140万人のライフラインを支える。在宅勤務の効率的運用の決め手。

ブロードバンドサービスの主流となったFTTH(Fiber To The Home)。
光ファイバーを使った家庭向け高速インターネット接続サービスだが、各都道府県において全世帯数に占めるFTTH加入世帯数の割合(世帯普及率)が最も高いのはどこだろう?

答えは滋賀県。ちなみに2位京都府、3位東京都、4位奈良県、5位大阪府

近畿地区が全国平均を大きく上回っている理由はFTTH事業者がサービス競争を繰り広げているからだ。
なかでもユニークな存在が、関西一円に広がる独自の光ファイバーネットワークを基盤とするケイ・オプティコムである。

近畿のFTTHサービスにおいて戸建てのシェアは約半数を占め、加入者数も140万人近く。
近畿で圧倒的な人気を誇る、その魅力は低料金だけではない。
地元に対する強い思いが、その人気を支えているのだろうか。
例えば、関西地域のライフラインを担う同社は、事業継続の観点から、全社員を対象にSSL-VPNを利用した在宅勤務の実現に取り組んでいる。

災害やパンデミックなど有事の時でもサービスを止めず、通信インフラで地元を支え続けるために。

※出所:「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成24年度第2四半期(9月末))」総務省発表(H24.12.19)をもとにH24.3世帯数値からケイ・オプティコムで算定。

近畿のFTTHサービスで戸建てのシェアは約半数、圧倒的人気には理由がある

3万人の市民が参加する大阪マラソン。

スタート前にインターネット上で、「ランナーズ・アイで見てね」とつぶやくランナーがいるという。ランナーズ・アイは特別協賛社としてケイ・オプティコムが提供している無料動画配信サービスだ。

「計測地点に公衆無線LANのアクセスポイントとカメラを設置して動画を配信するのですが、氏名またはゼッケン番号で検索するとインターネットを通じてランナーの様子がわかります。元気で走っているなとか、歩いてしまっているけど大丈夫かなとか。ちゃんとゴールができたのかどうかも確認できます。家族や友人が走っている映像を見ると安心できますし、頑張っている姿に感動します。テレビ中継とは違って、特定の人に絞ることができるというのが特徴だと思います」と経営本部 経営戦略グループ コーポレート広報チーム 本村幸子氏は説明する。

ランナーズ・アイは、情報通信サービス企業の特長を活かしたサービスだが、それだけではない。ひとりひとりのランナーに寄り添う企業姿勢は、「光をもっと、あなたのそばに」という同社のコーポレート・スローガンにも通じるものがあるといえるだろう。

お客様の声を聞き、お客様の視点で物事を考える。日々の積み重ねは数字にも表れている。近畿のFTTHサービスにおける戸建てのシェアは約半数、加入者数も約140万人。さまざまな外部調査機関から複数年にわたり、近畿において「お客様満足度No.1」※の評価を得ている。

その理由として、関西電力グループの一員として、地域の発展に貢献しようと努力する同社の姿勢が、サービスを通じて伝播し高評価につながっていることは間違いなさそうだ。また、関西一円に広がる独自の光ファイバーネットワークを基盤としていることも強みとなっている。低料金化といった販売戦略や、新サービスのスピーディーな展開など、お客様のニーズにいち早く応えることが可能となるからだ。戸建て向けの光電話サービスや1ギガ(1Gbps)のFTTHサービスを日本で初めて開始したのも同社である。

現在、個人向けにネット、電話、テレビのサービスを提供しているeo光で注目のサービスがeoスマートリンクだ。
「WiFiを利用してキッチン、寝室など家庭内のどこでもタブレットを持ち運んで利用できます。また生活情報、エンターテインメントといったサービスのほか、電力見える化サービスといったホームICTによる独自コンテンツにも注力しています。コンテンツビジネスはFTTHサービスの次を担う柱の1つに位置づけています」と経営本部 ITシステムグループ システム計画チーム マネージャー 木村聡氏は話す。

法人向けサービスは、顧客の要望に合わせて最適なネットワークソリューションを提供するビジネス光に加え、ネット、電話、ホスティングのサービスをセットにして中小規模企業向けに低価格で提供するオフィスeo光が好評だ。また、回線から配信システム、端末までのプラットフォームを提供するデジタルサイネージ(電子看板)は地元企業の関心も高いという。

地域に根差した企業活動を行っている同社は地元への思いも強く、140万人のライフラインと、地域のビジネスラインを担っているという使命感はすべての活動の原動力となっている。

※RBB TODAYブロードバンドアワード2012ベストキャリア(近畿)6年連続No.1/オリコンCS(顧客満足度)ランキング プロバイダ満足度総合No.1(全国)、4年連続No.1(近畿)、インターネット回線満足度総合No.1/価格.com プロバイダ満足度ランキング2012 5年連続受賞 近畿地区光ファイバー総合の部 No.1。

140万人のライフラインを守るためにBCP対策としての在宅勤務

同社では、光ファイバーネットワークに関して設備の二重化、24時間365日体制の集中監視などを実施してサービスの安定供給に努めている。現在、BCP(事業継続計画)の一環として取り組んでいるのが在宅勤務である。きっかけとなったのは、東日本大震災や鳥インフルエンザの流行だった。

「当社は地域にお住まいの140万件近いお客様のライフラインを担っていますから、災害の発生や新型インフルエンザの流行など想定外の事態が起こった時でもサービスを止めることはできません。地域密着型で、いつでもお客様のお役に立てる体制を整えておくためにBCP対策を目的とする在宅勤務の実現は急務でした。設備の二重化だけでなく、その人にしか対応できない業務もあります」と経営本部ITシステムグループ システム計画チーム リーダー 山内大介氏は語る。

在宅勤務は、同社が進めるワークスタイル変革の中の1つのテーマとして位置づけられている。もう1つの大きなテーマが、スマートフォンやタブレットを使って外出先でも業務が行えるモバイルワークだ。モバイルワークは法人営業部門のニーズが高いという。その理由について木村氏はこう話す。

「法人営業ではお客様に説明するために多くの資料が必要です。紙の資料は持ち歩くのも大変ですし、突発的なご質問に対する資料を持ち合わせていない場合も考えられます。お客様先でタブレットを使えば、必要なパンフレットなどをすぐに表示して説明できるうえ、動画でわかりやすく説明することも可能です。将来的には見積書も社内システムにアクセスしてその場で作れるようになればお客様も判断がしやすくなります」

業務の効率化という面では、外出先で報告書を作成しインターネットを通じて提出することで、報告書作成のために帰社する必要もなくなる。モバイルの活用とともにワークフローを電子化することで申請・承認作業の迅速化も可能だ。会議にタブレットを持参し画面上で資料を見ることで、紙の資料を用意する手間も減りペーパーレス化も推進できる。

ワークスタイル変革を実現するためのシステム面での課題とは何だろうか。在宅勤務や、タブレットなどを使ったモバイルワークはメリットが大きい分、情報漏えいなどのリスクが高まる懸念もある。またBCP対策を目的とする在宅勤務では投資対効果の評価が難しく、コストの抑制もポイントになるという。

有事の場合だけ利用できる従量制ライセンス体系も採用のポイント

従来、同社が全くモバイルワークを導入していなかったわけではない。同社の営業スタッフは、外出先で会社支給のノートパソコンを使って業務を行っている。今回は、タブレットやスマートフォンの利用によりモバイルの活用シーンを広げていくことが目的だ。また、通信を暗号化しセキュアなリモートアクセスを実現するために導入した既存のSSL-VPN装置に信頼性の面で問題が生じていたという。

「装置のリプレース時期と重なったこともあり、新しいSSL-VPN装置を採用しワークスタイル変革の基盤づくりを行うことになりました。また社内利用でノウハウを蓄積した上で法人様へのご提案活動を実施することも視野に入れています」(山内氏)

SSL-VPN装置の選択では大きく3つのポイントが重視された。1つめが、iPhone/iPadとAndroid端末の両方への対応だ。同社の選択肢の幅を広げるとともに、サービスとして展開する場合も端末がOSに依存しない点は重要となる。2つめは、大規模なシステムから中小規模なシステムまで対応する豊富なラインナップだ。これもさまざまな顧客への提案を考慮した要素である。3つめは、BCP対策を目的とする在宅勤務への投資コストの抑制だ。万一のときの備えとなるため、コストを抑える工夫は必要となる。

同社は、この3つのポイントに加え、認証の仕方、ルールの作りやすさなども加味し、最適なソリューションとして丸紅情報システムズから提案を受けたDell SonicWALL Aventail E-Class SRAシリーズを選択。特にBCP対策の在宅勤務に有効なスパイクライセンスを高く評価した。通常の業務で利用するライセンスを購入するのではなく、有事の場合だけ使うことのできる従量制のライセンス体系は、投資コストを抑制しながら運用することを可能にする。

同社では同時接続250台のライセンスと、2,000台のスパイクライセンスを購入。またDR (Disaster Recovery/災害復旧)の面でDell SonicWALL Aventailを2つの拠点にそれぞれ設置し、万が一どちらかの装置が停止してもリモートアクセスを利用できる環境を実現している。

Dell SonicWALL Aventailを導入した新システムは2012年の春から試験運用を実施。利用した営業スタッフからの評価の声について「セキュアな環境のもとで安心して使えることに対する評価が高いですね。私も利用していますが同じ意見です。試験運用の段階ではありますが、トラブルは起きていません。丸紅情報システムズには運用が本格化してからも変わらぬ手厚いサポートをお願いしています。また、お客様に向けたサービス提供での連携にも期待しています」と山内氏は話す。

2013年2月、新システムは本稼働を開始。スマートフォンやタブレットは評価中のため、当初は会社支給のノートパソコンでの利用となる。モバイルワークは営業部門と管理職のスタッフを対象にしているが、回線工事などの担当者への活用も検討しているという。在宅勤務用のパソコンは2013年度から順次配布していく計画だ。

小さな改善が大きな信頼につながる

サービスを止めないことと同様に、サービス品質の向上も日々の積み重ねの上に成り立つものだ。小さなミスや問題点が信頼失墜のきっかけとなる一方で、小さな改善が大きな信頼につながることもある。同社がいかにサービス品質の向上と真摯に向き合っているか。そのことを示す1つの例が、社長への手紙だ。

「お問い合わせから現地調査、工事、加入、サービス利用開始後まで、さまざまなシーンでお客様がお気づきになったことに関して、当社の社長宛てに手紙を出してもらい評価していただく取り組みを行っています。手紙は社長をはじめ関係者が読み、CS(Customer Satisfaction:顧客満足度)向上委員会で改善策を議論します。社長をはじめ、経営層、各部門の責任者や担当者が出席していますから、その場で経営的決断が下され、担当部門が改善の指示を受けることもあります」(本村氏)

お客様からの手紙には、どんな内容が書かれているのかがわからないだけにCS向上委員会に出席する社員はドキドキするという。しかし、迅速な対応がお客様満足度No.1といった結果に返ってくることも社員はよくわかっている。地元のお客様は厳しく、そして温かいことを日々の業務で実感しているからだ。

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