株式会社バンダイナムコスタジオ様

HCI「Nutanix」により仮想基盤を構築。必要なときに仮想マシンを提供。ノード追加だけでリソース増強。ゲーム開発の生産性と安定性を支える。

バンダイナムコグループの中で、ゲーム開発に特化したクリエイター・エンジニア集団「バンダイナムコスタジオ」。同社は、開発者が日々利用するバージョン管理ツールPerforce用物理サーバの老朽化に伴い、HCI「Nutanix」を導入しハードウェアを刷新した。必要な機能が統合されたNutanixによりシンプルな構成で仮想基盤を構築。必要なときに仮想マシンの提供、ノード追加だけでリソース増強、海外オフィスで実施したリモートでの機器リプレイスなど、変化や環境に柔軟に応える。さらに耐障害性、無停止でのバージョンアップなど業務に影響を及ぼさない運用を実現。構築パートナーのMSYSとNutanixが連携したサポートに対する評価も高い。HCIによる仮想基盤が日進月歩のゲーム開発を支える。

  • サーバ仮想化とリソース確保の両方を実現したい
  • 移行時の作業効率化、ダウンタイムを最小限に抑えたい
  • サービス停止を最小化する運用を実現したい
  • リモートで海外オフィスのHCIをリプレイスしたい

01[導入の背景]
ゲーム開発に欠かせないバージョン管理
物理サーバでは運用が限界に

世界のエンターテインメントをリードするバンダイナムコグループ。2012年に、バンダイナムコエンターテインメントから開発機能を分社化し誕生したのが、バンダイナムコスタジオだ。ゲーム開発に最適化された制度・仕組みを導入し、スキル向上や創造性の発揮を促すことで、「代替できない圧倒的に市場価値の高い、クリエイティブな開発集団」を目指す。

同社は、家庭用ゲームソフト、スマートフォンやSNS市場に対応したモバイル・PCコンテンツを中心に、ヒットタイトルを数多く手掛けてきた。世界に名の知れたIP(知的財産)も多い。プロの開発スタジオとして、バンダイナムコエンターテインメントのタイトルはもちろん、他社タイトルの開発も行っている。

日進月歩のゲーム開発は、歩み続けなければならない。楽しむことが大好きな世界中の人々が待っているからだ。約1,000名のクリエイターが、今までにない体験を提供するべく全力を注ぐ。デジタル化が進むゲーム開発において、ITの果たす役割は大きい。なかでも必須ツールの1つが、バイナリデータやソースコードなどゲーム開発におけるバージョン管理を行うPerforceである。

2022年、同社はPerforceが稼働するサーバの老朽化に伴い、リプレイスの検討に入った。従来の課題について、同社 ITサービス企画課 熊本 龍馬氏は話す。「物理サーバ5台でPerforceを動かしていました。問題は、Perforceが非常にリソースを必要するという点です。1台のサーバで多くの開発者がバージョン管理を行うため、管理対象も利用者数分だけ増加。サーバ負荷が高くなり、レスポンスが遅くなる。物理サーバに限界がきても、バージョン管理は行わなければならず、グループの情報システム部門が運用する共用仮想基盤から仮想マシンの提供を受けるなど、リソース確保に苦労しました」

2011年に、Perforce用サーバを導入した当初は、仮想化も検討したと熊本氏は振り返る。「Perforceは多くのリソースを必要とするため、専用の物理サーバを導入するという結論に至りました。増強ニーズに応じて追加導入してきたのですが、構築に数カ月を要する状態では、ゲーム開発ビジネスのスピードに対応できません。またサーバ台数の増加は、スペース面での課題も生じる。さらに、ゲーム開発では予定外のことが起きます。急なトッププロジェクトの開始や量産体制への対応など、一気に増加するユーザ数に応えるために、新しいサーバが必要です。速やかに拡張できる柔軟性も課題でした」

同社が次期システムに求めたのは、必要なときに環境を提供できるサーバ仮想化と、リソースの容易な確保の実現だ。解決策となったのが、HCI(ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ)Nutanixである。同社シンガポール拠点で導入し高い評価を得ていた。

02[導入のポイント]
必要なときに仮想マシンを素早く提供
ノード追加するだけでリソースを増強

同社シンガポール拠点でも、Perforceをはじめとする様々なツールが物理サーバ上で稼働していた。深刻化するリソース不足を解消するために導入したのが、HCIのNutanixだった。「サーバ、ネットワーク、ストレージ、ソフトウェアなどサーバ仮想化に必要な機能を統合したHCIには、関心を持っていました」と熊本氏は話す。「リソースに空きがある限り、仮想マシンを素早く提供できる。ノードを追加するだけでリソースの増強が可能。またWeb画面上のGUIにより統合管理が行える点もポイントとなりました。シンガポール拠点にはIT専任担当がいないため、日本側でリモート運用を行う必要があるからです。HCI製品の中でNutanixを選択した理由は、HCIのパイオニアであり、豊富な導入実績に加え、しっかりとしたサポートもポイントとなりました」

必要な機能を統合したHCI「Nutanix」。シンプルな構成でサーバ仮想化を実現する。

2022年、同社はPerforceを動かす次期システムとして、Nutanix導入プロジェクトをスタート。構築パートナーには、ストレージ製品の導入支援で信頼関係を構築していた丸紅情報システムズ(MSYS)を採用。「Nutanixの導入実績もあり、安心して任すことができると判断しました」(熊本氏)

まず、MSYSから検証機の貸出を受け、事前検証を実施したと同社 ITサービス企画課 吉田 卓哉氏は話す。「実データを使って様々な角度から細かくチェックしました。特に注意したポイントは、以前グループ会社の共用仮想基盤から仮想マシンの提供を受けたときに、Perforceを複数の仮想マシンで利用した際、一気にリソースを消費し遅延が起きるという問題が発生したという点です。Nutanixではロードバランシング(負荷分散)などにより、懸念していた問題が起きないことを事前検証で確認しました」

物理サーバとNutanixとの性能比較も行ったという。「従来、Perforceで送信された全履歴のソースコードやバイナリデータを外部ストレージに保管していました。それらをNutanix内部に保管することにより、パフォーマンスも速く、ストレージの容量単価も安くなることを確認しました」(吉田氏)

03[導入のプロセス]
基盤構築を二週間という短期間で実現
34台の仮想マシンの移行を1日で完了、ダウンタイムも最短1分

Nutanixは各機能の個別設定などが必要ないため、基盤構築を二週間という短期間で実現。2022年9月中旬からPerforceデータのNutanixへの移行を開始。Nutanix では、独自ハイパーバイザーのNutanix AHVがOSの標準機能として無償提供されるため、コスト削減も図れる。

VMware vSphere環境からNutanix AHV環境への仮想マシンの移行は、無償提供の移行ツールNutanix Moveを利用することで容易に行える。「Nutanix MoveのGUI画面上で移行元の仮想マシンを選択し、クリック操作でNutanixの仮想基盤に移行できます。仮想マシン1台の移行時間は3時間から5時間、同時並行で移行が行えるため、仮想マシン34台の移行作業を1日で完了できました」(熊本氏)

切り替えにおけるダウンタイムの最小化もメリットが大きいと吉田氏は付け加える。「サービス停止時間は、最短1分、平均で5分以内、業務への影響も当社として許容範囲でした」

熊本氏はNutanix Moveによる移行を評価する。「カットオーバーして切り替えた後、ネットワークの設定を手動で書き換える必要があります。この部分を効率化できたら、移行に関して手作業から解放されます。しかし、Nutanix Moveを使わなかったら、1台ずつ手作業で移行作業を実施しなければならず、ダウンタイムにおけるユーザ側との調整も大変だったと思います」

Nutanix Moveの利用では、OSや仮想化ソフトウェアのバージョン確認が必要だ。余りに古いと、対象外となる。MSYSは、移行前・切り替え時・移行後の各フェーズで現場の声に着目し改善に向けた工夫に取り組む。

2022年9月末に、Nutanixをベースとする次期システムのサービス提供を開始。「移行後、トラブルや不具合は一切なく、安定稼働を続けています」(吉田氏)。次期システムへの展開は、新規プロジェクトをNutanixで動かし、既存プロジェクトの順次切り替えを行う。

物理サーバとNutanixを併用する中で、HCIの真価を実感する出来事があったと吉田氏は話す。「Perforce を動かす1台の物理サーバが故障しました。仮復旧したのですが、故障原因がわからずいつ止まってしまうか、不安でいっぱいでした。ハードが止まったときの影響は甚大です。すぐにNutanixの活用を決断。故障したサーバを使っていたプロジェクトに関して、Perforceのデータをストレージから1日がかりでNutanixに移行、すぐに仮想マシンを作成し、その上で業務を継続することでリスクを回避できました。必要なときに必要なだけ仮想マシンを利用できるメリットを享受した瞬間でした」

吉田氏は、HCIの耐障害性にも言及する。「HCIは常にサーバ多重システムとして動作するため、ハード故障時にも自律的にノードが補完 しあうことで高い堅牢性を実現します」

04[今後の展開]
MSYSとNutanixのサポートのもと海外も含めた更なる利用領域の拡大

同社は、ノード追加によりPerforce用Nutanix基盤のリソースを増強した。「ノード追加に関して物理的な作業は1日で終わりました。今回はOSのバージョンアップがあったのですが、それでも3日で完了。バージョンアップも無停止で行い、基盤上の仮想マシンに影響することなく、まさに仮想基盤の理想的なかたちだと思います。ゲーム開発はワールドワイドになっており、なおかつPerforceは連携するシステムも多く、24時間止まることが許されません」(吉田氏)

Nutanixによるリプレイスの概念図。リプレイスでは新しいノードを追加し、古いノードを抜くだけ。海外オフィスのリプレイス作業も、現地と連携することでリモートでも可能だ。

Nutanixはリプレイスもリモートで行えると熊本氏は話す。「2021年、シンガポール拠点におけるリプレイスは、コロナ禍で現地に行くことができず、MSYSとNutanixの技術支援のもとすべてリモートで行いました。新しいノードを追加し、古いノードが抜かれていく。その様子をグラフィカルな管理画面で確認しながら進めました。無停止で業務に影響することなく、スムーズに完了。これまでの構築の概念を変える新しい体験でした」

少数精鋭の同社ITサービス企画課はやるべきことが多い。MSYSとNutanixのサポートによりプロジェクトをスムーズに進行できたと吉田氏は話す。「HCIは複数の仮想マシンを分散配置させてシステム全体で高い性能を享受するアーキテクチャのため、事前検証の際に、MSYSから構成に関してアドバイスをもらいました。またNutanixの技術者は、スキルが高く、問い合わせに対していろいろと調べて迅速かつ的確な回答を、日本語で返してくれます。リモート構築でも感じたのですが、MSYSとNutanixの密な連携はとても心強いです」

今後の展開について熊本氏は話す。「パブリッククラウドへの移行は重要なテーマです。しかし、社外秘データやNDA(秘密保持契約)などパブリッククラウドにのせられないものや、作業効率の観点からローカルにデータを置いたほうが有利なものなど、オンプレミスの活用は今後も必要です。Nutanixを使い続けるのは、必然だと考えています。今も、リソースが足りないという話もあります。引き続き、MSYSにはNutanixの拡張や更新などの支援をお願いしたいと思います」

エンターテインメントコンテンツ制作の可能性を広げる、バンダイナムコスタジオ。MSYSはNutanixの導入支援を通じて、同社におけるゲーム開発の現在と未来を支える。

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