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産業機器分野 3Dプリンター活用事例

巴バルブ株式会社 様


巴バルブ株式会社
IQCグループ 谷川 健 氏
グローバル開発 田中 友一朗 氏

前代未聞の「3Dプリント焼失中子」という手法
実験に成功し、高まる販売機会の拡大への期待

役員の一言で始まった3Dプリンターを使った改革

「3Dプリンターでこんなこともできるのか──」そんな驚きがあるのが巴バルブの取り組みだ。世界でもごくわずか、日本では巴バルブしか取り組んでいないかもしれないという、極めて新しい使い方だ。それも、うまくいけば企業の業績を大きく変える可能性のある壮大な取り組みでもある。話を聞いたのは谷川健氏と田中友一朗氏だ。巴バルブは「バタフライバルブ」と呼ばれる流体制御用の商品を製造している。管の中に入れ、開けたり閉じたりすることで流量を調節するものだ。大きいものは1m以上もある。3Dプリンターを検討し始めるきっかけは、役員の指示だった。「3Dプリンターで何ができるのかを検討するようにと言われました。最初はCADで設計したものを3Dプリンターで造形するという『試作』で使う方法を考えていましたが、それ以外の使い道を模索し、思いついたのがワックス型をABSで3Dプリンターにより直接生産(DDM:Direct Digital Manufacturing)することでした」。相談した先は丸紅情報システムズ(MSYS)だ。巴バルブは自社のバルブ新製品開発において設計のみをしており、試作鋳造はすべて外注している。その流れは「ワックス成形用型加工→ワックス成形→ロストワックス鋳造→切削仕上げ」だ。このなかの最初の工程であるワックス用金型を、ABSの素材を使って3Dプリンターでつくれないかと考えたのだ。MSYSは強度面、表面の粗さによりハードルが高いと判断。その代わり、新たな取り組みとして進言したのが、アメリカで事例があった「焼失中子」。これこそ日本でほとんど例のない新しい取り組みだった。





前代未聞の「焼失中子」、難航する実験先

セラミック鋳造は、金属型で成形したワックスの周りにセラミックをコーティング、高温で焼いて中のワックスを溶かして空洞をつくり、そこに金属を流し込み、冷却後セラミックを壊して製品を取り出していく。このワックスを3DプリンターによるABS製の焼失中子に置き換え、セラミック焼成と同時にABSを焼失させることで、同じように空洞ができて金属が流し込めるというわけだ。「さっそく鋳造実験を行うためにメーカーに相談しました。ところが、日本国内でそうした取り組みをしたことのあるメーカーは見当たらず、すべて断られました。複数各国の外国鋳造メーカーにも当たってみましたが結果は同じでした」それでもあきらめなかった谷川氏による熱心な説得の末、とある外国鋳造メーカーが実験を引き受けてくれることになる。実験するに当たり、ABS焼失の際に出る発生ガスについて調査した結果、鋳造工場の環境では問題ないことがわかったという。



ABS中子の完全焼失に成功

さっそくバルブ本体のCADデータをFDM Fortus250mcで造形。この際、内部をハッチ状に粗くしたFDM独自の「スパース構造」で造形した。これにより強度を保ちながら焼失もしやすくなるからだ。ABSで造形した中子を、最終「ツリー」形状にして、セラミックコートを行った。「予備実験の際、ABSと周りのセラミックの熱膨張に差があったために、セラミックが割れてしまったことがありました。そこで、セラミックの層を増やしたり乾燥工程を工夫したりするなど職人的な経験を加えることで、強度のあるセラミック型にしていきました」あとは高温で焼いて中のABS中子が完全に燃えて無くなれば「焼失中子」は成功したといえる。焼成は少しずつ温度を上げていき、最終的には約1000度まで加熱する。ワックスであれば脱ろう工程で1時間ほどで完全に溶けるが、実験の結果、前工程までの条件によっても異なるが、ある時間を掛けることによってABSがきれいに焼失することがわかった。セラミック焼成後に金属を流し込む。セラミック型は割れることなく鋳造できた。この結果を受け、巴バルブは3Dプリンター「Fortus360mc」の導入を決定する。ただ、鋳造品に従来と異なる寸法誤差があったことから、Fortus360mc導入後に実験を重ねて原因と対策を探っていく予定だ。





開発期間7割削減で新製品開発も可能に

「焼失中子」によって巴バルブはどう変わる可能性があるのだろうか。「実は、バタフライバルブというのは長い歴史があり、いろんなサイズの標準品がありますが、新製品は年に数品しか開発していません。その理由は、ワックス用の金型をつくるのに1ヶ月かかり、それを何回か修正改造するので、形状を決めるのに1年以上もかかってしまうからです。また、金型など開発にかかるコストも膨大で、それも新開発が少ない原因の1つでした」谷川氏らは、ABSによる「焼失中子」を使った場合の開発期間を試算する。結果は驚くべきものだった。「開発期間は現状から7割減って3割になることが予想されたのです。開発コストも大きく下がり、そうなれば今より頻繁に新製品を開発できるようになる。今まであまり手掛けていなかった特注品も受注でき、売り上げが増える可能性があります」「焼失中子」の実験成功を受け、巴バルブでは試作や量産に使う砂型鋳造への応用も考え始めている。砂型鋳造とは、合成木材などで製作した木型を砂の中に入れて押し固め、型を取り出した空洞に溶けた金属を流し、固まったら砂を壊して取り出すというやり方だ。巴バルブでは、最初の工程の木型の部分を、3Dプリンターでできないかというアイデアが出ており、今後、砂型鋳造でも実験を開始し、さらなる改革、効率化を図っていく予定だ。「我々も役員もABS焼失中子の実験成功に驚いており、Fortus360mcの可能性に非常に期待が高まっています」と谷川氏と田中氏。3Dプリンターという新しい武器を手に、巴バルブは新たなステージに突入しようとしている。



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