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WIN 導入事例

板生清名誉教授

大学に入学後、人間はなぜ生きているのだろうと疑問を抱く。
理系の授業に興味が持てず、図書館に閉じこもり、
いろいろな本を読み漁った。
結局、人間は自然の中で生かされている存在に過ぎない。
こう考えた時、生きるのがとても楽になったと、
板生清東京大学名誉教授は柔和な表情で話す。
環境問題が大きなテーマとなりつつあった20世紀の終わりに、
20歳の頃に掴んだ「自然に生かされている」という考え方は、
ネイチャーインタフェイスという新たな概念に結実した。
「万物は情報を発信する」
センサネットワーク技術を使って情報を収集、活用することで、
自然、人間、人工物がシームレスに一体化した
調和と共生の世界を築いていこうというものだ。
板生教授へのインタビューは、
先端技術による社会貢献をテーマに、
ときに人間の生き方にまで広がった。


WINグループについて

NPO法人「ウェアラブル環境情報ネット推進機構(通称WIN)」は、ウェアラブル・インフォメーション・ネットワークに関するサービスの開発などを行い、特に人間の健康向上と環境保全に貢献することを目的に2000年8月に設立された。 WINの活動の中から、一般社団法人環境プランニング学会、人間情報学会が生まれた。人間情報学会は、人間が有する情報について分野を超えて研究に取り組んでいこうというもの。WIN内の人間情報学会によって発表される研究の中で、社会貢献が期待される事案はWIN ヒューマンレコーダーで事業化しサービスとして社会に還元していく。また、社会や公共の課題やマーケットニーズは、WINヒューマンレコーダーを通じて人間情報学会にフィードバックされる。

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HRS-1について

WINヒューマンレコーダーの製品。無線通信対応で胸部に一箇所直接貼り付けて使用するセンサ機器と、測定したデータを基に健康状態を解析する専用ソフトウェアで構成されている。センサ機器には、心電、体表温、3軸加速度(人の動き)の3種類のセンサを搭載。HRS-1を活用したサービスとして、遠隔地から 24時間、健康状態を管理できる高齢者向けシステムがある。同システムは日本経済新聞やNHKをはじめ各種メディアで取り上げられるなど多くの関心を集めている。 システムを開発したのはNPO法人ウェアラブル環境情報ネットワーク推進機構(WIN)と関連するベンチャー企業WINヒューマンレコーダー。販売は丸紅情報システムズが行う。

HRS-1

ネイチャーインタフェイスの世界

板生先生が提唱されているネイチャーインタフェイスは、自然、人間、人工物の新たな調和と共生の世界を目指すビジョンです。21世紀のテーマである環境調和型社会の実現への貢献も期待されます。

20世紀後半になって爆発的に増大した人工物は、自然や人間に大きな影響を及ぼし、環境問題などさまざまな問題の発端となっています。ちょっと見回しても高層ビルや自動車など人工物ばかりが目につく現代、地球の軌道上では宇宙ステーションが動いており、フロンガス、炭酸ガス、有機水銀など目に見えない人工物もたくさんあります。
人工物を作り出す人間はまた自然の存在です。自然と人工物が対立する状況を協調の方向へと導いていく責任が人間にはあると考えています。自然、人間、人工物、それぞれの界面(インタフェイス)をシームレスにして、新たな調和と共生の世界を作っていく。これがネイチャーインタフェイスの概念です。
界面とは境界のこと。ネイチャーは自然ではなく本質を意味しています。つまり、三者の境界をなくすことでそれぞれの本質を理解し、あるべき関係を求め、サステイナブル(持続可能)な環境調和型社会の実現を目指しています。
1991年に提唱して以来、ネイチャーインタフェイスは私の研究活動の根幹にあり、これを実現する上で必要不可欠なセンサネットワーク技術の開発に力を注いでいます。

センサネットワーク技術の進展により情報通信の可能性は大きく広がりますね。コンピュータのキーボード操作もする必要がなくなるとか。

後ほど人間情報センシングをベースにしたサービスのお話もしますが、コンピュータを身につけるウェアラブル時代も本格化の兆しを見せています。また、キーボード操作と無縁の存在である植物や動物、人工物の声を聞くことも可能になります。倒壊しそうな建物が悲鳴をあげている。住かを追われた動物が苦しみを訴えている。都市のカラスが問題化していますが、カラスの言い分もあるわけです。
万物は情報を発信しています。その情報をキャッチし理解を深めることが大事です。理解することなくして正しい判断や対応はできません。

ネイチャーインタフェイスのベースにある「万物は情報を発信する」という考え方は、技術者や研究者だけではなく、多くの人の想像力をかきたてます。いつどのようにして生まれたのですか?

大学に入った頃に、人間はなぜ生きているのだろうという疑問を感じ始めました。20歳前後の時期には誰でもよくあることだと思います。難しい数学の方程式を解いても人生の問題はさっぱり解決できない。そこで図書館で長い時間を過ごし、人文系の本を読み漁って自分なりに勉強しました。
結局、人間は自然の中の1つの存在物であって生かされているに過ぎないと。思想的には仏教に近いですが、そう考えると、とても楽になりました。その後、地球規模で環境問題が起きつつある中、人工物も自然と人間の関係性の観点から捉えるべきではないかと、漫然と思っていました。
1990年にNTTの研究企画部長を拝命し、先端技術をどう社会に活用していくか、考えをまとめていく中で結実したのがネイチャーインタフェイスという概念です。しかし、当時は携帯電話を本格的に普及させようという段階で、企業として掲げるテーマとしては早過ぎたこともあって研究活動の場を大学に移すことにしました。


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「技術は市民のために」社学連携を提唱WIN(Wearable Information Network)

「技術は市民のために」社学連携を提唱

板生先生は産学連携ではなく社学連携という言葉を使われています。なぜ産学ではなく社学なのでしょう?

プリンタや磁気ディスク、光ディスクなど常に最先端の情報機器開発の先頭を走ってきましたから、企業の立場で産学連携もいろいろと行いました。そうした中、産業界に貢献する技術開発の一方で、市民のための技術開発も必要ではないかという思いが少しずつ強くなっていきました。
企業人から大学の教授へとポジションが変わったことで、これからは市民に必要な技術、私は市民技術と呼んでいますが、その領域に特化した活動に専念したい。そう決意しました。大学は産業界だけでなく社会の宝です。技術による社会貢献の必要性と大学の存在意義、2つの観点から私は社学連携という言葉を使っています。

市民のための技術とは、具体的にはどういうことがありますか?

たとえば、徘徊するお年寄りを追いかけているだけでくたびれてしまって大変です、というヘルパーさんの話から、お年寄りの居場所がわかるセンサ付きのGPSシューズを開発しました。また、痛みの感覚がなく汗腺がない無痛無汗症の子供たちのために電子的な冷房服をつくってほしいという依頼があり、協力会社と共同で開発に取り組んでいます。
GPSシューズや冷房服は、当初の需要がごくわずかです。一般企業はこういう事案に関わっている余裕がないことは、私も企業人でしたからよくわかります。資金と人とモノがない状況でどう実現していくか。私が研究開発型NPO法人「ウェアラブル環境情報ネット推進機構(通称WIN)」を立ち上げた理由もその点にあります。
技術について知識とノウハウがあること、一人の人間という立場で常に社会を研究していること、この両面を武器にして社会をどう変革していくか、プロデューサー的な役割を果たしていくことも私のミッションだと考えています。
WIN設立時は、現役の国立大学教授でNPO法人の理事長になるということが日本で初めてだったこともあり、いろいろと大変でしたが、どこか楽しんでいるところもありました(笑)。私の人生の局面で、まずやってみるということがポイントになっていますね。


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WINヒューマンレコーダー株式会社という社会起業への挑戦HRS-1WINヒューマンレコーダー株式会社という社会起業への挑戦

WINヒューマンレコーダー株式会社という社会起業への挑戦

WINの研究成果を社会に還元し役立てていくために、WINヒューマンレコーダー株式会社を設立されましたが、社会起業への挑戦にはどのような理由がありますか?

WINを10年間続けてきましたが、NPO法人の経営は厳しく、とても難しいことです。その中で、WINの研究成果を社会に還元する手法のひとつとして、事業化という形が適しているのではないかという思いに至りました。社会貢献を前提に、事業で実績を生み出し、しかるべき成果としてNPOの研究サイドに還元していく。NPOと株式会社が、有機的に作用しあい、共に成長する新しい法人グループの創造にチャレンジしたい、という思いがあります。
またもう1つのポイントは、WINヒューマンレコーダーという会社を通じて、理念を共有していただける有力企業とパートナーを組み、先進技術を広く普及するための力を得ることが可能となります。社会起業に取り組むことで、よい経営と社会イノベーションの両面を実現することができると期待しています。

高齢者向けとして多くのメディアで紹介された、遠隔地から常時健康状態を管理できるシステムHRS-Ⅰが、WINヒューマンレコーダーの第1号製品になるわけですか?

WINヒューマンレコーダーの製品HRS-1は、高齢者向けシステムとしてとりあげられましたが、それはこの技術が持つ可能性の一部にすぎません。仕組みとしては、胸に小型センサを貼り付けて、心電図や体表温、身体の動きを常時測定し、無線通信でデータ管理用のパソコンに送ります。遠隔地から24時間、例えばお年寄りの健康状態を見守ることができます。
HRS-1は、少子高齢化問題に対して1つの有効な手段を提供できますが、それだけではありません。私たちが考えているのは自律神経を測定し、そのバランスを可視化するシステムです。あるお医者さんによると、自律神経のバランスがとれている状態が人間の健康の源であると言われています。そのバランスが悪くなると、ストレスがたまり健康へ悪影響を及ぼします。ストレス対策は、今まで以上にますます重要になっていくと考えています。
たとえば、小さなセンサで自律神経の情報を収集し、携帯電話の画面に精神の健康状態を表示し、「あなたはいまストレスがたまっているので、ちょっと休んでください」とガイドしていくサービスなども実現可能です。メンタルヘルスの自己管理ができるということは、個人だけでなく、EAP(従業員支援プログラム(Employee Assistance Program) - メンタル面から社員を支援するプログラム)など企業における社員向けサービスの一環としても活用できるのではないでしょうか。

個人の健康を記録するPHR(Personal Health Record)が欧米で進められていますが、WINヒューマンレコーダーの目指すところとの違いはありますか?

現在、フランスやイギリスが国のレベルで進めているPHR(Personal Health Records:医師や患者が個々の患者のデータをオンライン上に登録し、どこからでも情報を検索できるようにするシステム)は、健康状態に関して検診した結果について個人のカードに記録するというものです。人間情報をセンシングしデータを蓄積して分析を行うWINヒューマンレコーダーとは質が違うように思います。
もちろんPHRはとても大事な取り組みです。日本はまだ国のレベルで実施することはできていませんが、欧米ではPHRの計測項目の見直しが検討されています。いずれにしてもPHRの考え方はこれからも進むものと思われます。
マーケットは非常に大きなものがありますが、WINヒューマンレコーダーの理念は、社会貢献をめざしたビジネスの展開です。社会における論理よりもニーズを優先し、困っている人がいたら、その人から助けていこうというのが私の考え方です。グラハム・ベル(A.Graham Bell)は耳の不自由な母親と妻のために補聴器の研究を行い、それが電話の発明につながったといわれています。困っている人を助けたいという観点から技術は進歩するのです。

WINヒューマンレコーダーの今後の展望はどのようにお考えですか?

たとえば、シャツの上からでも測定できるといった心電センサの高度化や、呼吸センサ、脳波センサ、血圧センサなど各種センサを追加し、ソフトウェア技術を進歩させていくことは重要です。しかし、今のHRS-1でも、必要条件を相当満たしているとも考えます。
これからは先端のセンサ技術を、コンピュータやネットワーク技術と融合させて、誰もが使いやすいサービスの仕組みを、どう作っていくかが重要なポイントになります。私は、WINヒューマンレコーダーをサービス提供会社として位置づけています。

最後に別な観点からお聞きしたいことがあります。板生先生は、現在、東京理科大学大学院(MOT)で教鞭を執られていらっしゃいますが、若い人を育てるという面でどのようなことが大切だとお考えですか?

一言でいうと、課題を発見する能力が重要です。MOTは社会人が中心なのですが、彼らにいつも言っていることは、「会社にはいろいろな課題がある。言われたことだけをするのではなく、自分の置かれた立場で課題を発見し手段を構築して解決していくことが大切だ」と。
それには、足元の問題を見るのと同時に、社会や人間はどうあるべきか、なぜ自分は存在しているのかといった問いかけに対する自分なりの答えも持っていなければなりません。
人は、人生の最後で必ず生きてきた意味を自身に問うことになると思います。そのときに後悔しないためにも、若いうちに自分の存在する理由を真剣に考え、明確にしておくことはとても大事です。

profile

学歴]    
1966年             東京大学工学部精密機械工学科卒業
1968年             東京大学大学院精密機械工学専攻修士課程修了
1976年             工学博士(東京大学)

[職歴]
1968年             日本電信電話公社(現NTT)入社
1974~1975年    マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員
1990年             NTT副理事・研究企画部長
1992年             中央大学理工学部精密機械工学科教授
1996年             東京大学大学院工学系研究科教授
1999年             東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
2004年             東京大学名誉教授
東京理科大学 専門職大学院 研究科長/教授

[研究]
人工物が自然や人間に及ぼす影響を研究し、「ネイチャーインタフェイス」こそ、これからの環境調和時代に必要な概念であると提唱。実現するためにマイクロシステム技術を研究、開発。情報通信分野への応用を目指したマイクロシステム技術の研究で、精密工学会賞などの学会表彰を5件、メカトロニクス関連で3件、社内・学内表彰などを7件受賞。

[現在]
東京大学名誉教授、東京理科大学 専門職大学院教授。NPO法人「ウェアラブル環境情報ネット推進機構」理事長。一般社団法人 環境プランニング学会 代表理事。環境情報誌『ネイチャーインタフェイス』総監修。科学技術振興機構(JST) 研究領域総括、精密工学会 会長、人間情報学会 代表理事など歴任。


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