Infinite Ideas(ユーザ紹介サイト)

限りないアイデアで、新しいビジネスの価値を創造。あらゆる問題に対して、アイデアを柔軟に変化させて答えを導き出す
MSYS(丸紅情報システムズ)

ライターズコラム 高田 慎治 高田 慎治 Takada Shinji NPO法人「ウェアラブル環境情報ネット推進機構(通称WIN)」
2000年8月に設立。理事長、板生清東京大学名誉教授。ウェアラブル・インフォメーション・ネットワークに関するサービスの開発などを行い、特に人間の健康向上と環境保全に貢献することを目的としている。
NPO法人Winのページはこちら 24時間、健康状態を管理できる高齢者向けシステム「HRS(ヒューマンレコーダーシステム)」
システムを開発したのはNPO法人ウェアラブル環境情報ネットワーク推進機構(WIN)と関連するベンチャー企業WINヒューマン・レコーダー。販売は丸紅情報システムズが行う。日本経済新聞等に取り上げられるなど各方面で注目を集めている。
WINヒューマンレコーダー株式会社のページはこちら ヒューマンレコーダーシステム

人間情報学会創立記念講演会レポート!

人間を知ることから新しい未来が始まる。

人間は人間のことをよく知らない

人間は人間のことをよく知らない大きな樹木が、学問の守り神のように立ち並ぶ東京大学本郷キャンパス。2010年1月15日、構内にある山上会館において、「人間情報学会」の創立記念講演会が開かれた。レポートを書くことになっていた私は少し早めに到着したので、会館の下方に佇む三四郎池で時間をつぶすことにした。
1月だというのに日差しが暖かい。有名な小説に因んで名付けられた池の面で光の帯が揺れている。三四郎もいいが、夏目漱石の小説では草枕が好きだ。「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく人の世は住みにくい」。インターネット社会を生きる身としては情という言葉に情報の意味も重ねたい。
漱石は人間の本質を描く作家だった。名前のない猫の話もそうだ。人間とは何か。その追究は決して小説家や哲学者の専売特許ではない。これから講演を聞きに行く人間情報学会の設立趣旨にもこう述べられていた。
「人間の発信する情報は複雑・非線形※1であり、個人個人の本質を理解するとともに社会全体の本質の理解まで発展させる必要がある」
なんだか難しそうだが、考えてみると、人間は人間自身のことをよく知らないのかもしれない。少子高齢化の進展やストレスの増加など、現代社会の問題を解決し明るく新しい未来を切り拓いていくためには、人間をもっと知ることが必要だろう。学術名、ホモ・サピエンス。知恵あるヒトの末裔である私はゆっくりとした二足歩行で山上会館に向かった。

※1 非線形
線形でないこと。線形とは、2つの波が重なる場合のように、2つの波の量を合わせたものが全体の変化の量を示す重ね合わせの原理が成り立つもの。自然現象はもとより経済なども非線形。

PAGE TOP

人間が発信する情報を多面的に解明することが大事

会場の受付にはすでに行列ができていた。カメラマンや担当者と合流し会場内に入る。早く席を決めておかないと、座れなくなりそうだ。なんとか会場の中央に空席を見つけ、腰をおろす。
人間情報学会は、東京大学発の研究開発型NPO法人「ウェアラブル環境情報ネット推進機構(通称WIN)」※2の活動の一環だ。2008年11月に設立されたWINでは、健康・福祉の向上と環境保全に貢献することを目的に、「ウェアラブル」をキーワードにした装着型のITシステムを社会に広めていく活動を10年間展開している。
WINの生みの親であり理事長は板生清東京大学名誉教授だ。「万物は情報を発信する」、1991年より板生教授が提唱している「ネイチャー・インタフェイス」の技術感・世界感がベースにある。自然、人間、人工物が発信している情報に耳を澄まし、理解を深め、そこから調和と共生の新たな世界を築いていこうという遠大な構想だ。
人間情報学会創立記念講演会は、板生教授の静かだが、思いのこもった言葉から始まった。「さまざまな情報があふれている現代社会において、人間情報を多面的に解明することは世の中に新たな視点を提案することにつながると考えています。微小センサを活用したウェアラブル機器などを使って人間が持っている情報を集め、データベースに蓄積し分析することでいままでわからなかったことが見えてくる。ここに人間情報学会設立の狙いがあります。さらに個人の情報から社会を見通し、どうすれば人間の幸福が得られるのか、そこまでを視野に入れています」
人間情報学会の設立では、医学、工学、経済、心理、社会科学などの研究者はもとより、医療や健康、情報関連など幅広い企業から約100名の発起人が名を連ねる。多彩な分野の知恵やノウハウ、技術が融合した先に新たな可能性の地平が広がっている。同学会に寄せる期待の大きさ、研究者の意気込みは、人間情報学会の初代会長、高橋裕子奈良女子大学教授・医学博士の基調講演のタイトル「人間情報が拓く日本の未来」にも表れていた。

※2 NPO法人「ウェアラブル環境情報ネット推進機構(通称WIN)」
2000年8月に設立。理事長、板生清東京大学名誉教授。ウェアラブル・インフォメーション・ネットワークに関するサービスの開発などを行い、特に人間の健康向上と環境保全に貢献することを目的としている。


PAGE TOP
力のある情報が人生を、社会を変える

力のある情報が人生を、社会を変える

情報の影響力について、日本の病院で初めて禁煙外来を開設した高橋先生の経験に基づく話は非常に興味深かった。
医者が禁煙を進める場合、「このままだと癌になりますよ」といった言い方をするが、この言い方で禁煙する人はほとんどいないという。力のある情報が必要だと高橋先生は話す。「力のある情報とは、人の知に訴えることで人生や社会を変えるきっかけとなるような情報です。たとえば、22歳まで非喫煙だと喫煙者になりにくいという情報をもとに喫煙防止教育がはじまりました。その結果、日本では子供たちの喫煙率が世界でも例がないほど大きく減少しました」
禁煙したいが、ヘビースモーカーだから無理ではないかと思っている人の考え方を一変させる情報も紹介された。「朝、起きて30分以内にタバコが吸いたくなる人は禁煙治療の成功率が高い」
着物姿で柔らかな物腰だが、高橋先生の声はどこまでも明るく力強い。最後にこう決意を述べた。「人間情報はすべての人間活動において重要です。本学会における人間情報の集積、統合、さらに収集方法の発展により、人間の幸福への貢献をぜひ成し遂げていきたい」


PAGE TOP
指先の脈波から精神の健康状態がわかる

指先の脈波から精神の健康状態がわかる

キーボードの入力や頭をかくのに使う指。なんと指先で精神の健康状態をチェックできるという。雄山真弓大阪大学大学院招聘教授の講演「指尖(シセン)脈波のシミュレーションモデルとフラクタル解析」は驚きの連続だった。
指尖(シセン)とは指先のこと。脈波は、動脈を流れる血液によって生じる血管の振動現象を波形として捉えたものだ。「指先の脈波なら測定も簡単です。非線形解析を用いてこれまでの解析法では得られなかった脈波と心理との関係を調べています。数理モデルを作成し麻酔時における脈波の動きを測定する実験を行うなどして検証した結果、脈波は呼吸器や心臓はもとより交感神経や副交感神経といった中枢神経の影響を受けていることがわかりました」
交感神経は活動的な時に活躍する。また緊張やストレスなど精神的な刺激に対しても働く。一方、副交感神経はリラックスしている時に働く。脈波を測定し解析することで精神の健康状態がチェックできるというわけだ。認知症患者、子供、会社員、妊婦などさまざまな人の脈波の測定結果や、音楽セラピー、認知症老人に対する声かけなどの効果の検証が紹介された。非常に重要だと感じたのは次の指摘だ。
「脈波に限らず生体情報に関しては1回の測定で状態を決めつけることは危険です。時系列で保存し傾向を見ることが大切になります。そのために、いつでもどこでも誰でも気軽に測定できることが重要です。インターネットを活用した脈波による精神健康状態の自己チェックシステムも開発しているところです」


PAGE TOP
アカデミックであることよりも、目指すところは社会貢献

アカデミックであることよりも、目指すところは社会貢献

さまざまな分野の第一線で活躍する研究者の講演は、優れたオムニバス映画を見ているようで、知的好奇心が途切れることはなかった。
岸上順一NTTサイバーソリューション研究所 所長・東京大学特任教授(演題:「社会・生活・情報・人間」)は、これからのサービスのキーワードの1つとしてライフログを挙げた。個人に関わる情報を長時間に渡りデジタルデータとして記録するライフログを活用することで、きめ細かなユーザーの特性に応じた新たなサービスが生まれてくるという。
戸辺義人東京電機大学教授(演題:「センサネットワーク:インフラからヒューマンプロープへ」)は、人間の行動を積極的に利用することでコストや手間をかけずに環境情報を収集できるヒューマンプロープ(人間による計測)を紹介。CO2データ測定センサを携帯電話に付けるなどその可能性に言及した。
廣瀬弥生国立情報学研究所特任准教授(演題:「社会科学的側面からみた人間と情報について」)は、人間の生み出す知恵や知識、情報を活用するためには、国や組織の文化的背景など社会科学の観点から分析することが必要であると指摘した。
インターネットを活用した禁煙プログラムを高橋先生と一緒に運用している、禁煙マラソン事務局長の三浦秀史氏は、人間情報を活用してレコメンド※3する場合、継続性の観点から組織化の重要性について話した。禁煙マラソンでは先輩の禁煙者が禁煙したばかりの新人を育てていく階層構造になっているという。
梅田智広東京大学助教は、遠隔地から24時間、健康状態を管理する高齢者向けシステム※4を紹介する際、自ら小型センサを装着した状態で講演を行い、心拍数や体の動きなどの変化を画面に表示させた。この小さなセンサで心拍、体温、運動状態などを測定し、自律神経のバランスを導き出すことができるという。人間のストレス状態の可視化を目的としている。コンピュータを身につけるウェアラブル時代の幕開けを肌で実感できた。
すべての講演が終わり、再び板生教授が登場し閉会の挨拶を行った。「人間情報をセンシングし新たなサービスを創造していくことで、人間の生き方や社会はどう変わっていくのか。本会は従来の学問体系を超えて、人間情報を総合的に議論する場としたい。アカデミックであることよりも市民に役立つ組織として、目指すところは社会貢献です」
草枕では、住みにくい世から、住みにくさを取り除くのは詩人や芸術家の天職であると書かれているが、現代では科学者や研究者も加えるべきだろう。そして、その果たす役割はますます大きくなっている。
山上会館を出ると外はまだ明るかったが、私の体内では腹ペコセンサと冷たいビールを飲みたいセンサが活発に動き始めていた。

※3 レコメンド
ユーザーが関心を持ちそうな情報を勧める手法。※4 24時間、健康状態を管理できる高齢者向けシステムシステムを開発したのはNPO法人ウェアラブル環境情報ネットワーク推進機構(WIN)と関連するベンチャー企業WINヒューマン・レコーダー。販売は丸紅情報システムズが行う。日本経済新聞等に取り上げられるなど各方面で注目を集めている。


記事に関するお問い合わせはこちら Contact us

丸紅情報システムズ※文中の製品名および会社名は、各社の商標または登録商標です。
※記載の情報は発表日現在の情報です。記載の情報は予告なく変更される可能性がございます。

Copyright © MARUBENI INFORMATION SYSTEMS CO.,LTD.