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製造ビジネスの今年のカギ「3つのA」とは?掲載日:2022/02/16

日本での3Dプリンティングの話題は、製造業界でも一般メディアでも「新しい」「未来」のトピック的に取り上げられることが多いようですが、海外では経済関係メディアで「普通」の話題として取り上げられているのをよく目にします。その例として、製造ビジネスの今年のカギ「3つのA」という記事があり、それは...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

製造ビジネスの今年のカギ「3つのA」とは?

今月に入ってから、今まで以上にコロナだけでなく、国際政治、スポーツ、社会経済と大きなニュースが多く飛び交っていて、追いつくのが大変です。それに比べれば3Dプリンティングに関するニュースは少なく小さいですが、特に日本では製造業界でも一般メディアでも「新しい」「未来」のトピック的に時々取り上げられることが多いようです。一方海外では毎日国内より桁違いの数のニュースがあり、更に違うのが経済関係メディアで「普通」の話題として取り上げられているのをよく目にします。その例として、IndustryWeekというアメリカのメディアの記事で、製造ビジネスの今年のカギ「3つのA」という話題がありました。内容は下記をご覧ください(英文のみ)。

https://www.industryweek.com/technology-and-iiot/article/21214112/additive-agility-and-automation-a-2022-triple-threat

3つのAはAgility(アジリティ 機敏性)Automation(自動化 ここでは特に協働ロボット)Additive(付加製造 3Dプリンティング)ということですが、この記事を3Dプリンティング業界の「中の人」が書かれたのなら3Dプリンティングを「無理に入れた?」と勘繰ってしまいますが、この記事はCADシステムSolidworksとOnshapeの創業者Jon Hirschtick氏が書かれていて、消費者、労働者、社会の速い変化に機敏に対応するという広い視点で書かれており、実践例として流体制御機器メーカーDixie Iron Works社が市場に速く製品投入するため、設計者全員ににクラウド上で共同作業が出来るCADと、現物で設計を吟味するため3Dプリンターを全員に与え、家でもどこでも開発設計業務を行えるようにしたと述べられています。

世界経済フォーラムの白書でも

もう一つの例として、「世界経済フォーラム(WEF)」の白書をご紹介します。世界経済フォーラムは「グローバルかつ地域的な経済問題に取り組むために、政治、経済、学術等の各分野における指導者層の交流促進を目的とした独立・非営利団体」ですが、みなさんもニュースで聞かれたことがある「ダボス会議」はその年次総会です。そのウエブサイトで様々なテーマの白書を公開、PDFダウンロード配布しています。そのひとつで今年1月21日に「An Additive Manufacturing Breakthrough: A How-to Guide for Scaling and Overcoming Key Challenges」が下記ウエブサイトで公開されました(英文のみ)。

https://www.weforum.org/whitepapers/an-additive-manufacturing-breakthrough-a-how-to-guide-for-scaling-and-overcoming-key-challenges

「付加製造(AM、3Dプリンティング)の活用を広げ、カギとなる課題を克服するためのガイド」ということで、ここで注目すべきは、海外では「世界的経済」のひとつの要素として3Dプリンティングが認識され注目されていること、またおそらく書き手も読み手も「新しく、それはどんなもので、使えるものなのか?」ではなく、「どう使えばよいか」という段階にあるのが分かることです。

内容は全てお伝え出来ませんが、第3章の「AMを(企業に)取り入れるためのベストプラクティス」で下記の4点が挙げられています(筆者要約)。

①AMを学ぶには簡単、小さいことから始め、経験のサイクルを繰り返して徐々に複雑高度なことに達すること

②「技術として押し付ける」のではなく、顧客のニーズ、自社のビジネスを伸ばすニーズにより「引っ張られる」テーマで上記サイクルを回すこと

③広い範囲のAMプロセスチェーンを作ることが必要なので、自社の経験や知識の足りないところを埋めるため、社外の研究者、AM装置メーカー、AMサービス提供者とできるだけ協働すること

④はじめに目的や計画を含む戦略と組織を作り、進めながら変えていき、それを経営陣が人材と資金の面でサポートすること

これらは海外の他の記事や書籍にも共通することも多いですが、とても簡潔にまとめられていて参考になります。実は前回のコラムでご紹介した、筆者も参加したTCT Japan 2022内でのパネルディスカッション「 ビジネス志向で考えるAM活用 」で話されたポイント「面倒な試行錯誤(サイクル)は必要」「ビジネスモデル出来てから装置を買うべき」「難易は会社(経営陣)でコア技術と位置付けるかによる」「外注含め使えるものを使ってレベルアップ」などと上記4点に近いことから、パネリストの皆さんの見識は海外での認識と近かったことにあらためて気づきました。筆者の経験でも3Dプリンティングの活用方法は百者百様で、「3Dプリンターを買えばだれでも同じことが出来る」わけではないので、他で簡単にまねのできないビジネスに出来る、それが3Dプリンティングの良いところでもありまずが、成功への方法は企業の大小や地域に関係なく、共通していることも多いことがわかってきています。海外の話題も「それは海外のことだから」と頭から決めずに、ぜひ参考にされることをお勧めします。

アジリティのための3Dプリンティング活用の国内事例

国内でも、ソニーの新規事業支援プログラム「Sony Startup Acceleration Program」は正にアジリティを実現している例だと思いますが、支援を受けた方のストーリーを拝見すると、開発の早い段階で「使用者に体験してもらう」ためのモデルを速く複数作るのに3Dプリンティングが使われたケースが見られます。

また、弊社丸紅情報システムズ株式会社でも1月26日にニュースリリースをしました「ブラザー工業株式会社によるデザインファクトリー導入事例」でも「現場ですぐに設計者が量産材料で試作→小ロット生産できる未来の設計スタイルを実現」という製品開発と製造両方のアジリティを目指して社内設備整備をされた事例もあり、このような情報も参考にしていただければと思います。

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