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「デザイン経営」と3Dプリンティングの役割は?掲載日:2018/07/18

先日、経済産業省・特許庁が今年5月に公表した『「デザイン経営」宣言』について知りました。最近よく耳にする「デザイン思考」や「デザインシンキング」ともつながっているようですが、3Dプリンティングとの関係を探ってみると...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

『「デザイン経営」宣言』とは?

先日弊社の営業員を通じ、弊社のお客様も関わられた『「デザイン経営」宣言』について知りました。
これは経済産業省・特許庁が昨年7月から今年5月まで、「産業競争力とデザインを考える研究会」として有識者による11回の会合が開かれ、その報告書として2018年5月23日に公開されたものだそうです。報告書は下記をご参照ください。

「デザイン経営」宣言
http://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180523002/20180523002-1.pdf

「宣言」という言葉からは研究会方々の、デザイン経営を日本に広げていく「意気込み」のようなものを感じました。

筆者の個人的な理解と解釈になりますが、まずここでの「デザイン」というのは、「見た目のカタチを考えて創る」という狭い意味ではなくて、企業の価値やイメージを表現して発信する、または技術を商品として「使って役立つものにしていく」手段であり、それを企業経営に取り込んで国際的な競争力を高めていくことを「デザイン経営」としているようです。

また、世の中や消費者の速い変化と技術革新の中で、欧米ではデザインに投資をしたり、デザインを経営の中核にした企業が高い利益や成長力を得ている統計も示され、一方で日本では経営層のデザインに対する認識の低さや、デザイン経営への取り組みの遅れが指摘されています。

具体的な「デザイン経営」の定義は、デザインを活用してブランド力とイノベーション力を向上させることで、必要条件は

①経営チームにデザイン責任者がいること
②事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること

と示されています。

政策提言の中には、この5年間を「デザイン経営」普及の集中期間と定めるとのことで、官民連携で実践と浸透を推進するとあり、単なる「掛け声」ではなく、早く実際に広めて効果を出していくという意図がくみ取れます。

一方で、筆者の正直な実感として、これまでも多くの日本企業は企業の大小問わず、優れたデザインと機能を兼ね備えた製品を数多く世界に送り出し、高い競争力で成功している例も多くあり、ここで言う「デザイン経営」とこれまでの経営とはどう違うのかが今一つピンとこないので、もう少し掘り下げてみたいと思います。

「デザイン思考」は「人間中心」の方法論?

ここ数年「デザイン思考」や「デザインシンキング」という言葉を耳にするようになったり、書店でもそれに関する本がたくさん見られたりしていましたが、ぼんやりとしか見ていなかったので、これを機会に少し調べてみました。

「デザイン思考」は特に新しいものでもなく、約20年前に提唱されてから多くの実践プロセスが作られ、活用されてきたようです。また特にものづくりや商品開発だけの方法ではなく、社会問題含めた様々な解決のために使える方法とのことです。

インターネット上でも様々な解説がありますが、要点としては、これまでの20世紀型の商品開発では、まず新しい技術や利益を出すことが最初にあり、優先されてきたことに対し、デザイン思考ではまず「使う人間」を常に中心に置いて商品開発や問題解決をしていくのがポイントのようです。

具体的な方法としては概ね次のような段階で進めていくとのことです。

①ひとりや、経営や販売の人だけではなく、デザイナーを含めた「チーム」により進める
②まず使う人から良く話を聞いたり、観察、共感することからニーズや問題を見つけ、解決するテーマを決める
③チームでテーマを解決するアイデアを出す
④そのアイデアを、簡単でも粗くてもよいので、早くカタチにして使う人に試して体験してもらい、そのフィードバックからアイデアを良くしていく
⑤機能試作品を作り、使う人による使用テスト、フィードバックによる修正を繰り返す

上記の手順は順番に連続的に行うのではなく、並行したり、行ったり戻ったりを繰り返すという方法のようです。

共通するキーワードとして、「人間中心」「まずカタチにして試す」「実験によりアイデアを検証」が良く出てきます。つまり現代は、使う人の価値観も多様で変化が早く、技術革新も早い中で、これまでのように、作り手が良いと思うものを作りこんで販売するのでは変化に間に合わなかったり、ニーズとずれてしまうので、「使う人」が本当に望むものや体験して良いと感じたことを早く知り、それを満たすアイデアをまず「カタチ」にして試し、それからまたアイデアを出すサイクルを速く回転させることが「イノベーション」を生む一つの方法として成果を上げてきているということかと筆者は考えています。

もっと詳しい読者の方もおられると思いますので、間違っていたり、良い理解の仕方があれば、ぜひ教えていただければ幸いです。

 

「デザイン経営」ための3Dプリンティングの役割とは?

「デザイン思考」や「デザイン経営」は、どうやらそれほど難しい考えや方法ではなく、理にかなっていて、企業の大小関係なく実践できることだと考えています。

特に、「アイデアはまずカタチにして、使う人に体験・検証してもらう」という点については、そのカタチは手に取れるものであれば、紙でも、粘土でもよく「簡単で速い」ことが大事だという情報も見られました。もちろんテストや検証の段階によって適する試作品の材料、機能、品質は変わってくると思いますが、既に日本でも多くの企業や公的・教育機関が、様々な目的で3次元CADや3Dプリンターを持って使われていることから、それらを活用することで「まずカタチにする」ことは、3Dプリンターを使われていない組織より早く容易に始めてみることができるのではないでしょうか。

また、デザイナー(絵が上手に書けるのではなく、「アイデアをカタチにできる人」を企業経営に積極的に取り入れることが「デザイン経営」につながるとすれば、最近3次元データを作れるソフトウエアは無料または安価かつ比較的簡単な操作で使えるようになっていることもあり、デザイナー人材を教育して増やしていくにも3Dモデリング+3Dプリンティングの活用は有効だと考えています。

そういう意味では、弊社でこれまで多くのお客様にご協力いただいて作成公開してきたユーザー活用事例を見返すと、「デザイン思考」にあてはまるケースも多く見られますので、もしこれからデザイン思考、デザイン経営を取り入れようとされる方には、参考にしていただけるのではと思います。

筆者もまだ勉強中なので、これからもっと情報を集めて学んだ上で、皆様にデザイン経営についてお伝えする良い方法を考えたいと思っています。具体的になればこのコラムでもお知らせしていきます。

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