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太陽誘電 導入事例

太陽誘電(株) 原亨氏

1つの言葉が人を大きく変えることがある。
太陽誘電の原亨氏(以下、敬称略)の場合、あるエンジニアの一言だった。
「そんなセンサがあったらうちも欲しい──」
それから原は、酸素センサの開発にのめり込むことになる。
その取り組みは以前紹介した通りだ。
そして今、原は新たなテーマを掲げ動き出した。
「それは人々の命にかかわるものです」わずか5mm角のセンサが、世界を変えようとしていた。


半導体・有機EL製造工程のネクスト・ステージへ誘電体材料の特性を活かした新技術

太陽誘電が得意とする誘電体材料技術を活用したチタン酸ストロンチウム薄膜センサが、残留酸素のリアルタイムモニタリングを可能にする新しいソリューションを提供します。

超高感度誘電体ガスセンサと競合技術との比較残留酸素検出の動作原理仮説超高感度誘電体ガスセンサの酸素感受性

メディカル分野への応用

酵素・タンパク質・DNA等のレセプタでチタン酸ストロンチウム表面を修飾することでバイオセンサにも適用できます。

開発ロードマップ

「果実」を手にした「酸素センサ」

東京・目黒区にある東京工業大学。ここに原の拠点となる研究室がある。原の所属は太陽誘電・開発研究所の社員だが、現在、東工大と共同研究をおこなっており、週の約半分をここの研究室で過ごしている。
2007年末に一度取材をし、今回が二度目である。そのとき話を聞いたのが「酸素センサ」であった。
酸素は我々ヒトだけでなくあらゆる動物にとってなくてはならないものだが、半導体デバイスの製造工程ではもっとも排除したいものの1つである。半導体部品として使われるシリコンなどは酸素と結びつきやすく、それによって流れるべき電気が流れにくくなるからだ。
「現在酸素センサはいくつかの種類が存在していますが、それらは、高感度ながらも大型で非常に高価なものか、小型で安価だが感度が低いものしかありません。私が目指したのは、小型かつ安価でありながら高感度の酸素センサをつくることにありました」
半導体デバイスの製造工程ではすでに酸素センサが使われているが、高感度のセンサが求められる現場では「分析装置」と言うべき大型のものが主流で、価格も高価なため配備率が低いのが現状だ。その配備率を上げることを期待されているのが、原が開発中の安価で高感度の酸素センサである。
原の研究は2007年、経済産業省の地域新規産業創造技術開発費補助事業に選ばれ、本格的に開発をスタートし、原が前回我々の取材を受けたのがそのときだった。
それから1年も経ずして、原の酸素センサは確かな「果実」を手にすることになる。

たった一度のトライで出た成果

各種機器が並ぶ研究室へと案内される。
「設備として1年前と大きく変わっているのは、極低酸素濃度制御装置が入ったことです」
原が開発している酸素センサは、1ppbという10億分の1の極低酸素濃度の検出を目指している。1ppbの酸素濃度を検出できたという「証(あかし)」を得るためには、人工的につくった1ppbの酸素濃度と検出結果が一致することが必要となる。そのために導入されたのがこの極低酸素濃度制御装置であり、経済産業省からの補助金によって導入が可能になった。
原が開発中の酸素センサは、電気抵抗の変化を検出することで酸素濃度を測定する。電気抵抗を変化させるファクターは2つあり、1つは電子の密度、いわゆるキャリア濃度で、もう1つが移動度と呼ばれる電子の移動のしやすさである。従来の小型センサはキャリア密度による電気抵抗の変化を検出していたが、原の酸素センサは、キャリア密度と移動度の両方のファクターを用いるため、高感度のセンサが実現できる。
現在市場に出回っている小型センサの感度はppm(parts per million 100万分の1)レベル。それが10億分の1のppb単位まで検出できるようになれば、まさに画期的なことである。
2008年春、原は極低酸素濃度制御装置を用いて酸素濃度を1ppbに設定し、開発したわずか5mm角の酸素センサをセットして電極を当てた。そこで電気抵抗が検出できれば、原の仮説が証明されることになる。
「結果的にいうと、わずか1回のトライで1ppbという極低酸素濃度を検出できることが確認されました」
これはいかに原の仮説が確かなものだったかの証でもある。しかし、もちろんここで終わりではない。ここまでは原理動作の確立という基礎研究の段階はクリアしたにすぎないのだ。
「今後取り組まなければいけないのは量産化です。どの工場で生産するのか、マーケットに出すタイミングはいつ頃にするのかなど、課題は山積しています」
現在原は、さまざまなネットワークを構築し量産化に向けた準備を進めているが、酸素センサの原理動作が確立できたことで、もう1つの夢が一気に加速しようとしている。
メディカル分野への応用である。
たった一度のトライで出た成果


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「酸素センサ」をメディカル用に応用

原が考えているのは、細菌やウイルスなど病原体の検出だ。しかしなぜ酸素センサがメディカル用に応用できるのか。
「酸素センサは、センサ部分に酸素が吸着する量を測定しますが、メディカル用のバイオセンサには、センサ部分に『レセプター』と呼ばれるものを載せ、そこにウイルスなどターゲットとなるものを吸着させて、電気抵抗の変化を読み取ります」
抗体はある特定の形をもつことで特定の細菌やウイルスなどを吸着するが、それと同じように、ターゲットとなる細菌やウイルスに合わせたレセプターをセンサ 上に載せることで、特定のターゲットをとらえようというわけだ。こうしたことが可能になってきたのは、レセプターの進歩がある。
「今、メディカルの分野では病原体の表面構造やヒトのレセプター構造の研究がものすごい速さで進んでいます。あと数年もすればかなりの部分が明らかになってくると思います。そうすればあらゆるターゲットのレセプターを載せることができるようになります。」
インフルエンザならインフルエンザウイルスと結合するレセプターを、結核なら結核菌に結合するレセプターをつけることで、特定のウイルスや細菌が検出できるわけだ。
だが、バイオセンサは酸素センサ以上にクリアすべき課題が多い。そこで原は、MEMSやメディカル分野に強いafiZEX Technologies,Inc.の矢野敬二氏(以下、敬称略)とコラボレーションを図り、バイオセンサのマーケットやその可能性を探っている。矢野は いう。
「まずクリアすべきはレセプターです。現在世界中で研究が進められていますが、どの企業とコラボレーションするべきかという問題があります。また、そもそ もどのようなレセプターを載せることでターゲットを吸着させることができるのかもまだまだ研究しなければなりません。さらに、レセプターをどう載せるかも 課題です」
また矢野は、バイオセンサの一般的な問題として、ターゲット以外のノイズ成分が多く、その中でターゲットだけを吸着させる困難さを挙げる。しかし原は、研究者としてその部分は解決できると踏んでいる。
「レセプターが検出すべきターゲットはアミノ酸残基5個程度の大きさで、選択性は205分の1ほどです。誤検出は起こりにくいはずです」
そして原は、バイオセンサとしての用途をすでにはっきりと見定めている。


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目指すは人類への貢献

当初原は、ブリーズテストの用途を考えていた。呼気の成分を測定して病状を調べるというものだ。
「最近、人の息を嗅ぐことでガンかどうかを識別できる犬が話題になりましたが、それと同じことをバイオセンサでできないかと考えました。しかし病気を診断することより、予防することの方がさらに社会に貢献できるではないか、と考えるようになりました」
原が狙う用途、それは感染症の世界的大流行、パンデミックの防止だ。
パンデミックははるか昔から起こっており、古いところではペスト、天然痘、コレラ、発疹チフス、結核、スペイン風邪などがあり、近年でも中国で発生したSARSが話題になったばかりだ。
パンデミックは、航空機など交通手段の発達による頻繁な人の移動、さらに新種の場合、その細菌やウイルスに対する免疫をもっていないことから、爆発的に感染者を増やすことになる。
「SARSの際に、空港でサーモグラフィを設置して高熱の乗客をいち早く見つけるといった対策がみられましたが、ああいった使われ方をイメージしています。空港だけでなく港湾などにも設けることで、感染拡大が防げるのではないかと」
現在、鳥インフルエンザが変異してできる新型インフルエンザウイルスの出現が確実視されているが、原はそれに対しても対策はあるという。
「インフルエンザウイルスは、表面の構造がすぐに変わるためワクチンの開発も難しいといわれています。ところが最近、インフルエンザウイルスの中に変化しないタンパク質が存在することがわかってきました。その変化しない部分と結合するレセプターをセンサに載せれば、新型インフルエンザウイルスも検出できる可能性があるわけです」
政府が推定する日本国内の新型インフルエンザウイルスによる死亡者は17~64万人である。世界中なら、その数は何百万人、何千万人にもなるはずだ。もし原が新型インフルエンザウイルスにも対応するセンサを開発したらその恩恵たるや計り知れない。
「経済産業省のロードマップでは、10年後くらいの完成となっていますが、それをできるだけ前倒しにし、5~10年の間には実現したいと考えています。そのためには、今まで以上にさまざまな人や企業とネットワークを構築しコラボレーションを図っていく必要があります」
「そんなセンサがあったらうちも欲しい」
その一言から5年。
原が研究する5mm角の極小センサは、多くの人の命を救う救世主へと、進化しようとしている。


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