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3Dプリンティングの品質とコスト対効果掲載日:2017/03/08

3Dプリンティング。近年のブームのおかげで、広く知られ、様々な分野で使われるようになってきた一方で、正しく理解されていなかったり、よくわからなかったり、まだまだ知られていない使い方も可能性もあります。私も日々の仕事で「?」や「!」と思うことがしょっちゅうあります。みなさんもそうかと。

そこで、3Dプリンティングの達人や、これから使おうとされる方にも、3Dプリンティングの「?」や「!」ついて、これからこちらのブログで少しずつお伝えし、また一緒により良い使い方を考えていければと思います。

前回に続き…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

3Dプリンターの「精度」は「品質」のごく一部

前回のコラムでは、「3Dプリンティングは使えるか?」について、一般に言われるQCD(ここでは品質、コスト対効果、時間とします)に分けて考えると、少し見えてくることがあるとし、その1つめの「品質」のひとつである「精度」の考え方について述べました。

みなさんお分かりの通り、「精度」は「品質」のごく一部です。

国際的な規格ISOでの「品質」の定義は、「種々の本質的なひとまとまりの特質が要求事項を満たしている度合い」とのことで、わかりにくいのですが、

自分なりの解釈では、使う(買う)人が求めることに対し、カタチのあるモノだけでなく、カタチの無い価値やサービスを含めて、どのくらい応えているか?ということかと捉えています。

ですから、「求めること」「応えること」はさまざまですので、3Dプリンティングの品質についても、一つの答えはなく、「求めること」により「品質の良いプリンター」は変わってくることは言うまでもないでしょう。

 

 

3Dプリンターの品質の「コスト対効果」

よく「3Dプリンターは価格が高い」「材料価格が高い」という声を耳にします。

ここ数年、個人でも買える価格帯の3Dプリンターがたくさん売られていることはご存知かと思いますが、それでも10万円前後、プログレード大型高性能プリンターになれば1億円以上のものもあります。

材料も樹脂、金属とも大量生産消費される原材料に比べますと、3Dプリンター用材料はかなり高額なのは事実です。

同じく「大量生産販売されるようになれば価格は大きく下がる」と聞くこともあり、実際下がる傾向にはありますが、ある程度以上の品質のモノを作るプリンターでは、ここ数年でも下がっているとは言えず、今後も急激に下がるとは見ていません。

それは、まだ1機種当たりの生産販売台数は少なく、各メーカーもまだ技術・製品開発にかなり投資し続けなければならない状況も背景としてあります。

にもかかわらず、Stratasys社だけでも全世界で総出荷台数20,000台以上、当社が1992年からStratasys社の代理店として国内での総出荷台数も2,100台を超え、大企業だけでなく小企業、公的機関のお客様が3Dプリンターを購入され、使い続けられ、利益を出されているとすれば、3Dプリンターの「コスト」は高いとしても、それ以上の「効果」が得られているからではないでしょうか?

 

 

ユーザー事例から見えてくること

2013年ころに起きた「3Dプリンターブーム」以降、プリンターメーカー、販売代理店、ユーザーも急増したことで、今ではインターネットやセミナーイベントを通じ、3Dプリンティングユーザーの活用事例を多数見て学ぶことができます。

当社でも、多種多様な産業や規模のお客様の活用事例を独自取材し、ホームページやリーフレットを無償で公開・配布しています。(ぜひこちらからご覧ください)

3Dプリンターの使い方は多種多様ですが、筆者は大きく2つに分かれると考えていて、上記の活用事例もどちらか、または両方に当てはまります。

①模型を作る
これは現在でも最も多い使い方で、最後は型成形や切削などで作るために設計された形状データから「できるだけ近い形または性能」の模型を作り、コンセプト・設計を考えたり、確かめたり、他社に伝えたりするために使われる。(このことはRP=Rapid Prototypingと呼ばれています)

②実機能部品または実使用型・治工具を作る
これは近年急増している使い方で、3Dプリンティングで作ることを前提に設計された形状データから、「求めることに最適な形または性能」の実用品を作り、実際に使われる。(このことは
DDM=Direct Digital Manufacturingと呼ばれています。)

これらを見ていきますと、どちらの使い方の場合でも、これまでの「ものづくり装置」と少し違うところは、得られた効果が「作ることそのもの」ではなく、「人」や「商品価値」に関わる効果であることが多いことが見えてきます。

 

 

本間ゴルフ様の事例から見える「効果」

実際の活用事例をひとつご紹介します。

多数のトッププロプレイヤーも愛用し、国産のゴルフクラブメーカーとして世界的にも有名な株式会社本間ゴルフ様の活用事例をこちらからご覧ください。

ゴルフクラブの開発設計の中で、「匠」と呼ばれる職人が、クラブを構えた時の見た目など、人間の感覚を重視して、手作業で削った「木型」から、3Dスキャナーを使い3次元CADデータ化し、それから最終形状設計の間に3DプリンターuPrintで模型を作られています。

アイアンの模型を削るのに5本つくるとなると5日を要していたものが、わずか一晩で済むようになったことで、修正があっても素早く形にできるといった、時間の効果も述べられていますが、

3Dプリンティングを使うコスト以上の効果は、本間ゴルフ様で最も重要とされている「匠の技」をより多くの商品に出来、それによる商品価値・品質を上げられたことではないでしょうか。

 

3Dプリンターで製作したゴルフクラブヘッドの模型

3Dプリンティングからの利益は「作ること」の前後から

3Dプリンティングが使えるかどうかを考えるポイントの2つ目、「コスト対効果」。

言い換えると「得られる利益」は、実際にモノを作る工程から得られることもありますが、それよりも大きな利益は、その前後の工程から生まれることが多いと考えています。

それについては、3つ目のポイント「時間」とともに、次回考えてみましょう。

 

 

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