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MSYS(丸紅情報システムズ)

京都大学(前編) 導入事例

京都大学 apr.2006

MUMPs®、試作から量産に至る幅広い MEMS製造サービスを提供するMEMSCAP社の試作サービスです。標準的なMEMSプロセスを用いる試作として、世界各国のユーザに利用され実績を残 しております。複数ユーザからデザインを集め、同じウエハで一括製造しているので、試作コストを抑え、基礎研究段階で手軽にご利用いただけます。標準サー ビスでは、ユーザは1cm×1cmのデザインスペースにMEMSCAP社のホームページに公開されているデザインルールに従いマスクデータをデザインしま す。Runスケジュールに合わせて作成されたデザインは、丸紅ソリューションズ経由でMEMSCAP社のプロセス工程を経て、約2カ月後に最大15個の チップに仕上がります。
MUMPs(Multi-User MEMS Processes)

Coventor Wareは、MEMSデバイスを生成、モデリング、解析、インテグレーションを実行する4つの製品、Architect・Designer・ Analyzer・Integratorから構成されている、MEMS専用設計解析システムです。開発元であるCoventor社は、1995年に設立さ れ、マサチューセッツ工科大学(米国ボストン)との共同でマイクロマシンの解析シミュレーションを開発し、世界に先駆けてマイクロマシン解析ソフトウエア を商品化しました。Coventor WareはワールドワイドでMEMSとMicro Fluidicsのトップメーカー10社を含む150社以上の企業・研究機関で使われており、注目すべきは大学・教育機関では1700ライセンス以上使わ れています。


静かな、それでいて確実な「胎動」が京都大学で始まっている。
去年4月から大学院にマイクロエンジニアリング専攻が加わり、去年9月からは医学と工学の連携をめざした「ナノメディシン融合教育ユニット」がスタート。 その実習として、『微小電気機械システム創製実習』が始まるなど、MEMSへの取り組みが急速に進んでいるのだ。
「これまでのMEMS教育は、あることが決定的に欠けていました。実は今回我々は、その欠けていた部分を補い、新たなMEMS教育をスタートさせることにしたのです」
これまでのMEMS教育に欠けていたものとは一体何なのか?その欠けていたものがなぜ、今回は実現できたのだろうか。
「それは──」 マイクロエンジニアリング専攻の田畑修教授が語る。

続々増加中、MEMSのカリキュラム

2006年3月上旬、パソコンがずらりと並んだ京都大学吉田キャンパスのCAD演習室。ここで20人の若者たちがそれぞれ食い入るようにモニタ画面を覗き 込んでいる。行われているのは『微小電気機械システム創製実習』。MEMS設計・解析の実習だ。年齢はほとんどが20代。全員が男性である。
 「はい、次はこれを入力してみてください」
カチャカチャカチと、一斉にキーボードを打つ音が鳴り響く──。
京都大学の工学系は、ここ数年で大きな変化を遂げつつある。その1つがMEMSへの積極的な取り組みだ。大学院の専攻が大きく見直され、新たに「マイクロ エンジニアリング専攻」が加わった。来年度からは学部、修士課程、博士課程で計4つのMEMS関連の講義が予定されている。
「MEMS関連のカリキュラムを増やしているのは、言うまでもなくMEMSのもつ可能性が大きく関係しています。社会のニーズも高まっており、そうした要求に応えられるようにとMEMS関連のカリキュラムを増やしたわけです」
京都大学がMEMSに力を入れている背景はもう1つある。大学として専攻や分野を融合した研究に取り組んでいることだ。中でも「医学」と「工学」の融合が 期待されていることから、05年9月に、ナノテクノロジと医学領域を融合させた『ナノメディシン融合教育ユニット』という教育組織を立ち上げた。その中で 設けられた講義の1つが『微小電気機械システム創製実習』である。
受講者の対象は大学院生と社会人だが、ふたを開けてみると20名中19人が社会人。そうした事情を考慮し、実習は4日間の集中講義という形で進められ、この日は2日目の講義が行われていた。
与えられたテーマは「細胞マニピュレーション用のピンセット」。細胞をつかむことのできるピンセットをMEMSでつくるというもの。想定している細胞の直径は約数ミクロン。ピンセットも数百ミクロンほどの極小サイズになる。
「このナノメディシンにおけるMEMS教育は、座学だけに終わらせるつもりはなく、ある目的をもってスタートさせています。というのも、これまでの MEMSの教育には、越えられない壁がありました。この実習では、それを越えることをめざしたのです。」


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「つくることが困難」というMEMSの壁

これまでのMEMS教育の前に立ちはだかっていた壁。それは実際に「つくる」という作業が、非常に困難だったことである。
「大学における講義や実習でMEMSを設計したとしても、製作に莫大な時間と費用がかかるため、『つくる』という作業がほとんどできませんでした。製造ラ インをもっている企業や大学はあるにはありますが、その数はごくわずかで、そうした設備と接点のない人たちにとって、自分で設計したMEMSをつくること など夢のまた夢。」
MEMSを実際につくってみることが重要なのは、なぜなのか?
「たとえば、設計したMEMSの性能は、FEM解析を行えばある程度予測することは可能です。しかし、机上の解析でうまくいったからといって、実際に形に してみると、必ずしもうまくいくわけではありません。想像もしなかったトラブルやエラーが出ることがあります。『こうするとうまくいく、失敗する』という 積み重ねと原因の分析が、学問にとってはとても有意義なことなのです。つまり、自分でつくり、それを自分の目で見て実感し、そして考えるという体験をしな い限り、決して使える技術を身につけることはできません。にもかかわらず、日本では『つくる体験』がほとんどできなかった。MEMSを教える立場の者とし て、常に歯がゆい思いを抱えていました」
田畑教授は長いこと「何かいい方法はないか」と模索していた。そんなとき、あるものに出会う。「MUMPs(マンプス)」である。
 『これなら──』
「つくる体験」ができないというMEMS教育の壁。それを破る第一歩が踏み出せると、感じたのだ。


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MUMPsで開けたMEMSの可能性

MUMPsはフランスのMEMSCAP(メムスキャップ)社が提供するMEMS専用の試作サービスで、複数のユーザからデザインを集め、同じウェハ上で一括製造する。
「MUMPsは『つくる部分は代行します』というファウンドリーサービスです。つまり、アイデアがあって、設計や解析能力があれば、つくる工程は任せるこ とができるわけです。そして、うれしいのはコストパフォーマンスです。アカデミック版は1cm×1cm角の領域が42万円です。20人分のデザインをすべ て入れることができますので、1人当たり2万円ほどでMEMSデバイスをつくることができる。これまでのMEMSの製造コストを考えると驚くほどの価格と いえます」
「MUMPsのプロセスが標準化されており、多くの研究者・技術者によって獲得された設計ノウハウが蓄積されていることも重要なポイントでした」
MEMSデバイスをつくろうとした際、各企業・大学ごとに標準とされる製造プロセスが異なる。つまり、単純に言えば、A社で設計・解析したMEMSデバイ スをB社が製造することは難しい。しかし、MUMPsの標準プロセスは、設計・解析ソフト「Coventor Ware(コベンタ ウェア)」でサポートされており、これを活用すればこうした問題は解決できる。そして、田畑教授はMUMPsプロセスを使うことによって生ずるもう一つの 可能性にも期待している。
「MEMSを製造する場合、大きく2つの方法があります。1つは『バルクマイクロマシニング』と呼ばれるもので、シリコンの基板に穴を掘って3次元構造を つくるというものです。厚い基板だと600ミクロンはあります。もう1つは『サーフェスマイクロマシニング』と呼ばれるもので、基板には一切手をつけず に、基板の上に1~2ミクロンの薄い膜を積んでそれを削ったりすることで立体構造をつくっていく方法です。厚く重ねても10ミクロンほどしかありませんの で、立体構造をつくる際には600ミクロンもあるバルクマイクロマシニングのほうが圧倒的に有利に見えます。ところが、サーフェスマイクロマシニングはバ ルクマイクロマシニングにはない大きな可能性を秘めているのです」
MUMPsはサーフェスマイクロマシニングを採用し、シリコンの基板の上に、薄い膜を3層、間に酸化膜が入る構造になっており、厚さは全部合わせても10ミクロン以下しかない。
「この薄さを利用するのです。薄いということは折り紙と同じことができます。折り紙は薄い紙1枚で鶴ができますね。それと同じように、10ミクロンの平面 でも、そこから平面を起き上がらせる構造などにすることで、100~300ミクロンの立体構造をつくることができる。この原理を知ると、平面でありとあら ゆることができることに気づかされる。その意味で、MUMPsは創造力を大きく育成する可能性があるといえます」
田畑教授はMUMPsの利用を決意。同時に、MUMPsの標準プロセスをサポートしているMEMSの設計・解析ソフト「Coventor Ware」の採用を決めた。こうして、田畑教授は「MEMSをつくる」ことを目的とした実習をスタート。それがこの日行われていた『微小電気機械システム 創製実習』だったのである。


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「つくる体験」が10年、20年後につながる

CAD演習室。20人の若者たちが熱心にモニタを見つめている。
「どうですか、出ましたか?」
キーボードとマウスを操作する受講生。やがてそれぞれのモニタ上に、長方形の立体構造をした3D画像が現れた。MEMSである。モニタ上では何十cmもあ るが、設計しているものはなんとわずか数十ミクロンと極小。それがフワっと、浮き上がってきたのだ。
 「あ、出た出た」
教室内が、一瞬ざわめく。
「MEMSが特殊技術という時代はもう終わりという気がしています。今や社会にあって当たり前の基盤技術にならなくてはいけないでしょう。企業が何か商品 をつくるときに、方法論の中に必ずMEMSという選択肢を入れることによって、圧倒的な強みを出せる可能性があります。そのためには、MEMSの設計から 製造までを一通り経験した人材を増やしていくことが必要。この実習は、そうした人材を育成するための場と考えているわけです」
田畑教授は今、ある計画を立てている。MEMSのコンペティション開催である。
「大学対抗のロボットコンペティションが話題になりますが、あのMEMS版をやりたいと計画しています。例えば、「高く飛ぶ」とか、「大きく動く」とか、 「力を出す」のような共通課題を与え、若者たちにCoventor WareでMEMSデバイスを設計しMUMPsで試作して競わせる。微粒子をつまんで、1分間で動かした個数で得点を出すのもいいかもしれません。競争の 模様を顕微鏡を通し拡大画面で見ながら審査をする、といったことをしたら面白いかなと思っています。MEMSの普及につながるのはもちろん、学生たちの MEMS学習のモチベーションを高めることにもなると思うのです」
今回、実習で出した細胞マニピュレーション用ピンセットは、ピンセット先端の間が10ミクロン以上離れていて、最大50ボルトの電流でピンセットが閉じる 動きをすることを課題としている。受講生たちがデザインしたMEMSができ上がるのは2006年8月。再度受講生はここ吉田キャンパスに集まることになる が、そのときにはきっとこうした歓声が教室内にこだまするはずだ。
 「あ、動いた動いた!」
 「本当だ!」
 「あれ、おかしいな」
「人によっては動かない場合もあるかと思います。でも、それはそれでいいと思う。経験に基づいたものの積み重ねがあって初めて『活きた学問』になってくる んですから。それを今からしていくことで、10年後20年後の日本のMEMS技術の発展につながると考えています」
「MEMSの可能性の種を撒き、それがいつか大きく花開いてくれるのが夢」と語る田畑教授。「つくる体験」という“肥料”を手にし、今、その壮大な夢への第一歩を踏み出したところだ。

1956年9月21日生
1981年3月  名古屋工業大学大学院修士課程修了
1981年4月  (株)豊田中央研究所入社
1996年4月  立命館大学理工学部機械工学科助教授
2000年4月  同教授
2003年9月  京都大学大学院工学研究科機械工学専攻教授
2005年4月  京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻教授
この間
2000年9月~12月 ドイツ、フライブルグ大学客員教授
2001年1月~3月  スイス、連邦工科大学客員教授

主として、シリコンマイクロマシニング、X応用微細加工技術、薄膜の機械的物性計測、シリコンマイクロセンサ、MEMS、マイクロシステムの研究に従事。京大では機械・電気・化学・光・バイオなどの機能要素をマイクロメータからナノメータの微小領域において統合することによって、新規でユニークな機能を発現させるマイクロ・ナノシステムを構築するためのナノシステム統合工学の確立を目標とし、三次元微細加工、ナノアセンブル、薄膜機械物性評価、マイクロ・ナノシステムなどに関する研究に取り組んでいる。

Journal of Micro Electro Mechanical Systems およびSensors and Actuatorsのeditorを務めると共に、International Conference of Micro Electro Mechanical Systems(MEMS)をはじめ多くの国際会議の組織委員,論文委員を務める。

1987年 日本ME学会研究奨励賞受賞
1991年 電気学会論文発表賞受賞
1993年・1998年 R&D100Award受賞
2002年 センサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウム最優秀ポスタ賞受賞
2004年 立命館大学渡辺三彦発明賞受賞

電気学会、日本機械学会、IEEE Seniorメンバ
工学博士

・趣味
2年前よりボイストレーニングを開始。その理由は「思う存分声を出すのが気持ちよさそうだったから」。京都市内の音楽教室に通い、最初は発声練習が中心だったが、今では田畑教授が大好きなサイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋』を歌っている。
「講義のときに、後ろまで声が届くようになったと思う」と副産物も生まれている。


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