Triple Scanを選定した。選定要因は以下4点である。
- 正確なデータ取得できる
- 高解像度(最大1600万画素CCDカメラ搭載)
- 測定範囲に関し柔軟性に富んでいる(小物から大物まで1システムで測定可能)
- 作業が簡単
- ブルーライト技術(低帯域のブルーライトは外部光の影響を受けにくく、また低反射の為光沢面の測定精度も良い)
ATOS Triple Scanは右カメラ/左カメラ個々がプロジェクターと三角測量をすることで従来の左右カメラの三角測量と合わせて3方向から対象物を撮影ができるようになった為、1回の測定で3方向から測定する3-in-1のセンサーシステムである。メリットは下記3点である。
- 測定回数の削減による測定時間の短縮
- 複雑形状に対応
- 光沢面に対する改善(3方向の内1方向でも光沢のない部位を測定できればそのデータを採用)
従来の接触式三次元測定機やレーザースキャナでは難しかったが、ATOSではBradken製鋳造品の全体形状を測定できた。これはATOSの測定原理に起因する。ATOSは真ん中のプロジェクターから縞模様のパターンを対象物の表面に投影し表面形状を認識させることで全体形状の測定が可能であり、よって前述の三角測量と合わせて1回の測定2~3秒で大量の何百万点の座標を取得でき、細部の形状まで正確に再現できる。
そしてATOSのソフトウェアで自動的に点群データを処理し、最終的に高密度なポリゴンデータ(STL)を生成する。生成されたポリゴンデータを活用し、形状や寸法の分析、特にCADSデータと全体形状で正確に比較できる。 ゆえにBradken社のエンジニアはカラーマップによって問題箇所を即座に把握できる為修正工数の削減につながる。
Bradken社はATOS Triple Scanに加えてTRITOPというフォトグラメトリシステムを活用し大きな鋳造品やタービンハウジング等アッセンブリ品の正確な座標取得を行っている。フォトグラメトリシステムとは複数方向から撮影した画像を解析することで3D座標や3D変位分析ができる技術である。
以上からBradken社はGOM製測定システムを導入したことで以下4点の検査工程改善ができた。
- 大きく複雑形状の製品を測定できる
- 完全な全体形状測定ができる
- 厳しい公差に対応できる
- 検査工数の削減
ATOSに投資した費用対効果は期待以上であり、また外注へのコストカットも実現した。
解析と実測を組み合わせることで更なる業務改善を達成
GOMの測定システムの導入により、修正工数が著しく削減でき、全体の生産工程のスピードアップが実現できた。特にガスタービンハウジング等の大物は冷却工程で大きく変形や歪みが生じる。その結果を予測する為に、Bradken社はMagmasoftという鋳造向け解析ソフトを使用している。
Bradken社では解析結果と実際の寸法変化を関連づけることで解析結果の妥当性を検証しており、勿論実測結果を取得する為にATOSとTRITOPを活用している。鋳造品が初品から正しい寸法で製造されるように測定結果に基づいて鋳型を修正する。
解析結果と実測結果を関連づけることで修正工数を削減し製造工程をスピードアップでき、また要求された公差内に入った製品を生産できる。もしATOSとTRITOPがなかったら上記のような業務改善は達成できなかったであろう、とBradken社は振り返っている。
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