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日本の「世界競争力」と3Dプリンティングの関係は?掲載日:2021/12/15

結局始めから終わりまで新型コロナウイルスにより「異例」な1年になってしまった2021年も終わろうとしていますが、毎年公表されるIMDが作成する「世界競争力年鑑」2021年版では日本の総合順位は64か国中31位で低迷が続いているそうです。これと日本の3Dプリンティング事情の関係を考えてみると...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

世界競争力 日本の総合順位は64か国中31位

結局始めから終わりまで新型コロナウイルスにより「異例」な1年になってしまった2021年も終わろうとしています。このコラムも今回が今年最後です。例年この時期に発表される「今年の漢字」は「金」だそうで、オリンピック・パラリンピックだけでなく、野球や将棋の世界でもこれまでの「常識」ではない方法で厳しい競争の頂点に立つ若い世代の方々を称える意味もあったのだと思います。

もちろん頂点に立つのは個人の力だけでなく、支える方々や社会の仕組み、様々な技術を含めた総合力でもあるとも思います。そこで日本という国の世界における総合的な競争力を知るひとつの目安として、IMD(国際経営開発研究所)が毎年作成公表する「世界競争力年鑑」があり、2021年版は6月17日に下記ウエブサイトで公表されていました。日本の総合順位は64か国中31位で、1992年の1位から1997年の金融危機により大きく順位を下げて以降、徐々に下がる傾向にあるそうです。
https://worldcompetitiveness.imd.org/rankings/WCY

言うまでも無く、スポーツと違い公平なルールや同じ環境での競争でもないですし、今年の結果は新型コロナウイルスによる異例の環境においてではありますが、上記のウエブサイト内にある動画内で上位の国の背景が端的に示されていて、参考までに意訳をしてみました。

・交通、流通が非常に制限された年であった
・その中で国が経済を支援し、この環境においても感染レベルに関係なく国の競争力を維持しようとした
・国がイノベーションや経済の多様化に注目し、感染拡大前の良い政策を更に改善した国が上位になった
・それらの国は感染被害に遭っても競争力の歯車を回し続けた
・テレワークや感染者追跡システムがウイルスへの対抗に役立った
・経済が製造にも人の移動にも、グローバルサプライチェーンにも依存しなかったのがプラスのポイントとなった
・成功のカギは良い政策を持った影響力のあるリーダー

そうみれば確かに上位の国はそれに当てはまり、日本が当てはまらない点が多いように思います。「今年は特別だったから」ということもできますが、新型コロナウイルス感染が解決したとしても、これらのポイントは国だけでなく製造関連企業にとっても国際競争力を高めることに必要なのではないでしょうか?

結果の詳しい解説は三菱総合研究所様の下記サイトが参考になります。
https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20211007.html

世界競争力と3Dプリンティングの関係

次に地域別の主な国の順位を見てみます。

【欧州】
スイス 1位
スウェーデン 2位
デンマーク 3位
オランダ 4位
ドイツ 15位
イギリス 18位

【北米】
アメリカ 10位
カナダ 14位

【アジア】
シンガポール 5位
香港 7位
台湾 8位
中国 16位
韓国 23位

世界競争力順位と3Dプリンティングを関連付けるのはかなり無理があると叱られそうですが、敢えて考えてみたいと思います。3Dプリンティングの活用が盛んで、産業も高い率で成長し続けていると言われる3つの地域で、更に国を含めた産学官がお互いに人もお金も出し合い、連携も盛んな国と周辺国が日本より上位にあることは、全く無関係とは言い切れないと見ています。日本も教育や高速通信普及率などでは優れていますが、「イノベーションや経済の多様化」に転換していけていないこと、企業の投資先が国内より国外に向いてしまっていることなどが順位を下げる背景にあり、それがデジタルエンジニアリングや3Dプリンティングの活用が広がらないことに繋がっていると私見ではありますが、そう考えています。

別の言い方をすると、3Dプリンティングも小さな歯車でしかなく、それだけを回そうとしても競争力の歯車は動かず、でもその小さな歯車があることで「(20世紀型の)製造にも、人の移動にも、グローバルサプライチェーンにも」過度に依存せず、災難に遭っても「イノベーションや経済の多様化」で「競争力の歯車を回し続ける」ことにつながると思っていますし、日本でもそれにつながる小さなことがあちこちで起きてきていると思います。

もうひとつの参考統計として、「ユニコーン企業数」を見てみます。ユニコーン企業とは評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業で、2013年カウボーイ・ベンチャーズ リー氏が作った用語だそうですが、CB INSIGHTS社の下記ウエブサイトによると今年12月現在で世界で900社以上あり、国別で数えてみると一番多いアメリカで478社あったのに対し日本は6社でした。この差の背景の一つはベンチャーキャピタルなどの投資額が日本では非常に少ないことにあるそうですが、このようなお金の回り方の違いも国の競争力、ひいては3Dプリンティング市場の差につながっているとも考えています。
https://www.cbinsights.com/research-unicorn-companies

こういった状況を変えてくのは国だ、大企業だという意見もあるでしょうが、日本の中小企業が連携したり、日本で起業、新製品開発して、売るのは市場のある海外という動きも出てきていて、このようなことが速く変えていく力になるのではと思っています。

来年は「元通り」になるというより、「変わって良くなる」年になることを願いつつ、新しい年を迎えたいと思います。今年も1年コラムをお読みいただきましてありがとうございました。

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