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ロボティクス分野 3Dプリンター活用事例

東北大学 様


東北大学
未来科学技術共同研究センター 准教授 大野 和則 氏

人の入れない場所を探索せよ!
異能のレスキューロボットを続々開発

きっかけは阪神・淡路大震災

大野和則准教授は神戸大学などを経て、2005年に田所諭教授とともに東北大学へと移ってきた。田所研究室の研究テーマの柱の1つがレスキューロボットだ。
「この研究室ができたのは1995年の阪神・淡路大震災がきっかけでした。ロボット大国なのに被災者救出のためにロボットがまったく使われていないことにショックを受けた田所教授がレスキューロボットの研究を始めました」
大野准教授は活動に賛同して研究室のメンバーとなり、さまざまなロボットを開発していくが、そのなかで代表的なものが「Quince(クインス)」である。
QuinceはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けて、東北大学のほか、千葉工業大学、国際レスキューシステム研究機構なども参加して研究が行われる。「地下で起こった火災などは、人が奥に入ると巻き込まれる可能性があります。そこで人の代わりに奥に行けるロボットをつくろうと開発されたのがQuinceでした」
形は独特だ。戦車のように全身にクローラー(一般にキャタピラーと呼ばれる)を身にまとい、四つの角には手足のようなものが付いており、大きな段差があるときに四つの足を使って段差を 乗り越えるという設計だ。カメラによって周囲の状況を確認し、無線で遠隔操作をして動かしていく。
そして、7年間のプロジェクトがあと数週間で終わろうかというまさにそのとき、事故が起こる。
福島第一原発。


レスキューロボット Quince(クインス)




抜群の走行性能を発揮

「私たち研究者は、日本で福島第一原発に投入できるのはQuinceしかないだろうというという考えで一致していました」
しかしQuinceには問題が2つあった。1つは遠隔通信。Quinceは無線で遠隔操作を行う設計だったが、原子炉建屋内は放射線を遮るために分厚い壁になっている。そのため有線で対応せざるを得なかった。もう1つの問題は耐放射線特性。放射線の影響によって電子部品が故障したり誤作動を起こす可能性があったが、検証実験の結果、問題がないことがわかった。
原発仕様のQuinceは有線式となったため光ファイバリールのほか、放射線測定器、汚染水調査のための水位計なども付いた。2011年6月24日、2号機建屋内に投入。その後も断続的に投入される。
「走行性能の高いQuinceは急こう配の階段も上り、5階まで探索し放射線量を測定しました。放射線量がわかったことで、作業員を入れる計画が立てられるようになったことが一番大きな成果だったと思います」
そしてこの経験が、のちのロボット研究に生きていくことになる。



続々開発される新たなロボット

Quinceは決してすべてが順風満帆だったわけではない。瓦礫の山の前でどうしても進むことができず引き返したこともあった。そこで開発を始めたのがヘリコプター型ロボットの研究だった。これは、Quinceにヘリコプター型ロボットを乗せて行けるところまで行き、それ以上進めなくなったときにヘリコプター型ロボットを飛ばして探索するというものだ。
マニュアル操縦をせずに済むよう、米国カーネギーメロン大学の研究者らとともに、センシングによる自己位置推定などによって、自動で飛んで探索して戻ってくる自律性を獲得。さらに、電動式ヘリコプターに吸着機構を取り入れ、天井などに吸着して、そこからクモのように下にすーっと下がることで、プロペラ駆動なしで目的の場所に留まることができ、通常10分間しかない現場計測時間を30分に延ばすことに成功する。
「今、犬の機動力に着目して、レスキューロボドッグの研究もしています。ただし、犬が集中できるのは1、2時間で、それ以上だと疲れてしまって反応がにぶくなる。でもここに人がいるんじゃないかとかすかに反応していることがある。その『声なき声』を可視化することができれば、被災者の救助につながるのではと研究をしています」
以前から研究していたもののなかにはすでに商品化されたものもあり、瓦礫のなかのごく狭い場所を探査するために使われる「能動スコープカメラ」はメーカーからすでに発売されている。そしてQuinceもその後、原発用にさらに開発され、現在、重工業系のメーカーが販売している。怒涛の勢いで次々とさまざまな研究成果を上げていく田所研究室。大野准教授はスピード化の陰にはある立役者がいるという。
「3Dプリンターです」


ヘリコプター型ロボット



レスキューロボットドッグ


人に役立つ工学を

「周りの研究者から、『3Dプリンターを導入するとものづくりが変わるよ』と何度か言われていました。私は機械系なのですが、機械加工はものす ごく時間がかかりもっと簡単にできないかとずっと思っていました。そこで2009年にuPrintを導入しました」
大野准教授は、仲間の研究者の言葉の意味をすぐに悟る。「データを流すだけでいいので、『明日までにつくっておいて』と簡単に頼める。センサや計測器を固定するために治具など多くものをつくっていますが、どれもすぐにできてしまいます。開発のスピード感は圧倒的でした」
もう1つ大きな変化は「オリジナルの形」ができることだ。たとえば、先に紹介したレスキューロボドッグの場合、犬の背中に機械を乗せるが、それ までは市販の箱を使っていた。しかしそれでは収まりが悪く、大野准教授曰く「犬に歩くことを拒まれた」ほどの出来だった。そこでCADで設計して3Dプリンターで形状を確認、何度か調整を重ねた結果、犬の身体に密着するようにすっきりと収まり、以前と同じ重量にもかかわらず機敏に動いてくれるようになったという。「将来的には金属など強度があるもの、さらにゴム系の柔軟性のある素 材も使えるようになったら、手を使ってコツコツものをつくることは一切なくなり、データを流すだけでものがつくれるようになると思います」2012年には『次世代移動体システム研究会』多賀城実証拠点(みやぎ復興パーク内)において『Fortus400mc』も導入。田所研究室も共同利用し、ワークサイズが大きくなり、さらにいろいろなものがつくれるようになった。また、地元の中小企業にも格安で使ってもらっており、地域活性化につなげようとしている。大野准教授は「人に役立つ工学」をモットーとして掲げている。
阪神・淡路大震災を教訓にして生まれたQuinceは福島第一原発で役立ち、商品化にたどり着き、さらに世界中で役に立とうとしている。
未曾有の災害だった東日本大震災。その教訓を糧にし、 大野准教授らはまた新たな夢を人々に届けようとして いる。



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