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日本の3Dプリンティングに足りないものは?掲載日:2022/10/03

前回のコラムでご紹介したイベントに参加し、はじめてや久しぶりの方々とお話が出来、勉強になることが多かったのですが、よく出て来た話題が「日本の3Dプリンティングに足りないものは?」だった気がします。それはどのようなことかというと…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

日本の3Dプリンティングに足りないものは?

まだ夏のような暑さの日が残りながらも、官公庁や日本企業の多くは上期から下期へ移る時期となりました。感染症は収まりつつあるも、収まらない国際紛争や暴動、急な円安、物価高騰、自然災害など、次々起こった困りごとの一方、スポーツ界では、若い世代の方々が軽々と大記録を塗り替えるニュースもいくつかありました。

そのような中で「分断」「賛成反対真っ二つ」「世代間ギャップ」という現象や言葉が多く聞かれる気がしています。人類の長い歴史でも分断と融合は常に繰り返されてきたので、無くなりはしないものだと思いますが、どちらかに分かれて争うことが比較的少なかった日本でもネットや現実で増え、むしろ「中庸」「融合」が悪いような風潮さえ感じることがあります。

ものづくりの世界でも「アナログかデジタルか」「2次元か3次元か」「内製か外注か」「国産か海外産か」など、様々な意見対立軸がありますが、「日本の3Dプリンティングに足りないものは何か?」という30年来の課題の背景にも多くの対立があり、その解決には「融合」がキーワードになると考えるニュースや機会がありましたのでお伝えしたいと思います。

まずご存じの方も多いと思いますが、株式会社ニコン様が下記を発表されました。
https://www.jp.nikon.com/company/news/

2022年9月2日
「ドイツ SLM 社の増資の引受け及び同社に対する公開買付けの実施に関するお知らせ」

2022年9月14日
「米国のOptisys, Inc.への出資に関して」

2022年9月14日
「米国のHybrid Manufacturing Technologies Global, Inc.への出資に関して」

3社とも金属3Dプリンティング関係企業ですが、下記の説明資料によれば、
https://www.jp.nikon.com/company/news/2022/slm/pdf/20220902_j04.pdf

「本買収の意義 当社は、本買収を通じて、世界中の顧客に革新的なものづくりのソリューションを提供し、金属AMの分野における世界的リーディング・プレイヤーを目指す。また、デジタルマニュファクチャリング事業を戦略事業と位置付ける現行中期経営計画の一層の推進を目指す。」

とあり、このことは、「自前主義か協業主義か」「トップダウンかボトムアップか」「国産か海外産か」などを融合するような動きであり、日本の3Dプリンティングに足りないものを埋めるヒントやきっかけになるのではと考えています。


「フォームネクストフォーラム 東京」でも「足りないもの」が話題に

前回のコラムでもご紹介した「フォームネクストフォーラム 東京」が2022年9月27- 28日に開催され、筆者も参加してきました。

公式ウエブサイト https://formnext.mesago.com/frankfurt/en.html

主催者速報によると65社(海外5カ国含む)の出展、1000名以上の来場者があったとのことです。実際会場には3Dプリンティングに高い関心を持たれている方々が多く来場されているようでした。特に金属関連の装置やサービス、また金属、樹脂、セラミックなど多様な材料メーカーの出展が多かったように思います。一例として、世界的なMIM製造サービス企業で、アメリカではDesktop Metal社金属BJ量産用Productionシステムを世界初導入され、筆者も訪問見学したIndoMIM社が、自社用に社内製造する多種の金属粉末を、株式会社Pogli社が日本でも販売されるとのことで初めて出展され、PBF、BJ、MIMのそれぞれの特徴を示す様々なサンプルを展示されていました。(写真は許可を得て筆者撮影)これも「国産か輸入か」「どの工法が優れるか」という対立ではなく、適した工法と材料を融合させることが大事であり、また出来る環境になってきていることを示していると思います。

img_3D_20221003_02.jpg

また会場内セミナーでは、国内産学のトップランナーの皆様が、工業、建築、フードの多様で深い内容の講演をされ、また3Dイノベーションハブ(3DiH)と3Dプリンターメーカー5社によるパネルディスカッションは、表向きではない、現状課題と打開策について熱いトークが繰り広げられ、大変勉強になりました。

その中のひとつで、今年4月に会社設立された、One Addtitive 合同会社 CEO 辻様のご講演では、日本でのAM普及の障害を考えるのに、「大切なのは現場のエンジニアが実際どう感じているかを知ること」で、独自調査分析によると、現場の課題として「素材の製造ノウハウやデジタルを活用した製品設計の知識習得と人材育成不足」があり、それはAMが素形材と形状を同時に作る工法でありながら、ユーザーの多くはこれまで「形状を作る」層であり、「素形材の知識、品質管理が不足しているが、それを外部人材で補うのも流動性が低く苦戦している」との分析でした。このことは筆者も共感すること大で、加えて言えば販売する側にも言える重要な課題だと思っています。

そのような実経験や調査分析から、「3Dプリンティングの材料・造形データ管理サービスソフトウエア」を自社開発、今後販売されるとのことで、これまで担当者がかなりの工数を使いエクセルなどで管理、記録している材料在庫と使用の管理を容易にし、かつこれまで別々だった材料管理データと装置管理データを一元管理、見える化、記録するものであり、これも現状分断していることで問題になっている「材料と装置の管理」「現場と経営管理者の情報」を「融合する」ことで課題改善につながるツールだと思いました。実際樹脂でも金属でも、期待したモノが出来ない、不具合が起きる原因を探ると「材料管理の問題」であることが多々あります。

最後に、会場にいて筆者が少し残念だったのは、来場者、出展者、講演者の中に若い世代の方がとても少なかったと感じたことでした。日本の3Dプリンティング業界も約30年の積み上げである程度拡大成熟してきたことは良いことですが、若い世代の方々に「意外と難しい工法」「期待感のない工法」などと捉えられてしまっている、もしくは企業や学校が若い方を外に出したがらない、また余裕がないのかもしれません。国内外の情報では、若い世代の方々がデジタルや3Dプリンティングをこれまでにない使い方で活用している例も多く見られ、「世代間ギャップ」があるのかもしれません。いずれにしても、筆者のような固い頭では思いつかない「足りないものを埋める妙案」を若い方々は持っているかもしれませんし、3Dプリンティングについて広い世代間、また供給者と使用者でもっと対話し、融合することは大事だとあらためて感じました。


「第25回 関西 設計・製造ソリューション展」に出展します

前回のコラムでお知らせしましたが「第25回 関西 設計・製造ソリューション展」が2022年10月5日~7日 インテックス大阪にて開催されます。筆者も6日、7日に参加予定です。

公式ウエブサイト https://www.manufacturing-world.jp/kansai/ja-jp.html

丸紅情報システムズ株式会社ブース:2号館 7-42

製造業向けの3Dソリューションとして、3Dプリンター(Stratasys社)、金属3Dプリンター(Desktop Metal社)の他、3Dスキャナ(Zeiss社/GOM社)、AR技術を利用したインタラクティブ検査ツール(CDM Vision社)といったツールを展示します。

ご来場をお待ちしております。

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