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岩手県立大学 導入事例

岩手県立大学 土井章男教授

世の中には「目に見えないもの」がある。
人体は複雑かつ繊細であり、その内部を正確に把握できると、診断、術前計画、手術後の処置などに非常に有効である。
「人体の見えないものを見えるようにする」ことで、それまで手探りだったものが、突如として扱いやすいものとなり、我々の生活を大きく変えていく可能性を秘めている。
岩手県立大学の土井章男教授は、見えないものの可視化に取り組んですでに10年以上になる。そして遂に今年、画期的なある商品を誕生させた。
「この商品が普及すれば、それまであやふやだったものが明確に『見える』ことになる。
そうすれば私たちの社会も間違いなく変わっていくことになるはずです」
土井教授が追い求め続けてきた夢。
人々の未来を変えることになるであろう1つの技術を聞いた。


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3次元CADなどのデザインデータを、自動的に立体造形するシステム。ABS樹脂を造形材として使用し、その特性を活かしてさまざまな機能テストにも対応します。 コンパクトな筐体でオフィス環境でも利用できる60dB以下の静寂性を備え、デザイナーや設計者がネットワークプリンタを利用する感覚で、3次元モデルをデスクサイドでも出力できる3Dプリンターです。

Dimension
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2次元では難しい「正確な把握」

2次元では難しい「正確な把握」その源流は、1895年のことである。
この年、ドイツの物理学者 ヴィルヘルム・レントゲンがX線を発見した。それまで解剖してみなければ、決して見ることのできなかった人体の内部がX線写真によって見えるようになったのである。
それから100年以上もの月日が過ぎ、人体の内部を見る技術は進歩し続け、超音波断層画像、核磁気共鳴画像法(MRI)、X線CT(CT)、血管造影などさまざまな方法が開発され、人体の内部は完全に見えるようになったかのように思える。
「確かに解剖しなければならなかった時代から比べると、『見える』ようにはなりました。しかしどれだけ正確に把握できているかと考えると、現状ではまだ不完全なのです。
X線CTでは、骨などX線を透過しにくい形状を描画することは得意ですが、内臓や腫瘍などは区別が困難です。MRIは水分を含んだ内臓や腫瘍などを描画するのは得意ですが、骨などは描画出来ません。また、MRIは取得時のパラメータを変更することで、出血部位の強調や血管部位・神経線維の表示が可能です。しかしながら、取得した画像群は個別に撮影されるために、同時に見たい場合は,X線CTや複数のMRIを位置合わせ(レジストレーション)することは必要です。しかしながら、これらの画像群を正確に位置合わせすることは、3次元画像処理の難しい問題の1つです」
土井章男教授。日本IBMなどを経て1999年より岩手県立大学の教授を務め、主に3次元画像処理などを研究テーマとしている。その中で土井教授がもっとも力を入れているのが「人体をより正確に見るための技術開発」である。そう、土井教授が見たいと思っていたものは、正確な人体の内部だったのだ。
「手術で重要なのは術前計画です。腫瘍はどの位置にあり、血管や神経はどこを通っているのかを事前に確認し、どのような手順で手術をしていくのかを確認していきます。そうすることで血管や神経などを切ってしまうことなく、安全に手術ができるわけです。その手がかりとなっているのが、人体の内部を見るMRIやCTです。MRIやCTはそれなりの情報量はあります。しかしそれだけでは『正確な把握』は意外と困難なのです」
「正確な把握が困難」その最大の理由は、MRIやCTが2次元データであることだ。MRIは磁気を、CTはX線を使うが、ともに身体の断層画像、すなわちスライスデータによってできている。データのスライス厚は0.5から1mmほどで、一回に500枚以上の画像を撮影することも可能だ。しかし一度に全部の画像を見ることはできないため、30枚くらいをピックアップし、蛍光灯にかざして見ているのが現状だ。
「『達人』と呼ばれるような医師は平面画像だけを見て、頭の中で立体画像を思い描くことができます。しかし、経験の浅い医師や技師が平面画像だけで腫瘍や血管の位置などを正確に把握するのはとても難しいことなのです。そこで、経験や勘を頼りに手術をおこなうことになる。手術を受ける患者さんに負担がかかってしまう可能性があるわけです」
より正確に把握するにはどうすればいいのか──。そこで土井教授が取り組んできたのが、人体の部位を「3次元」で表現する技術の開発である。


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「Volume Extractor3.0/SMESH」3次元データ

ノイズが多いスライスデータ

「2次元画像から3次元の状態を想像しなければならないために正確な把握をすることが難しい。ならば、最初から3次元で示すことができればわかりやすくなることは間違いありません。」
3次元化する際に使うデータはMRIやCTなどのスライスデータだ。土井教授が注力しているのは、スライスデータを積み重ねたものを立体のデータとして捉え、それによって3次元化するという方法である。3次元の技術はかなり成熟してきており、スライスデータを3次元化することはそれほど難しくはない。ただ問題なのは、骨、内臓などの領域があいまいな点スライスデータはCADデータとはまったく異なっている点だ。
「例えば、軟骨はプヨプヨしていてどこが硬骨でどこが軟骨なのか、その境界はとても曖昧です。内蔵にしてもとても入り組んでおりその境界はわかりにくい。つまり、MRIなどのスライスデータは非常に曖昧な情報を含んでおり、数字誤差やノイズが非常に多い。そうしたデータをベースにしているために、CADデータでは考えられないようなことが起こるのです」
スライスデータを3次元化するには、2次元スライスデータを最初に骨、内臓、血管などに領域分けする必要がある。この技術は、セグメンテーションと呼ばれており、あいまいな境界を出来るだけ正確に分ける必要があり、手作業も必要なために、医療分野における非常に難しい問題のひとつである。また、分けられた領域をポリゴン形状というものに変換しなければならないが、その際に画面上に穴がいくつも空いてしまったり一部の面が完全に反転してしまったりと、現実にはありえない形状が出てきてしまう。
そして、もう1つの難題がデータ量である。MRIやCTの高解像度化が進むにつれて、ポリゴン形状に変換すると数百万ポリゴンといった膨大なデータ量になってしまい、データがコアメモリに入らず、パソコンの処理能力を超えるようになってきたのだ。
「データを削るだけならそう難しいことでありません。しかしそれによって形状が変わってしまっては意味がない。データ量を削減しながらも特徴的な形状はしっかり保つ必要があるわけです」
面の反転や特徴を残しながらデータを削減するという作業を、1つ1つ人の手で修正していくのは、あまりに時間と手間がかかり現実的ではない。そこで土井教授は、長い歳月を経てある画期的なソフトを完成させることになる。
『Volume Extractor 3.0/SMESH』である。


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▼モックアップ作品例

「Volume Extractor3.0/SMESH」3次元データ編集ソフト「『SMESH』」を開発

3次元画像可視化ソフト「Volume Extractor Ver.3.0」を開発

『Volume Extractor 3.0/SMESH』によって、2次元のスライスデータがディスプレイに3次元画像として、それも“正しい形”として表示することができ、人体の骨、内臓などの部位を分けたり、その部分を立体として捉えることができるようになった。腫瘍の大きさや面積・体積なども計測することが可能で、腫瘍の大きさを時系列で見ることもできる。また、骨や内臓の部分を光造形装置で出力するためには、整合性の取れた正確なポリゴン形状に変換することが必要です。

編集ソフト「『SMESH』」を開発

手動でデータを修正するのは現実的ではない。となると、自動的に、それもスピーディかつ正確に修正できるのが理想。土井教授が開発したものは、まさにそうした条件を兼ね備えたソフトだ。
「それまで3次元画像処理ソフトの『Volume Extractor』というソフトをつくっており、バージョン2まで開発済みでした。しかしそれらは面をつくることを目的にしているだけで、編集機能はありませんでした。そこで今回、問題点を自動的に探し出し、それを自動で修正する編集ソフト『SMESH』を新たに開発しました。基本モジュールである『Volume Extractor』も使いやすいようにデータをすべて書き換えてバージョン3とし、2つをセットにしたものが『Volume Extractor 3.0/SMESH』です。編集ソフト『SMESH』は『Volume Extractor』の中に組み込まれており、ユーザにとっても使いやすいのが特徴です」
これにより、穴埋め、反転の修正などを自動的におこなえるだけでなく、特徴を残しながらデータ量を削減することも可能になった。そして土井教授はこのソフトを使いやすくするためにある工夫を施している。
「実は市場にはスライスデータを3次元化できるソフトはすでに出ています。しかし、それは非常に高価であったり、機能やメニューがとても多く、熟練者でないと使いこなせないのです。そこで『Volume Extractor 3.0/SMESH』は医療用に特化し、メニューも最小限にし、マウスで直感的に操作できるようにしたことで、だれにでも簡単に使えるソフトにしました。また、2次元スライスデータの入力から、3次元表示、セグメンテーション、ポリゴンデータへの変換、ポリゴンデータの編集、STLファイルへの出力、光造形装置での出力を『Volume Extractor 3.0/SMESH』のみでおこなえます。現状のソフトウェアは、別会社や個別のソフトウェアを組合す必要があります」
そして、土井教授が『Volume Extractor 3.0/SMESH』をベースにもう1つ開発を進めているのが「人工関節術前計画システム(仮称)」である。
「関節がすり減ってしまったときに代わりに埋め込むのが人工関節ですが、その手術件数は年々増えています。しかし、術前計画はX線写真に鉛筆と定規で作図をしているのが現状で、うまくいかなかった場合、つけたものを取り出して再度つけ直さなければなりません。こうした負担を減らすには、何よりも入念な術前計画が必要になる。それをサポートするのがこのシステムです」
2次元のスライスデータを3次元データ化し立体として表示するなど、基本は「Volume Extractor 3.0/SMESH」と同じだが、骨軸や間隙の自動抽出など、人工関節の術前計画のために独自の機能が付加されているのが特徴だ。そして、「Volume Extractor 3.0/SMESH」「人工関節術前計画システム」に関して、土井教授は共にある付加価値を提案している。
「ディスプレイ上の3次元画像だけでもかなりの精度で把握することは可能です。しかし、さらにもうワンステップ踏むことでより間違いのない術前計画が可能になるのです」


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人体のモックアップ

立体モデルでさらなるステップへ

土井教授の提案する次なるワンステップ、それは3次元造形装置による立体モデルの造形である。
「『Volume Extractor 3.0/SMESH』『人工関節術前計画システム』共に3次元で造形するためのSTLフォーマットで出力することが可能で、容易に立体モデルにすることができます。『実際の立体物』の方が正確に現状把握ができることは間違いありません。光造形装置や、材料にABS樹脂を使うDimensionにも対応していますが、光造形装置は価格も高く維持費もかかることから、現実的にはプリンタ感覚で使える上、価格も安いDimensionのような3次元造形装置が普及していくと思います」
「Volume Extractor 3.0/SMESH」はすでに発売を開始しており、「人工関節術前計画システム」も近く完成し、発売される予定だ。詳細は、株式会社アイプランツ・システムズのホームページ(http://www.i-plants.jp/hp/)を参照してほしい。
「大学の研究開発によって、社会で実用的に使えるソフトウェアを製作するというのは、たぶんほとんど例がないと思います。研究用に開発したソフトウェアは、一般に研究者本人が使うことを前提にしてますので、汎用的には作っていません。それができたのは、この開発が科学技術振興機構の『独創的シリーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進』に選ばれ、研究開発費が出たことが理由の1つ。もう1つの理由は、私が所属する岩手県立大学が『実践実学』をモットーにしており、研究開発に寛容な風土があったことです。大学のスタッフたちが理解を示してくれたのは、開発するに当たって大きな力になりました」
現在、土井教授はさらなる開発に力を注いでおり、X線CT画像や複数のMRIを正確に位置合わせする技術も開発中である。完成したら「Volume Extractor 3.0/SMESH」にモジュールとして組み込めるようにする予定だ。
「見えないものを『見える』ようにしたい──」
これは医学研究者にとって必然的な願いだろう。
レントゲンによるX線の発見によって「見えないもの」が「見える」ようになった。それから110年あまりを経て、X線写真上に映っているに過ぎなかった人体は、実際の“形”として、我々の前に提示されようとしている。


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