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「新たなグローバリゼーション」と3Dプリンティングの関係は?掲載日:2023/02/21

先日、貿易立国日本の「新たなグローバリゼーション」についてのテレビ番組を見ました。感染症拡大と国際安全保障問題により特に日本の製造業全体が新たに直面している課題について考えさせられましたが、それと3Dプリンティングとの関係はどうかというと...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

「幻肢痛」をご存じですか?

2月も下旬となり、東京でも強風で暖かい日や、また寒い日が繰り返していますが、新型コロナは感染者数の減少によりマスクや行動の制限も減っていく一方、インフルエンザ感染は増えていたり、花粉は例年より多いという話も聞こえてきて、これからどうするかは個人の判断に委ねられていくことになりそうです。

3Dプリンティング界隈でも対面イベントが少しづつ増えて、筆者も自分の判断で行けるイベントには参加し始めています。

そのひとつとして、先日東京で開催された「幻肢痛知ってくださいチャリティー トーク&ライブコンサート」に個人として参加しました。これはストラタシスジャパン様も後援されたことで知ったのですが、ご自身も右腕に幻肢痛を持たれる、株式会社 KIDS 代表 猪俣 一則様が作られた「幻肢痛交流会」が主催されたイベントでした。幻肢痛とは何か、猪俣様の活動、開発された「VR幻肢痛緩和リハビリテーションツール」などについては下記のウエブサイトをご参照ください。

http://mtvr.kazuinomata.co.uk/

まず幻肢痛についても初めて知りましたし、自分もVRツールを体験させていただき、脳と体の不思議さにも改めて気づきました。また、後でわかったのですが、猪俣様は全部品を3Dプリンターで作る筋電義手HACKberryの開発プロジェクトにも関係されていたようで、当時筆者も関わっていた(弊社の事例記事はこちら)ので再びご縁があったことに驚きました。

また、イベント内での展示では、猪俣様がデザイン、設計され、ストラタシスジャパン様がFDMプリンターとTPU92(軟質熱可塑性ポリウレタン)で製造され、実際に使われている「ショルダーパッド」の展示がありました。

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これは右肩から先をなくされた女性が、洋服や子供の学校の式に和服をきれいに着たいという願いから、猪俣様がスマホによる肩の立体形状デジタルデータ作成から、ほぼ自動でパッド形状設計できる仕組みを作られ、できるだけ安価に提供できるようにされた、正にデジタルによるマスカスタマイゼーションを実現されたものだそうです。実際に持ってみましたが、軽く、しなやかで、通気性と材料節約を兼ねた抜き孔もデザインの一部となっている素晴らしい設計だと思いました。このような3Dプリンティングの活用がこれからも増えていくことを願っています。


日本の「新たなグローバリゼーション」

さて、今回の本題に移ります。先日、貿易立国日本の「新たなグローバリゼーション」についてのテレビ番組を見ました。具体的な日本の製造企業大小2社の生の声から、感染症拡大と国際安全保障問題により特に日本の製造業全体が新たに直面している課題について考えさせられました。その中で、これまで日本の製造業が、部品や製品ごとに海外の最適生産地での集中生産や、複雑多層なサプライチェーンを構築管理する「グローバリゼーション」で生産力やコスト競争力を得てきましたが、それが大きなリスクに変わってしまい、「ディグローバリゼーション」、つまり海外1国集中生産から分散、または国内回帰などの動きもあるとのことですが、現実にはどちらか一方が良いわけではなく、「急な変化が起こるのが当たり前として、対応できるようにしておく」との話がありました。また印象に残ったのが、海外有識者のインタビューで、「過去のブロック経済に戻るのは良くない」「グローバル経済が戦争を防ぐ。戦争を起こして経済的に大きな損失になるならば戦争を起こさない」という見方で、「経済」と「安全保障」は互いに影響しあうことを改めて認識しました。

どちらにしても、予想できないリスクを出来るだけ少なくし、急な変化によるサプライチェーンの分断に応急でも対応するには、

・基本のサプライチェーンを単純化する

・サプライチェーンの「複線」「予備線」「応急補修法」を持っておく

ことが考えられますが、まず設計から物流までクラウド含めた分散管理運用するデジタルデータによるチェーンを構築しておくことはその実現手段の一つであり、その「データ→現物」変換の一つとして3Dプリンティングが有効になることがあります。

例えば、ある生産装置の部品がある事情で急に入手出来なくなるような場合、形状3Dデータ、その要件・仕様がCAEの結果でいつでもどこでも引き出せるようにしておけば、そこからDfAM設計・解析、社内3Dプリンターもしくは社外3Dプリントサービスで応急的な交換部品を作り、生産が継続できるようなケースが考えられます。

もちろん初めから3Dプリンティングで部品生産をする場合は、何らかの理由で自社プリンターでの生産が出来なくなった場合でも、自社別拠点、またはプリントサービスの同機種同材料のプリンターと保存済みの造形用ファイルにより短時間で代理生産が出来ることなども一例です。

また、3Dプリンター自体も、装置材料が国産か輸入かで良否賛否が分かれる話も聞きますが、必ずしも日本で使うにあたり海外製のリスクが高いとは言えず、グローバルで広く使われているプリンターでは、部品や材料のサプライチェーンが分散化していたり、自社海外拠点への生産移管や一時的な代理生産が可能になるような点では有利な面もあると思います。

ただ上記も装置を買えばすぐにできるものでもなく、現存チェーンを全部または一気に変えられないのも事実なので、変化が無い時から中長期的にヒト、モノ、仕組みを小さい規模から作り上げていくことは、デジタルであるからこそ必要なのは言うまでもないことでしょう。


JAMMオンラインイベントが3月3日に復活します!

このコラムをお読みの方の中にも参加された方が多くいらっしゃると思いますが、2020年4月から2022年10月まで、11回にわたり開催されてきました、3Dプリンティングに関わる方々の交流オンラインイベント「JAMM」ですが、業界有志の方々と共に筆者も企画から司会進行などに携わってきましたが、一時中断の後、関係協力者のご尽力により、リニューアルして下記の通り復活することとなりました。

Japan Additive Manufacturing Meet-up (JAMM) #12
開催日時:2023年3月3日(金) 13:00~17:00
方法:  ZOOMオンライン
参加無料 募集人数 定員なし 当日参加申し込みも可
主催  JAMM運営局

詳細、プログラム、参加申し込みは下記ウエブサイトをご覧ください。

https://sharelab.jp/event/jamm-12-230303

JAMMは、コロナ禍で3Dプリンティングに関わる人々のつながる機会が減り、それをオンラインで何とかつながるきっかけを作り、売る側使う側を超えて情報知識、アイデアを共有しようと始めましたが、コロナ禍後であっても再開希望の声をいただいたりしたこともあり、ぜひ復活し続けていこうと準備してきました。前に参加された方も、初めての方も、ぜひ多くの方にご参加いただければと思います。実は企画会議の中で、このようなイベントはぜひ若い世代の方々にお任せした方が良いということになり、今回から筆者は後ろで支える役に回りますが、出来るだけ続けて参加し、皆さんとまたいろいろな話が出来るのを楽しみにしています。

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