Powered by 丸紅情報システムズ株式会社

ITインフラ

date_range公開日:2023年4月28日

update更新日:2023年6月1日

Wi-Fi6Eとは?3つのメリットと導入ポイントを解説

日本において、2022年9月から利用が可能になったWi-Fi6E。これまでのWi-Fi6よりも、高速性・安定性・安全性に優れていることから、注目が高まっています。本稿では今後主流となるWi-Fi6E規格について解説していきます。

Wi-Fi6Eとは?

Wi-Fi6Eはこれまで主流となっているWi-Fi6にEが追加されており、このEはExtended(拡張)を意味します。今回Wi-Fi6Eとなって拡張されたものが周波数帯です。

新たに追加された6GHz帯とは

それでは6GHz帯が追加されることはどのようなメリットがあるのでしょうか。それはこれまでの2.4GHz帯と5GHz帯の2つにはそれぞれに難点があったことが解消されるという点にあります。

2.4GHz帯の難点

2.4GHz帯では、「周波数の幅が狭い」というのが難点であり、使いづらいといわれる原因でした。2.4GHzの中で使用できるチャネルは1チャネルから14チャネルまでありますが、干渉がなく使用できるチャネルは3つ程度しかありません。さらに2.4GHz帯は、Wi-Fi以外、たとえばブルートゥースや電子レンジ、コードレスフォンなどでも使われている関係で、状況によってはWi-Fiのサービスに影響を及ぼしてしまうという問題がありました。

5GHz帯の難点

5GHz帯は、2.4GHz帯に比べて非常にチャネル数が多く、20チャネルほどが使用可能です。しかし、その半面で5GHz帯には「DFS」という機能的な特徴があることによって、使い勝手が悪くなってしまいます。

DFSとは、Dynamic Frequency Selection(ダイナミック・フリークェンシー・セレクション)の略で、無線デバイスの動作周波数を、重要性の高い航空管制レーダーや気象レーダーなどで使用されている場合には、そちらを優先させるために、Wi-Fiのアクセスポイントでは、周波数帯に干渉を与えるレーダーの信号を検出した際には、そのチャネルの停止を行います。そのため、チャネル数の多い5GHz帯であっても、状況によっては安定的に利用できる周波数帯ではないという問題もあります。

このように6GHz帯は、上記のような2.4GHz帯・5GHz帯のもつ問題がないことから、より快適な通信が可能となるため、今後主流となると言われています。

Wi-Fi6Eがもたらす3つのメリット

より早く

これまで使われているWi-Fi6までの規格には、下位互換性がありました。そのため、たとえばWi-Fi6のアクセスポイントでは、Wi-Fi5やWi-Fi4の端末なども収容できてしまうため、そうした古い規格の端末を収容してしまうと、通信速度が全体的に遅くなってしまうという弊害があります。

しかし6GHz帯のWi-Fi6Eには、Wi-Fi6Eの端末しか収容できません。そのため、通信速度が遅くなることがなく、ずっと高速を維持できるというメリットがあります。

より安定的

そして、「より安定的」です。現状、6GHz帯には、DFSに関する規制がないことによって、DFSの影響を受けず、常に安定的にチャネルを使用できます。これにより、安定性が確保されるというメリットが享受できます。

よりセキュア

さらに「よりセキュア」になることについては、Wi-Fi6Eが、WPA3必須対応であることに由来しています。 Wi-Fi Allianceでは、Wi-Fiをよりセキュアに使う目的で、Wi-Fiネットワークのセキュリティを強化するための規格も策定しており、それが「WPA3」です。 そもそもWi-Fi Allianceが策定するWi-Fiネットワークのセキュリティの規格には、WPAとWPA2があります。WPA3はWPA2の一部の脆弱性を改善したものです。

※WPA/WPA2は、Wi-Fi Protected Accessの略で、従来の脆弱性のある暗号化方式に代わって制定された暗号化方式です。それぞれTKIP(Temporal Key Integrity Protocol)とAES(Advanced Encryption Standard)という暗号化技術を採用しています。今日の主流はAESを利用したWPA2です。

Wi-Fi6Eは、このセキュリティの規格としてWPA3必須対応となっています。つまり、今日における最も強固なセキュリティ規格であり、従来のWi-Fiに比べて、Wi-Fi6Eは、よりセキュアになったと評価できます。

今日、ネットワークのセキュリティ性は重要で、今後ますますその重要性は高まっていきます。特に企業の場合、情報漏洩など発生すれば、その被害は甚大なものになりかねません。Wi-Fi環境をよりセキュアにすることは、極めて重要といえます。

Wi-Fi6E対応機器の現状はまだまだこれから

これまで見てきた通り、Wi-Fiの環境を飛躍的に快適にしてくれるポテンシャルをもつWi-Fi6Eですが、必ずしもメリットだけではありません。唯一のデメリットとでもいうべき点が、アクセスポイントなどWi-Fi6Eに対応した機器が少ないことです。(2023年4月時点)

日本では、2022年9月に総務省が6GHz帯の使用を認可しました。これにより、規制の面だけでいえば、これ以降、Wi-Fi6Eが使えるようになっています。

しかし前述の通り、Wi-Fi6Eを利用するためには、Wi-Fi6Eに対応したアクセスポイントや端末などの機器が不可欠ですが、Wi-Fi6E自体は、つい最近になって登場したばかりの規格であるため、まだまだ対応機器が十分に市場に浸透していないというのが実情です。

しかし、今はまだ過渡期であるために、Wi-Fi6E関連の機器の普及が十分でなかったり、導入する企業などの団体が少なかったりといった弊害はありますが、その利便性の高さに鑑みれば、近いうちにWi-Fi環境はWi-Fi6Eに置き換わっていくだろうことは容易に想像できます。

Wi-Fi6E導入のポイント

今後企業においても、Wi-Fi環境がWi-Fi6Eに置き換わっていくことは間違いないことでしょう。まだまだ過渡期であるとはいっても、すでにWi-Fi6E対応の機器が市場に登場し始めているので、ここでWi-Fi6E対応の機器等を導入する際の注意すべき点についてみていくことにしましょう。

どの周波数帯を利用/選択できるか

現時点では、Wi-Fi6E対応の携帯端末などが普及していないので、どのタイミングでどんな端末が市場に出回るのか、その動向を注視することは重要です。しかし、その動向とは別に、アクセスポイントについては、「どの周波数帯を利用できるのか」という点を選定ポイントのひとつにすべきです。

現在でも、デュアルバンドと称して、2.4GHz帯と5GHz帯の2の周波数帯に対応するアクセスポイントはあります。しかし今後は2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、6GHz帯が使えるトリプルバンドといわれるものであったり、デュアルバンドであったとしても、2.4GHz帯と5GHz帯、そして6GHz帯の中から2つを選べるタイプのものなど、ラインナップが豊富になってくると思われますので、どんな周波数帯を同時に使えるか、ということは重要な選定ポイントになります。

アンテナ数

そして、アンテナ数も重要な選定ポイントになります。それぞれの周波数帯で、アンテナを2つずつ使用している2×2(2ストリーム)や、4つずつ使用している4×4(4ストリーム)などがありますが、より多くの端末を収容する必要があるアクセスポイントなら、よりアンテナ数が多い方が良いでしょう。

消費電力

さらに、消費電力についてもしっかりと確認することが肝要です。以前までは2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数帯だったものが、6GHz帯を加えて3つの周波数帯に対応するようになったことで、アクセスポイントの消費電力はより大きくなります。場合によっては、従前の電力規格では対応できないようなアクセスポイントもあり、必要な場合にはスイッチのモデルをグレードアップしなければならいケースも出てくる可能性があります。電気代が高騰している昨今の状況に鑑みれば、消費電力をチェックすることも、機器選定の上で大きなポイントといえるでしょう。

企業向けWi-Fi6Eは大規模イベントなどで効果を発揮

現在、丸紅情報システムズで取り扱うExtreme NetworksのWi-Fi6E対応の無線LANアクセスポイントは、全ての機能を使う際にもPoE++の様な大きい消費電力を要求しないため、利用環境によっては電気代削減のメリットも享受できます。企業によっては、1000台ものアクセスポイントを使用しているケースもあるため、アクセスポイントの数が多ければ、電気代の削減割合も大きなものとなるでしょう。たとえば、学校施設や、多くの人が集まる機会が多いスタジアムやコンサートホールのような施設では、多くの端末を収容する必要に迫られることから、高い効果が得られると予想されます。

この記事とあわせて紹介したいコンテンツはこちら
Extreme Networks複数のスイッチを一枚の布として捉える!自律型ネットワークを実現するExtreme Fabric Connect

お役立ち資料

「アクセス制御」と「通信の最適化」で理想のリモートワークを実現

パンデミックをきっかけとして、リモートアクセスに求められることが変化している現在。本資料では、従来型のリモートアクセスソリューションには課題が潜んでいます。それらを解消する先進的なソリューションとしてAbsolute(NetMotion)を解説しています。

防御だけに頼るのではなく、EDRで早期検知を

最近のランサムウェアの傾向として「正規の動き」を装うものが増えています。こうした手法に対抗するには、エンドポイントや通信のログを解析し、怪しい挙動がないかどうかを検知するEDRのような仕組みが必要になります。本資料ではこのEDRについて解説しております。

優れたバックアップとランサムウェア検知機能で重要なデータを保護

最近では「バックアップを取っているから安心」という心理を見越し、サイバー攻撃者は先にバックアップを消してから本番システムを暗号化するようになってきました。ランサムウェアの被害を最小限に抑えるために、優れたバックアップやランサムウェアの検知等、高度なデータ保護機能を有したストレージの導入は有力な選択肢の1つです。

煩雑な運用に和ずらされることのない、高速なリカバリでシステムの稼働継続を

バックアップシステムは、システム稼働の継続に必要不可欠です。しかし、その適切な運用は専門的な知識を持ったエンジニアがいないと困難です。そして、バックアップを取っていても、システムが被害を受けた際、復旧まで時間がかかってしまってはいけません。こうした課題をまとめて解決し、簡単に導入できるソリューションを紹介します。

100%防ぐことはできないランサムウェア、感染後の対応にフォーカスを

バックアップを用いてランサムウェア被害からの一次復旧を果たしても、対策は終わりではありません。情報漏洩がないか確認や、再発防止のための施策が必要です。これまでの対策の限界をカバーする有効な手立てとは何なのでしょうか。本資料は、感染後の対応にフォーカスしたアフターランサムウェアについて解説しております。

ソフトウェア工学における技術的負債の知られざる真実

本資料では、ソフトウェア工学における技術的負債の知られざる真実と題して、ソフトウェアエンジニアリングチームが過去におけるすべての迅速な修正、または、手っ取り早い方法を着手したことに対して支払わなければならない代償である技術的負債について詳しく解説しています。

FDA サイバーセキュリティガイダンスに従うには

本資料では、医療機器を安全に保つ方法が示されているFDA サイバーセキュリティガイドラインについて、ガイドラインの概要、安全な開発ライフサイクルの5つのフェーズ、ガイドラインの実施方法、そして実施する手段としてSASTツールについて紹介しています。

PA DSSとは 概要とPA DSSコンプライアンス

本資料では、クレジットカード決済に関してはセキュリティが重要であるため、PA DSS および PA DSS への準拠が不可欠です。ここでは、PA DSS とは何か、PCI DSS との関係、および PA DSS コンプライアンスを確保する方法について解説しています。

ソフトウェア開発におけるセキュリティガイド 安全なコーディングスタンダード ベストプラクティス

ソフトウェアセキュリティ問題の最大90%はコーディングエラーが原因で不可欠とされている安全なコーディングスタンダード。ここでは、安全なコーディングスタンダードとは何か、およびこれらのセキュリティスタンダードを実施する方法について解説しています。

メーター読み取り業務の自動化・デジタル化とは?-現状の課題と導入メリットを徹底解説-

スマートファクトリ―において、現時点ではメーター読み取りの自動化・デジタル化が進んでいる現場は少なく、“せめてスマートメーターを導入したい”と思っても、それすら簡単には進まないのが実情です。ここでは、メーター読み取り業務の問題点や、その解決のための方策などについて解説しています。