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製造ソリューション事業本部

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コンシューマー分野 3Dプリンター活用事例

サーモス株式会社 様


サーモス株式会社
開発部 開発1課 マネージャー 松山 真 氏
開発部 開発1課 丸山 高広 氏

1つのボトルが
魔法びん業界に大変革をもたらす

「一家に1台」だった魔法びん

サーモスの起源は100年以上前に遡る。1900年代初頭、ガラス製の真空ボトルを保護用の金属ケースで被せた、いわゆる魔法びんがドイツで開発された。サーモスはこの人物が設立した会社である。1989年、魔法びんを作っていた日本酸素株式会社がサーモスを買収して「サーモス事業部」とし、2001年に分社化し現在の社名となる。
サーモスは日本酸素時代から数々の画期的な商品を送り出している。代表的なのが1978年の「ステンレス魔法びん」。それまでの「ガラス製」は落とすと割れてしまうのが大きな欠点だったが、ステンレス製は割れないだけでなく軽さも備えており、魔法びんは一気に「ステンレス製時代」へと突入していく。

しかし、魔法びん市場は長いこと成熟した飽和市場であり、大きな変化に乏しい時代がずっと続いていた。松山真氏は言う。
「魔法びんは遠足や運動会などにもっていく『行事用』と認識され、一家に一台しかないのがふつうで、使用頻度も決して高くなかったと思います」
当時、サーモスは魔法びん業界において後塵を拝し、決して満足できる状況ではなかった。1998年、1つの商品の登場が、流れを変える。





“直接口をつけて飲む”という発想

きっかけは、当時いたアメリカの駐在員から送られてきた1枚のファックスだった。
「アメリカでは当時からペットボトルを持ち歩いて飲んでいました。この習慣に合った魔法びんがつくれないだろうかと、ラフスケッチが送られてきたのです」

それまでの魔法びんはコップに注いで飲む方法しか選択肢がなかった。それを“直接口をつけて飲む”スタイルの魔法びんを開発することにしたのだ。
1998年、発売。しかし当初はあまりふるわなかった。1年目の販売本数はわずか1万本。ところが2000年ごろから販売店から型番指名で注文が入るようになる。
「少年サッカーをはじめとするスポーツ時の水分補給の重要性が浸透していったことや、500mlのペットボトルが普及するようになり、持ち歩いて直接口をつけて飲むスタイルが定着していったことが幸いしました」

OLやサラリーマン向けに、スポーツボトルより容量の少ない「ケータイマグ」も発売し、少しずつ支持を得ていく。そしてサーモスは、もう1つのことにも力を入れていく。



ユーザの声をひろい改善、また改善

サーモスが取り組んだこと、それは「徹底的な改良」だった。
「スポーツボトルでは、飲みやすい量が出てくるように、注ぎ口の大きさや角度などを工夫しています。また洗浄しやすいほうが衛生的にもすぐれているので、キャップ部分を分解できるようにしています」

注目すべきは、こうした改良の多くが「ユーザの声」をひろい上げることで行われていることだ。丸山氏は語る。
「運動会やサッカー教室などによく足を運びます。どのように使われているのかを観察したり、何か不満がないか話を聞いています」

こうして、現場から「要望」や「不満」を吸い上げて商品を次々とブラッシュアップ。それがまた支持を得るようになっていた。だが、他社も黙っていない。最初こそ静観していたもののすぐに追随してきたのだ。2006年1月、サーモスはさらなる手を打つ。




写真左が3Dプリンターで造形したサンプル

ボトルのキャップ部分を分解できる


実際に触って確認したい

2000年、サーモスは一度3D CADを導入していたが、依然として大部分の業務を2D CADで行っていた。
「設計段階で何度も検証して2D CADで修正していくという状況でした。金型業者が2Dの図面から3Dデータにしてくれる際も、結局は開発部で間違いがないかを確認しなければいけない。とにかく時間と手間がかかっていました」

2006年1月、サーモスは決断する。新たな3D CADソフトを導入し、同時に3Dプリンター「Dimension(ディメンジョン)」も購入する。
「試作モデルは外部に委託していましたが、もっとも早くて3日はかかってしまう。さらに、外注するとコストがかかるので、試作したくてもできないケースも多い、というジレンマを抱えていました。3Dプリンターは小さな部品であれば数時間で造形可能で、気軽にプリントできる。そこで3Dプリンターも導入することにしました」

3Dプリンター導入後、ついには1台だけでは回し切れなくなり、2008年5月には2台目も導入する。なぜこれほどまでに3Dプリンターが使われたのだろうか。
それは、一緒に開発に携わるマーケティング部に“思い”があるからだという。
『実際に触って確認したい』
「開発部はだいたい頭の中でイメージできますが、設計に直接携わらない部門では画面だけではどうしても実感が湧きにくく問題点も見えにくい。とくに当社の商品は手で何度も触られるものばかりなので試作モデルの重要性が非常に高いのです」

1つの部品をつくる際、サーモスでは3Dプリンターで候補となる何種類もの部品を造形し、1つひとつ実際に組み付けて確認していく。それを何度も何度も繰り返し、OKと判断したもののみを商品に採用していくという。



消費者に選ばれるサーモス

578万本、710万本、1,079万本。
これは2003年、2006年、2009年の携帯用魔法びんの出荷数(全国魔法瓶工業組合調べ)の推移だ。2003年以降、わずか6年の間に2倍近くも市場が膨らんでいる計算だ。

サーモスの商品も毎年のようにその数を増やしている。1年目にわずか1万本だったスポーツボトルは今では他社を含めて年間400万本の市場となり、サーモスでもスポーツボトルだけで年200万本以上も売れるまでに成長し、ケータイマグも同様に年200万本以上も売れる商品に育っている。

2012年、サーモスは3台目の3Dプリンターとなる「Stratasys(当時Objet)Connex260(Polyjet、ポリジェット)」を導入。Dimensionは強度や耐久性、Connex260はデザイン評価や透明樹脂などマテリアルのバリエーション用と使い分け、さらなる改革に着手している。

「独創力」と「改善力」で業界の先頭をひた走るサーモス。多くの消費者から支持されつづけている理由がそこにあった。




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