森ビル株式会社様

都市づくりは、未来づくり。思考のスピードに応える高速検索。

日本を代表する不動産総合ディベロッパー、森ビルがつくっているのは、単なる建物ではなく都市の未来だ。
世界的スポーツイベントが開催される2020年、そしてその先に向けて東京が生まれ変わろうとしている。
虎ノ門では新駅構想も含め、国際新都心の中核を担う大規模再開発プロジェクトが進められている。
新たな東京のランドマークとなるのは、4棟の超高層タワーとして拡大・進化する虎ノ門ヒルズだ。
森ビルの歴史は既成概念への挑戦の軌跡でもある。
森ビルの「都市を創り、都市を育む」仕事のビジョンや歴史、
そしてプロジェクトの最前線に迫るとともに、未来をつくり続ける同社の取り組みを情報活用の面で支える、
エンタープライズ検索エンジンの導入について取材した。

Vertical Garden City(ヴァーティカル・ガーデンシティ、立体緑園都市)」のイメージ

「都市を創り、都市を育む」という仕事

都内には、未来を見渡せる「丘」がある。アークヒルズ、六本木ヒルズ、表参道ヒルズ、虎ノ門ヒルズ森タワー…。日本を代表する総合ディベロッパーの森ビルは都市づくりへの想いを「ヒルズ」という名に込めた。大規模再開発プロジェクトを数多く手掛ける森ビルの歴史は、1956年に建設した虎ノ門交差点近くのビルから始まった。その歩みは既成概念への挑戦の軌跡でもある。

複数の土地の所有者が一緒に1つのビルを建てる共同建築の先駆者として、港区に次々とナンバービルを建設・運営した。ビル単独の「点的開発」はやがて、複数の街路や街区を合わせた「面的開発」へ、そして都市づくりへと広がっていった。

民間による日本初の大規模再開発事業として1986年に誕生したアークヒルズは、同社の都市づくりのビジョン「Vertical Garden City(ヴァーティカル・ガーデンシティ、立体緑園都市)」を具現化した、まさに“ヒルズ”の原点だ。土地が限られている都心においてビルの超高層化により空と地下を有効活用し、地上は緑と人に開放する。そこに職、住、遊、商、学、憩、文化、交流などの多彩な都市機能を立体的、かつ重層的に組み込むことで、徒歩で暮らせるコンパクトシティを実現するというのが、ヴァーティカル・ガーデンシティの考え方だ。職住近接により移動時間は減り、自由に使える時間も倍増する。30年以上も前に、現在の社会課題となっているワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の解決策を提示していた。また都市づくりとともに鉄道、道路などのインフラも整備して耐震化し、建物の間隔も広くとることで災害に強い都市構造となる。

森ビルの都市づくりは、地元の人と、その街の未来を考え、信頼関係を築くことからスタートする。アークヒルズも六本木ヒルズも完成までに17年の歳月をかけた。じっくりと話し合い、賛同と合意を得ながら地域やコミュニティの可能性を引き出し、新しい街が生まれた時の発展の基盤をつくっていく。森ビルには「都市を創り、都市を育む」という仕事を一気通貫で行ってきた強みがある。完成後、街の魅力や磁力を高めるタウンマネジメントという独自の仕組みを生み出し実践してきた。

現在、虎ノ門を舞台に、大型再開発が進行中だ。世界の人々や企業が国籍を超えて新しいビジネスやライフスタイルを創造できる「国際新都心・グローバルビジネスセンター」形成に向け、2014年に開業した「虎ノ門ヒルズ 森タワー」の隣接地において、2022年度までに新たに3棟の超高層ビルが立ち上がる計画となっている。

4棟の超高層タワーがそびえ立つ、「虎ノ門ヒルズ」の進化・拡大

グローバル化が進む中、近年、観光や企業誘致などを目的とした国際的な都市間競争が激しさを増している。世界中の人々や企業、資本を惹きつける都市の再生を加速させることが、東京の、そして日本の未来を輝かせるために欠かせない。東京都が企業誘致を推進する「アジアヘッドクォーター特区」に位置する虎ノ門地区では、湾岸部と都心をつなぐ環状2号線の開通に加え、2020年に向けて、東京メトロ日比谷線の新しい駅「虎ノ門新駅(仮称)」が誕生する予定だ。

ヴァーティカル・ガーデンシティというビジョンのもと、4棟の超高層ビルがそびえ立つ「国際新都心・グローバルビジネスセンター」は、東京の新しい魅力を世界に発信する新たなランドマークとなる。地上52 階建て高さ247mの「虎ノ門ヒルズ 森タワー」はホテル、住宅、オフィス、カンファレンスセンター、商業施設などからなる超高層複合タワーだ。地上36階建ての「(仮称)虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」(2019年12月竣工予定)はグローバルレベルの大規模オフィスとなる。地上54階建て、高さ約220mの「(仮称)虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」(2021年1月竣工予定)はグローバルレベルのレジデンス約550戸を供給する。さらに、2022年度を目標に虎ノ門新駅と直結する「(仮称)虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」も建設する予定だ。

森ビルでは、虎ノ門の周辺開発はもとより複数の大規模再開発プロジェクトが並行して動いている。都市開発本部、営業本部、設計部、仕入部、森アーツセンターなど各部署に所属する社員約1,300名が、東京を世界一の都市にするために未来をつくり続けている。「都市を創り、都市を育む」仕事は、膨大な情報を生み出す。都市づくりにもスピード感が求められる中で、日々の業務で蓄積される情報の効率的かつスピーディな活用は社員一人ひとりの生産性向上に欠かせない。

4棟の超高層ビルがそびえ立つ「国際新都心・グローバルビジネスセンター」へと進化する虎ノ門ヒルズ

部門外の重要な情報を検索できないように徹底検証

森ビルでは情報セキュリティの観点からITを活用し、業務で利用するPC内にデータを保存しないインフラを構築している。社員が日常業務でデータを保存する方法は、エンタープライズ用のオンラインストレージとファイルサーバの2タイプがある。

「オンラインストレージには容量に制限はありませんが、重要な情報は自社で管理しセキュアにデータを守ることができるファイルサーバに保存するルールとなっています。ファイルサーバには部署用フォルダと個人用フォルダを用意しています。またユーザがデータを誤って消去してしまってもデータを復元できる世代管理機能も備えています。コンプライアンスと業務継続性の面でファイルサーバの利用が拡大する一方で、検索のしにくさが大きな課題となっていました」と同社の浅野氏は話す。

「既存のファイルサーバには検索機能がなかったため、単なるファイル置き場になっていました。あのファイルはどこにいったのか、なかなか見つからない。類似するファイルが複数存在し目的の情報を探すのに時間がかかる。業務効率を高めるために、検索性の向上が急務でした」と吾郷氏も説明を加える。

エンタープライズ検索エンジンの選定では、コストパフォーマンス、使いやすさ、セキュリティの3点を重視。すべてを満たしていたことから、丸紅情報システムズが提案したブレインズテクノロジーのエンタープライズ検索エンジン「Neuron Enterprise Search」が採用された。

「低価格で導入しやすく、利用者数や検索対象文書のデータ量による制限もなく、規模が大きくなるほどコストメリットが大きくなる価格体系は魅力です。また丸紅情報システムズとブレインズテクノロジーの一体となったサポートにより安心して利用できることも評価しました」と浅野氏は話す。

必要なファイルを見つけるまでのスピードも採用のポイントとなった。「文書イメージのサムネイル表示により文書を開くことなくコンテンツの中身を確認できるため、本当に探し求めている情報により効率的かつ迅速にアクセスできます。図面や設計図、工事現場の写真などの画像データを検索する場合にもとても便利です」(浅野氏)

自分自身で作成したファイルはもとより、部署内でのナレッジの利活用を促進できる全文検索のメリットの一方で、セキュリティの観点からユーザやコンピュータを管理するための仕組みであるMicrosoftのAD(Active Directory)と連携し、利用者権限に応じた検索結果を表示する機能が必要不可欠だった。

「例えば、人事の人しか人事の情報を見ることができない仕組みでなければなりません。全文検索なので、他部門の人も思わぬ情報が見えてしまうといったことがないように、ガバナンスを徹底させるべくAD連携が正しく設定されているかどうか、漏れはないかなど徹底的に検証しました。総務、人事、商業施設事業部などの部署にもじっくりと時間をかけて試してもらいました」(吾郷氏)

データ保管場所を「整理整頓」し生産性の向上を図る「Neuron Enterprise Search」の検索画面イメージ

高速検索により創造的な業務に集中する時間を創出

2018年3月にNeuron Enterprise Searchによる社内検索サービスを開始。これから社内への普及・啓蒙に向けたアピールに力を入れていくという。「検証期間中に協力してくれた部署でのアンケート結果によると、導入したら利用したいという回答が50%ありました。時系列でファイルがどんどん増えていく設計部などでは、全文検索やサムネイル表示はとても重宝します。数年前の記録の確認や、類似している書類を活用した書類作成時などにも便利です。また高速検索により情報を探すという無駄な時間を省くことで、創造的な業務に集中する時間を創出できます。自分の思考のスピードに合わせて情報を利用できることは生産性の向上に寄与します」(吾郷氏)。

Neuron Enterprise Searchは、利用者がどのようなキーワードで検索したか、何の文書を閲覧したかといったログ情報を収集し、それらを分析することで部署や利用者の傾向の可視化や、情報保管状態の見直しなどの業務改善につなげることも可能だ。情報活用に関する社員の意識改革について「全文検索で関連ファイルが表示されることで、同じデータが重複していることに気づき、不要ファイルの削除などデータの整理整頓がユーザの間で根付くことを期待しています。また全社員に支給されているスマートフォンからもファイルサーバ内のデータを検索できるため、セキュアな環境のもとモバイルワークでの情報活用の推進も図れます」と浅野氏は話す。

2020年、さらにその先に向け、日本や東京はどのように変わっていくのだろうか。森ビルは未来の東京の姿を求め、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアロボとの共同研究を立ち上げた。「都市の未来」をつくり出す新たな挑戦が始まっている。

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