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アメリカで見た3Dプリンティングの「!」 その1掲載日:2017/04/18

3Dプリンティング。近年のブームのおかげで、広く知られ、様々な分野で使われるようになってきた一方で、正しく理解されていなかったり、よくわからなかったり、まだまだ知られていない使い方も可能性もあります。私も日々の仕事で「?」や「!」と思うことがしょっちゅうあります。みなさんもそうかと。

そこで、3Dプリンティングの達人や、これから使おうとされる方にも、3Dプリンティングの「?」や「!」ついて、これからこちらのブログで少しずつお伝えし、また一緒により良い使い方を考えていければと思います。

今回は3月にアメリカに行って見た3Dプリンティングの「いま」と「これから」について…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

Stratasys本社で見た「いま」と「これから」

丸紅情報システムズはStratasys社の3Dプリンター正規販売代理店ですが、そのStratasys米国本社はアメリカ ミネソタ州エデンプレイリーという場所にあります。

写真は来客用の駐車場から玄関に入るところです。天気は良かったのですが、3月でも外はまだ東京より寒く、人が歩かないところには雪が残っていました。それでも現地の人は「今年は暖かく雪も少ない方」とのことでした。

日本も含め、世界で使われているStratasys社のFDM(熱溶融積層法)方式の3Dプリンターはこの本社内にある部署で研究開発され、工場で生産されています。

Stratasysが描く「未来」を実際に見た

今回の訪問で、Stratasys社が昨年8月にアメリカの展示会で公表した、新しいコンセプトの3Dプリンターの開発試作機「Infinite-Build 3D Demonstrator(IB3D)」と「Robotic Composite 3D Demonstrator(RC3D)」(CG画像:Stratasys社)を実際に見ることが出来ました。

どちらもStratasys社の創業者で現在も新技術開発のトップとして活躍されているScott Crump氏が、1988年に自宅ガレージで原理発明、開発したといわれるFDM方式を進化させたもので、航空機メーカーBoeing社、自動車メーカーFord社、CADやロボット制御技術を持つSiemens社との協力で、今後の開発の元となる初回試作機を開発したものです。

簡単に説明すると、

IB3Dは造形テーブルを垂直に立て、それに小型押出成形機から樹脂を押し出して水平方向に積層造形し、造形テーブルを装置の奥へ移動させていくことで、従来出来なかった長くて大きいモノを一体で作ることができる装置、

RC3Dは市販のアームロボットの先端にFDM方式の樹脂溶解押し出し装置を付け、回転軸を持つ造形テーブルの上に、水平平面積層ではなく、モノを作るのに最適な方向で3次元的に積層造形することができる装置です。

筆者はこれまで動画や写真でしか見たことがなく、実際に装置やサンプル、実際に造形しているところを見ることが出来、当たり前ですが装置の大きさ、迫力に驚いたとともに、2次元ではなく、やはり3次元の現物を見たり触ったりすることで得られる情報が多いことも改めて実感しました。

写真や動画、そのほか細かい情報をここでご紹介できないことはお許しいただきたいのですが、もし関心がおありの方は、お伝えできる範囲でお伝えしますので、弊社までお問い合わせください。

未来のプリンターで何ができるのか?

2台の未来のプリンターは、単にStratasysが自社の技術を示すためではなく、実際にお客様が望まれていることを実現するために開発されたものです。確かに仕組みや装置はこれまでになく新しいものですが、もっと大事なことは「これでいったい何を作って、それがどう役立つのか?」ということです。

もちろんその可能性はまだこれから広がっていくものですが、なぜBoeing社やFord社が開発に加わっているかというと、動画インタビューにもあるように、製品開発の試作品を作るためではなく、近い将来のニーズを予測し、それに応える技術や製造装置をコンセプト段階からメーカーと協力して「自分たちが作りたい装置をいち早く手に入れるため」に、積極的に人もお金も時間もかけるという、世界的な競争に必要な考えによるものだと筆者は解釈しています。

既に具体的に試作に成功しているモノとして、Boeing社は

・飛行機内装樹脂パネル

・CFRP(カーボン繊維と樹脂の複合材料シート積層)成形用の型

Ford社は

・自動車内装インストルメントパネルやセンターコンソール

を動画などで公表しています。

さらに広がる3Dプリンティングの可能性

筆者が実際に見たり、開発担当者と話をして感じたのでは、特にアームロボットを使ったRC3Dについて、単に3次元的に自由な方向で積層出来るということだけではなく、もっと大きな可能性があるということです。

それは、既にStratasysでも考え、実験が始まっています。まずは樹脂材料について。既に樹脂にガラスやカーボンなどの繊維を混ぜ、射出成形や押出成形して強度、剛性、耐熱性などを高め、従来金属の部品を樹脂化して、軽量化した例は多くありますが、作り方の理由により、繊維が整列してしまい、またその方向をコントロールすることが出来なかったり、入れられる繊維の長さや量にも制限があったりしました。しかしRC3Dを使うことで、繊維を長くできたり、繊維の向きを予め「設計」出来、樹脂効果収縮による変形を抑え、繊維の強度を必要な個所と方向に利用できることで、より機能と軽さを高めた部品ができる可能性があります。

次に、アームロボットは、先端にいろいろなツールを自動で付け替えることができるので、もっと高速多量に樹脂を押し出せるツールや、積層したモノに後から穴をあけたり、表面を滑らかに削ったりするツール、塗装したりするツール、作ったモノの寸法や形状を検査したり測ったりするツールを付け替えれば、1台のロボットで様々なモノづくりが出来、更にロボットをリニアレールに乗せて動かす、複数のロボットを協働させれば、もっと大きなもの、複雑なものができることは、みなさんも想像できるのではないでしょうか?

このほかにも、Stratasys米国本社の開発部門の方々と話をしましたが、北米のStratasysユーザーでは、最近特にモノを作るための治工具、成形型に3Dプリンティングを使う例が増えているとのことで、日本でもまだ規模や数は北米ほどではないですが、同じ傾向にあります。

また、ショウルームに椅子が展示されていましたが、力と歪みをコンピュータで解析しながら、モノの最適なカタチを必要最小限の材料でコンピュータが作り出す、トポロジー最適化や形状最適化を使う設計手法もかなり使われるようになってきているとのことです。

次回はStratasys本社近くにある、Stratasysグループ会社で、世界最大規模の3Dプリントサービス工場で見た「!」をお伝えしたいと思います。

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