航空・宇宙分野 3Dプリンター活用事例
ヘリコプターというと、一般には有人のものがよく知られているが、近年その
数を増やしているのが「無人」のヘリコプターだ。
日本国内には2,000機以上もの無人ヘリコプターがあるとされ、水田の農
薬散布、火山観測、地すべりや地質の観測、空撮などで活躍している。バ
イクや自転車、ボートの製造で有名なヤマハ発動機は、無人ヘリコプター
の開発・製造においても代表的な企業である。
1980年ごろにヘリコプターの世界初となる本格的な産業用無人ヘリコプ
ターの開発に着手し、それ以降も開発を重ね、今では高精度GPSを用いた
自律航行する無人ヘリコプターも商品化済みだ。
そんなヤマハ発動機が、このたび無人ヘリコプターの開発にオンデマンド
生産サービスを利用し、DDM(Direct Digital Manufacturing)への第一
歩を踏み出した。回転翼の1部の部品を3次元造形システムで製造した
のだ。
高速で回転する部品であるため重量と重心位置が重要となり、重量調整
方法や組み立て性などの最適化を、1つひとつトライ&エラーを繰り返しな
がら進める必要があった。
「もっとも大きな問題だったのは開発時間と費用でした。樹脂部品の試作
は注型工法でも1ヶ月近い時間がかかってしまいます。今回の2部品を見積
もったところ30万円。トライ&エラーが続くことを考えると、時間・コストとも相
当なものになってしまいます」(長崎氏)
そんなとき知ったのがMSYSのオンデマンド生産サービス。「CADデータを
送付したら1週間後にはモデルが手元に届き、機体実機への組み付け振動
や動作のブレチェックなど、機体のバランス確認がすぐにできました」(八木
氏)。長崎氏は「コストも約80%削減になりました」と、費用とコスト面での圧
倒的な優位性を実感した。
ヘリコプターは多数の部品から成り立っているだけでなく、機体や部品にか
かる荷重応力や空気抵抗なども複雑で、CAE解析などを用いても、実際
はまったく異なった結果となることも多い。そのため実際に組み付けたうえで
のテストが欠かせず、それなくしては「先の段階」に進むことができないのが
現状だ。
今後はテールローターに3Dプリンターを使うことも検討中で、アクセサリなど
のカスタマイズ部品などは、造形したものをそのまま実機に採用するDDM
も視野に入れているという。