IoT活用事例5選 | 業種に分けて活用シーンを解説

IoT(Internet of Things)とは、身の回りのさまざまなモノや業務で使用するモノをインターネットに接続し、さまざまなデータを自由に活用できるようにすることです。近年広く普及し始めたDX推進の動きと連動して、製造業や小売業など多くの業種・業態でIoTの企業活用事例が多数報告されています。

本稿では、各業種の事例を挙げながらIoTの活用法を解説するとともに、そのような活用シーンで使えるIoTの各種ツールについても解説していきます。
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IoTとは?

IoTとは、インターネットを活用し、さまざまなモノに各種センサーや通信機能を付加することで、さまざまな情報を共有・活用することを可能にすることです。IoTは、1999年にイギリスのエンジニアによって初めて提唱されたといわれています。その後、IoTは世界中に広まり、2010年代半ばには日本でも広く受け入れられ、活用事例もみられるようになりました。

企業のDX化を促進するIoTの有効性

私たちの暮らしの中で、インターネットに接続された家電が普及しています。事前にインターネットに接続することで、天気予報などをいつでも確認できるテレビ、インターネット上で公開されている料理レシピを提供できる電子レンジなどを、総称して「IoT家電」と呼びます。

また、最近では、既存の家電にIoTデバイスを後付けしてIoT家電として利用できるようにするスマートフォンアプリも登場し、IoTは非常に身近な存在になっています。

IoTは企業の業務効率化にも大きく寄与しています。とくに、急速に進む企業のDX推進において、IoTは最も手軽なDXツールです。近年、企業がIoTに関する知識を蓄積し、自社の課題解決やDX推進にIoTを活用する方法を理解できるようになったことが、企業がIoTを活用しやすくなっている理由です。IoTを導入することで、これまで見えなかったものがデータとして確認できるようになり、そのデータを有効活用することで、ヒトが行っていた業務を効率化することができるようになりました。

また、IoT機器の価格やデータ通信料が安くなり、サービスの多様化で選択肢が増えたことも、企業のIoT導入を後押ししています。

IoTはどこで使えるのか、実際にどのようにIoTが活用されているのか、具体的な事例をご紹介します。

製造業でのIoT活用事例

製造業では、製造現場の人の位置情報を取得することで、作業の流れや効率の向上につながります。また、モノの位置や数量を正確に把握することで、部品や仕掛品、製品などの在庫管理もより正確に行えます。

ある製造工場では、工場内の業務が非効率であるという問題に直面していました。そこで、IoTを活用して、現在の工場レイアウトにおける作業者の動線のデータを収集しました。そのデータをもとに、どの工程が非効率なのかを特定し、工場のレイアウト変更に活用することで、大幅に作業動線を改善し、作業効率の向上に成功しました。

また、ある工場では、完成品になる前の仕掛品が複数の場所に保管されており、仕掛品の数量を探して正確に数えるだけでも相当な時間がかかっていました。そこで、仕掛品にRFIDタグを取り付けることで、位置情報を取得し、正確な数量と保管場所を適切に管理することができるようになりました。このように、製品だけでなく半製品も重要な資産であり、定期的な棚卸しが欠かせません。IoT化が進めば、棚卸し作業に要した時間・労力も大幅に削減することが可能です。

さらに、多くの製造工場では、巡回点検などの検査業務が欠かせません。従来は、主にヒトが目視でメーターなどを点検していましたが、IoTを活用することで、これらの点検業務を自動化することができます。また、製造工場における自動制御のための制御基盤でやり取りされるPLC信号をIoTで集約・管理することで、各種設備の稼働状況を少ない労力で効率的かつ適切に管理することが可能になります。

このように、製造業ではIoTの導入により業務効率が向上した事例が多く、各メーカーなどの工場でIoTの導入が進んでいます。

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物流分野でのIoT活用事例

物流分野では、倉庫業務や輸配送業務において、IoTの活用事例が多くみられます。

例えば、大規模な物流倉庫では、複数のクライアント企業の物流業務に対応するため、倉庫内を複数のエリアに分割しているところがあります。そのような場合、作業員が各エリアで働いた時間数が記録され、その時間数に基づいてクライアントへの請求額が算出されます。このような場合、作業員の動きを把握できるIoTを導入すれば、各作業員の動線データから、どのエリアで何時間働いていたかを知ることができ、請求額をスムーズかつ正確に算出することができるようになります。

運送・配送の場合は、車両用GPS装置を導入することで、移動状況を把握することができます。また、適切な温度管理が必要な貨物室に温度センサーを設置し、そのデータを物流センターなどで一元管理するケースも出てきています。

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商業分野でのIoT活用事例

大型商業施設では、トイレの扉などに開閉センサーや人感センサーを付けて利用状況のデータを収集し、その情報を施設利用者にリアルタイムで提供するIoTが普及しています。施設内の標示板のようなもので利用者に情報を提供するほか、施設管理者がデータを取得することもできるので、データを分析することで「来場者に対してトイレが少ない(多い)」などの状況を把握するのに有効活用できます。利用率が100%に近い状態が続けば、トイレの増設が必要だと判断できます。逆に利用率が低い場合は、別の施設に変更することで利用者の利便性を向上させることが可能です。

また、利用者がスマートフォンに会員制アプリケーションをインストールしている場合、スマートフォンの通信機能を利用して、施設や店舗内での利用者の移動データを収集することも可能です。こうしたデータを活用できれば、商品ディスプレイを修正したり、店舗のレイアウトを効率化したりといった改善ができます。

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建設業でのIoT活用事例

建設業界では、IoTを活用して人や物の動きを監視することで、大幅な業務改善につながった事例があります。

仕組み自体は、製造業や物流分野などで使われているIoT技術と同様です。しかし、建設分野では、とくに危険を伴う現場が多いため、建設現場での人の出入りを適切に把握することが非常に重要です。

また、建設現場では通常、多くの協力会社が連携して作業するため、モノの動きを把握することも重要です。具体的には、建設現場で使用する工具類です。建設現場はかなり広いところもあり、多くの協力会社が同じような形や大きさの工具を使っているため、誤って持ち帰ってしまったり、紛失してしまったりして、作業完了後に1000万円を超える工具損失が出ることもあります。

そこで、そうした工具にRFIDなどが搭載されていれば、どこに何があるのかを正確に把握することができ、紛失を防ぐことができます。

さらに、現場に設置されている昇降機の数をセンターで検知して、昇降機の数を減らしても問題ないと判断できれば、コストダウンにもつながります。

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農業分野でのIoT活用事例

最後に、農業などの第一次産業におけるIoTの活用事例を紹介します。

農業、漁業、林業、畜産業などの第一次産業は、労働者の高齢化と後継者不足(新規労働者の不足)という問題を抱えています。

とくに後継者不足(新規就労者不足)については、仮に後継者がいたとしてもノウハウの伝授が困難です。例えば、養鶏業では換気のタイミングや給餌のタイミングが重要ですが、これらは経験的に培った属人的ノウハウであり、決まったマニュアルがないという点が後継者育成の課題でした。

そこで、ある養鶏場では、熟練者が行う給餌や換気タイミングのデータ、養鶏場内の温度や湿度の変化、気象情報、鶏の体重変化など、可能な限りのデータを収集・分析し、換気や給餌タイミングをデジタルデータとして蓄積するためにIoTを活用しました。当該IoTの活用により、経験の浅い作業者であっても熟練者と同じタイミングで給餌・換気を実現させることができました。

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まとめ

さまざまな業種でのIoT活用の代表的な方向性や事例を紹介しました。

丸紅情報システムズは、今回取り上げたような活用シーンで活躍できる、さまざまなIoT関連ソリューションを提供しています。また、データの収集・分析から活用までトータルにサポートし、IoT活用の企画支援も行っています。

製造・物流分野での人や物の動きや位置の測位には、幅広い環境で利用できる豊富なラインナップをもつビーコン製品「Blue Beacon」や測位ソリューション「iField」が有効です。工場での検査作業では、IoTカメラ「Lilz Gauge」を使って自動読み取りが可能です。

商業施設での施設利用状況のデータ化、養鶏場でのデータ収集には、電池レスセンサソリューション「EnOcean」が役立ちます。

IoTプラットフォーム「MAIDOA plus」は、さまざまな業種、業態のIoTソリューションでも、各種センサーなどで収集したデータを一元管理・活用することが可能です。

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