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デンソー 導入事例

DENSO

川は、澄み切っていた。
設計、試作、評価、製造、品質保証──。
1つの商品の完成までには主にこうした流れを辿る。
しかし、製造するものが複雑になればなるほど、数多くの問題点が次から次へと下流へとたどり着き混乱を招くことになる。
自動車部品メーカーとして有名なデンソーのカーエアコンの製造ラインも、長い間同様の問題を抱えていた。
だが今、その製造ラインは業界でも稀有な澄んだ流れとなっている。
国内有数の企業に生まれた1つの「清流」を、訪ねた。


STRATASYS社 Dimension

3次元CADなどのデザインデータを、自動的に立体造形するシステム。ABS樹脂を造形材として使用し、その特性を活かしてさまざまな機能テストにも対応します。 コンパクトな筐体でオフィス環境でも利用できる60dB以下の静寂性を備え、デザイナーや設計者がネットワークプリンタを利用する感覚で、3次元モデルをデスクサイドでも出力できる3Dプリンターです。

Dimension
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東京ドーム25個分

東京ドーム25個分盛夏の強烈な日差しが照りつけていた。
ノコギリ屋根の工場が延々と立ち並ぶ広大な敷地内にトラックが行き来し、そのあまりの広さに、奥にある建物はかげろうのように浮き上がって見える。
愛知県西尾市にあるデンソーの西尾製作所。敷地面積は119万m2。東京ドーム25個分という途方もない広さであり、そこに7,012名もの従業員が勤務する。敷地内の移動は場所によっては徒歩で30分以上もかかるため、敷地内にはバス停があり、従業員用のバスが15分間隔で運行している。
これほど巨大な工場にもかかわらず、西尾製作所はデンソーのごく一部分でしかない。グループ全体の従業員数は約11万8千人にも達し、工場や営業拠点は世界の至るところにある。売り上げは国内で30位以内、経常利益も20位以内に入るという日本でも有数の企業である。
事業のメインは自動車部品で、全売上げの95%以上を占める。国内のすべての自動車メーカーと取引があり、BMW、アウディ、クライスラー、フォードなど、世界の名だたる自動車メーカーにも納品し、海外比率は5割。自動車部品メーカーとしては世界第2位の規模で、自動車部品以外にもQRコードやエコキュートなども開発している。
デンソーは自動車を構成するありとあらゆる部品を製造しているが、西尾製作所で主に製造されているのが、世界でナンバーワンのシェアを誇るカーエアコンである。
世古光正氏と柵木幸雄氏はともに西尾製作所に勤務しており、今回の改革に深くかかわった人物である。
「カーエアコンは車種ごとにエアコンスペースや求められるスペックが違うため、その都度新たなエアコンシステムをつくらなければなりません」
毎年いくつものカーエアコンが設計され、そのたびに新たな製造工程が生まれる。その中で、世古氏は、流れの中のある濁りに気づく。
カーエアコンは、愛知県刈谷市にあるデンソー本社の技術部で設計がおこなわれ、西尾製作所で製造されている。設計したものは技術部が外注し、光造形機や粉末式3Dプリンターなどによって試作品がつくられ、何度か評価が繰り返されたのちに製造部に下りてくる。ところがいざ製造という段階になって問題が生じることがあったのである。
『なぜ今ごろになって』──。
その疑問が、その後10年続く業界でも突出した変革の一蹴りとなる。


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上流から下流へ。流れる不具合点

上流から下流へ。流れる不具合点

「製造工程で発生する不具合が軽微なものならさほど問題ではありませんが、性能にかかわる部分だと設計のやり直しになってしまいます。納期に間に合わない場合は『暫定処置』が必要でした」
暫定処置は万全のチェック体制の証でもあり、それによって製品の高い性能と品質が保たれると言える。しかし、問題は現場だった。暫定措置に数多くの工数がさかれてしまう。本来なら新しいことに取り組むべき生産技術などの仕事が滞り、負のスパイラルになりかねない状況。次々と下流で気付く不具合を早めにチェックする方法はないのか。
「光造形機による試作品のチェックは行っていましたが、積層造形のため形状に関係なく何でもつくれてしまいます。しかし量産では金型を使いますので、必ず成形品を金型から取出す『抜き』の工程が入ります。例えばアンダーカットと呼ばれる凸面や凹面があると金型から抜けません。設計段階で量産のしやすさを考慮することができれば、このようなことは起こらないのです。」
当時、柵木氏は製造部から技術部に異動し、量産を前提とした設計の知識やノウハウを広めることを意識していた。しかし部品点数は膨大であり、部品すべてにおいて量産を考慮した設計を実現するのは無理があると考えていた。
立ち上がったのは世古氏をはじめ、製造部の現場だった。
「この問題をなくすためには、量産の視点を設計・試作段階から反映させていかなければなりません。そこで、技術部から届いた設計データや試作品を製造部の視点で検討し、問題点があれば技術部にフィードバックする必要性を役員に訴えました」
1999年、現場の声に応えるべく、製造部の生産課の一部に『製造部試作』という場が設けられる。量産する立場からの意見が試作段階に入ることで、問題点が下流の製造工程に流れてくることは確実に減っていった。
「確かに減ったものの、我々製造部がチェックしているにもかかわらず、まだまだ問題点が下流まで流れてくることがありました。上流でチェックできている不具合は50%程度という状況でした」


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紙のチェックの限界

紙のチェックの限界

製造部がチェックしているにもかかわらず、不具合が下流へと流れてしまう。その原因はチェック方法にあった。
「性能検査などさまざまな試験があるため、技術部がつくった試作品が製造部の手元にある時間は限られたほんの少しの時間です。かといって、製造部で独自に外部に試作品を依頼すると、それだけで数百万円かかってしまい、それはあまりに負担が大きい。そのため、現実的には技術部からきた3Dデータをプリントし、それを見て量産しやすいかの判断をしていました。しかし、紙では強度や感触はまったくわからない、形状が実感できないのです。そこに限界がありました」
2004年、さらなる厳密なチェック体制を構築するために、生産課の中にあった製造部試作を「試作改善プロ」とした。2006年には、暫定処置などの対応で身動きがとれなくなっていた生産技術を身軽にする目的で新たな組織がつくられ、試作改善プロはそこの「開発試作グループ」としてさらに格上げされた。そして同じ06年、世古氏はある決断をする。
「紙で限界があるのなら、3Dで試作するしかありません。外注に出すとコストがかかるため、製造部で3Dプリンターを購入し、試作していこうと考えました」
世古氏が条件として挙げたのは、装置が安価であること、そして試作モデルの強度だった。光造形機や粉末式3Dプリンターの試作モデルは形状確認はできるものの、ビスをねじ込んだりすると割れてしまい、組み付け検討は不可能である。色々探し回っている中で出会ったのがABS樹脂を積層し試作モデルを造形する3DプリンターDimensionだった。
「当社がつくるものはサイズが大きくDimensionで一括造形はできません。しかし、性能の検証までやろうとは思わなかったので、分割して造形し、その後接着などで貼り合わせしても問題はないと考えました。造形材料はABS樹脂なので十分な強度があり、扱いにも慣れている。これなら組み付けや勘合の検討もできるだろうと、再度購入を役員に直談判したのです。」
2006年9月、世古氏ら現場の声に経営陣が再び応え、Dimensionが導入される。それに伴って、3D
CADの操作に長けている柵木氏が本社技術部から製造部に呼び戻され、技術部からきたデータを次々と試作していった。
「組み付けなどの検討はもちろんですが、技術部への説明に大きな力を発揮しました。データを検討して、『この形のほうが量産しやすい』というアイデアがあれば、その箇所のデータを変更してDimensionで造形する。それを手に『こっちのほうが量産しやすいでしょう』と説明すると、比較的容易に納得してもらえる。説得力のある提案をするための有力なツールとなりました」
そして2007年、ついにそのときがくるのである。


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清流、誕生。そして第二幕へ

清流、誕生。そして第二幕へ

「3Dプリンター導入によってもっとも変わったのは、不具合が格段に見つけやすくなったことです。紙だけのときは50%でしたが、3Dになって80%は洗い出すことができるようになりました。そして下流に不具合点が流れにくくなったことで暫定処置などに追われることがなくなり、もっと先を見据えた取り組みに着手できるようになった。負のスパイラルから脱することができたわけです」
2007年、製造部はこれまで記録したことのなかった数字を達成する。
『暫定処置、ゼロ』
これはすなわち、致命的な不具合が下流まで流れることがなくなったことを意味していた。
この背景には1つのルールも大きく関係している。製造部で3Dの設計データを評価するが、それがある一定の点数を満たさない場合は本金型をつくってはいけない」というルールを決めたのだ。
今、製造部ではDimensionを使いもう1つの改革に着手している。治具の製作である。一般的に治具は加工機による切削によってつくられるが、NCデータを生成するなど手間がかかっていたため、CADデータから直接Dimensionで造形してしまうことで工数の削減につなげている。
長年の課題を克服した世古氏だが、その目はさらなる高みをめざしている。
「今後は下流に目を向けていきたいと思っています。製造過程ではどうしてもネック工程が発生しますが、ネック工程を設計段階から予測し、それを発生させないように設計ができればより理想的。短納期の流れにも対応でき、コストダウンにもつながります」
10年近くの歳月をかけてようやく姿を現した「清流」。その原動力となったのはまさに現場の声だった。
「デンソーには『先進』『信頼』『総智・総力』といったスピリットがあり、新しいことへのチャレンジを応援してくれる体質がある。それが改革の大きな支えになった」
澄んだ川にするだけでなく、濁流が起きないように、上流で水量を調節し効率よく下流に水を届ける──。
2008年、製造現場、経営陣が一丸となったさらなる革新的な取り組みが、製造部で始まろうとしている。


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