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アメリカで見た3Dプリンティングの「!」 その2掲載日:2017/05/10

3Dプリンティング。近年のブームのおかげで、広く知られ、様々な分野で使われるようになってきた一方で、正しく理解されていなかったり、よくわからなかったり、まだまだ知られていない使い方も可能性もあります。私も日々の仕事で「?」や「!」と思うことがしょっちゅうあります。みなさんもそうかと。

そこで、3Dプリンティングの達人や、これから使おうとされる方にも、3Dプリンティングの「?」や「!」ついて、これからこちらのブログで少しずつお伝えし、また一緒により良い使い方を考えていければと思います。

前回に続き、3月にアメリカで訪ねた北米最大規模の3Dプリンティング工場で見たものは…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

ミネアポリスからシカゴへ

前々回、前

北米最大の3Dプリントサービス会社

前回のコラムではStratasys米国本社で見た「未来」の3Dプリンターについてお伝えしました。この近くに、Stratasysグループ会社の一つである、Stratasys Direct Manufacturing社(以下SDM)のミネソタ工場があります。

SDMは3Dプリンターや切削加工機、射出成形機などによる受託生産サービス専門の会社で、北米に8か所の工場を持ち、品質マネジメント規格のISO9001、更に航空宇宙関連製造会社に求められることが多いAS9100の認証を受けています。

特に3Dプリンティングに関してはStratasys社プリンターだけでなく、樹脂、金属の多種のプリンターを数百台所有し、北米最大の3Dプリントサービス会社と言われています。インターネットで見積もりや注文ができるオンラインサービスも提供しています。

1か所で90台以上の大型機が並ぶ3Dプリント工場

筆者は過去にも何度かSDMの工場見学をさせていただいていますが、今回もお願いして、工場長に見学案内をしていただきました。

当然工場ではお客様から注文を受けてモノを作っているので、モノの写真は撮れないのですが、許可を得てプリンターが並んでいるところの写真を撮らせていただきました。

このように、工場に入るとすぐにStratasysの大型プリンターFortusシリーズがずらりと並んでおり、写真はその最前列だけですが、この後ろに何列もあり、その数に圧倒されます。この工場には、Fortus900mcをはじめ85台のFDMプリンターと、J750をはじめ7台のPolyjeyプリンターがあり、すべてのプリンターは写真の通り天井からのケーブルでネットワーク接続され、SDMが自社開発したソフトウエアシステムで状態監視、データ送受信できるようになっていいて、1年昼夜問わずプリントし続けています。

もう一つ驚くことは、85台のFDMプリンターを実際に動かしていたのはたった2人。主な仕事は、プリンターの材料交換と、できたモノを取り出し、次のプリントの準備をしてスタートし、できたモノは仕上げ工程に運ぶというもの。これも管理システムがあるから出来ることです。

このシステムではミネソタ工場だけではなく、他の工場のプリンターも接続され、どこにいてもすべてのプリンターの状況、造形スケジュールが把握でき、その時点で空いている最適なプリンターで効率よく作ることができます。最近よく聞かれるIoT、またはスマートファクトリーを実現した工場です。

ただのプリントアウト工場ではない

みなさんの中には、「3Dプリンターでモノを作る」のは、紙のプリンターと同じように「デジタルデータを送ってスタートすればモノが出来てくる」というイメージを持たれているかも知れません。

もちろん3Dプリンターを使われたことがある方はご存じの通り、プリントする前にソフトウエアで3次元データの向きや位置を決めたり、サポートと呼ばれる「支え」になる形状を作ったりするのは人がしなければならない作業なのですが、SDMでも同じで、データ作成技術者が適切にデータを作ることで、品質、コスト、時間を高いレベルで提供できているのです。また、これも独自開発のソフトウエアで、造形時間、消費材料なども短時間にシミュレーションできるので、造形スケジュールや納期管理も正確にできます。

加えて、作った後の仕上げも人の作業になりますが、SDMではサポート溶解除去、洗浄乾燥が速く効率よくできるような設備を整え、多量の研磨仕上げには専用バレル研磨機を開発設置し、省人化も行っています。

それでも、サンドペーパー研磨、接着、塗装、組み立てなどは人が行います。訪問した時も多くの作業者が黙々と作業をされていました。人の作業も、モノに付けて回る「作業管理書」にバーコードがプリントされていて、作業開始、終了時にスキャンすることで、だれがいつ始め、いつ終わったかが管理システムで共有されます。

お客様の満足を第一に

SDMの工場長からは、お客様の満足を第一に考え、満足されたお客様に繰り返し利用していただくことが重要と伺いました。

そのこともあり、SDM社の品質管理で日本でも参考となる例として「湿度管理」を紹介したいと思います。

3Dプリンターに限らず、多くの樹脂は水分を吸う性質があり、そのことで熱で溶かして固まる際や、冷えた後の性質に悪影響を及ぼすことがありますが、3Dプリンターに於いても同じで、プリントに使う材料は水分を吸わないようにすることが重要です。そのため、Stratasysの樹脂材料ケースは、密封する構造にしたり、中に乾燥材を入れたり、既に対策はしていますが、それに加え、SDMの工場は建物内部全体を常に除湿する設備を備えています。また、開封済みの材料を除湿庫で保管したりしています。

温度湿度管理は、プリンターのトラブルを防ぎ、稼働率を高めるためにも大変有効で。具体的な数字は出せませんが、SDMのプリンターの稼働率は非常に高いことを知りました。これは納期遵守だけでなく、プリンターの投資対利益にもプラスになります。

Stratasysだけでなく、世界の3Dプリンティングは...

先回のアメリカ出張では、このほかにも北米を中心に、世界の3Dプリンティングの「いま」と「これから」を知るためのカンファレンスに参加してきましたので、そちらは次回以降にお伝えしたいと思います。

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