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「DfAM」とは?学ぶには?掲載日:2019/02/19

先月1月に続き、2月も3Dプリンティング関連のイベントが多々あり、筆者も講演の機会を多くいただきました。その中で、「ぜひ1つだけ覚えて帰っていただきたいキーワード」として「DfAM(ディーファム)」をお伝えしています。それは何でどう学ぶのが良いかというと...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

「DfAM」とは?

何か新しいことが世の中に広まるには、それを表す「キーワード」が重要ということを何かの本で読んだことがあります。思い当たることはいくつもあり、「インスタ映え」という言葉を聞いてからインスタグラムを知り、使い始めた方もいらっしゃるかと思います。そう考えると「3Dプリンティング」も「IoT」も技術はかなり昔からあったのに、これらのキーワードがマスコミで多く使われたり、人々の会話でよく出てくるようになると、「それってなんだ?」と調べることがきっかけでその技術や製品を使う人が増え、ビジネスも大きくなってきたと考えられます。

このようなキーワードはどうも英語を使う方々の方がお得意なようで、日本にも海外から入ってくることが多い気もします。ところがその英語のキーワードを日本語にしようとすると、どうもピッタリな単語がなかったり、ゴロが悪かったり、かえって分かりにくくなったりする例も多いと思います。特に3Dプリンティング関係の方々にとっては「業界あるある」ではないでしょうか。

特に3Dプリンティングをお使いの皆様にとっても、AM(アディティブマニュファクチャリング)だのDDM(ダイレクト デジタル マニュファクチャリング)だの、よくわからん用語が飛び交って食傷気味の方も多いのはこちらも十分わかっていますが、それでも日本のみなさんにお伝えしていくのも役目の一つですので、新しいキーワード「DfAM(ディーファム)」を機会あるごとにお伝えしています。

DfAMとはDesign for Additive Manufacturingの頭文字をとったもので、最初に誰が作って発信されたかは正直知りませんが、1年ほど前から欧米からのニュースや講演でよく目にするようになりました。直訳すると「積層造形法のための形状設計」で、意味もほぼそのままなのですが、目的は試作でも治工具製造でも実使用部品でも、3Dプリンティングで作ることを前提として、様々な要求を満たす、またはより良い効果を得るために適した形状を設計すること、またはその技術と解釈して良いと思います。

例えば、比較的よく知られているのは、積層造形法によって必要な足場となる「サポート」をできるだけ少なくするための形状とか、積層方向によって引張強度が異なることを考慮した設計などがありますが、それらはどう学べばよいのでじょうか?

DfAMをどう学ぶか?

DfAM設計技術を学ぶのにはいくつか方法はありますが、他の設計技術と違い難しい点があります。それは、「積層造形」とひとくくりにしていますが、実際は多種多様な工法があり、更にプリンター装置、材料、2次加工まで含めると「最適な形状設計」は千差万別になってしまい、どの積層工法にも「共通万能」な最適設計技術がほとんどないことです。また欧米、アジアの3Dプリンティング先進地域では産学官様々な領域から研究教育機関や学習の場が提供されているようです。

弊社でもこのウエブサイト内で「知る学ぶ 3D虎の巻」の中でDfAMのヒントになる情報をお伝えしたり、FDMで水平方向丸穴を設計するときは、「なみだ型」にすれば内部にサポートが不要でコストや造形時間削減に効果があることなどは下のようなサンプルを使ってお伝えしたりしていますが、

日本では残念ながらかなり情報や機会が少ないことも学ぶのが難しい理由の一つです。

一方海外では発信される情報も豊富で、このようなものから学ぶのも一つの手です。ご参考までにアメリカ ミシガン州のFisher Unitech 社が下記のウエブサイトを公開していました。

https://www.fisherunitech.com/blog/7-design-additive-manufacturing-dfam-principles

「DfAM 7つの基本」というところだと思いますが、ここでも前提は「FDM(材料吐出法)とPolyjet(材料噴射法)に限り」としており、他の工法で当てはまるとは限りません。

図や動画もあり、良くまとめられている一方、すべて正しいとも言えず、足りないところもありますが、参考になることも多いので、筆者が学んだ点を要約してみます。

AMを十分良く使える組織とそうでない組織

良く使える組織は、経営管理層→開発設計者→造形技術者への情報や指示の流れが一方通行ではなく、造形技術者が学んだ良い形状(DfAM)を開発設計者にフィードバックすることでDfAMスキルが上がり、それにより開発設計者が経営管理層にAM活用の提案ができる、双方向の流れが出来る組織。そうでない組織は経営管理層からただAMを使うことだけの指示が降り、開発設計者が従来技術で設計した形状を造形技術者に依頼する。造形技術者はどうにかして造形した結果だけを開発設計者に返すため、DfAMは伝わらず、開発設計者も経営管理層になにもフィードバックや提案をしないままに終わっている。

DfAM 7つの基本

1.「積み上げて」考える

これまでの切削加工は削って作るので、設計も往々にして大きな塊から削って、穴を開けて設計する考えが染みついている。そのマインドセット(基本発想)を逆転させ、目的を満たす形状を「積み上げて」考える。

2.積層方向の設計

工法によって積層方向により強度や表面性状が異なることがあるので、初めからそれを考慮して設計する。サポートが必要な場合も同じ。(斜面角度が5~10度違うだけでかなりの造形時間やコストに差が出る)

3.外輪郭の設計

特にFDMの場合、形状や目的によって積層面の外輪郭を1本または複数の線だけで作ることが出来る。それにより飛行機の羽のような軽量かつ強度のある部品を作ることが出来る。

4.分割と接着の設計

大きい部品や背の高い部品を作る時に、わざと分割して複数個同時造形し後で接着、溶着、締結する方が造形時間、材料コストが大きく減らせる場合がある。また接続部も「噛み合わせ」のような強度を高める設計にすることもできる。ただし、分割を従来の「組み立て」の考えにとらわれたり、分割しすぎると逆効果になることがある。

5.他の部品を併用

例えば使うときに摩耗が懸念されたりする場合は、その部分に金属の別部品を圧入や接着することを考える。磁石なども同じで、他の部品を併用することを予め設計しておけば接着など容易な方法で解決できる。

6.複雑さを最小にする

一般に、使う材料を最小にする形状が良い設計と考えられがちだが、例えばFDMの場合、形状が複雑になることでサポートが必要となり、1つの積層でサポート材と主材を両方作る場合、ノズルの切り替え時間が必要で、その層が多いほど造形時間がかかり、コスト増になることがある。(サイト内の図が分かりやすいです)

7.重要な表面の仕上げを考える

積層方向やサポートの付く付かない面により表面品質は異なる。また精度の高い丸穴が必要な場合は造形後に切削仕上げ加工を行った方が良く、そのための「削り代」を予め設計に織り込む。

 

自習が難しい時は相談が早い

上記はほんの一例ですが、実際にFDMプリンターを使ったり、設計したことがある方はこのようなことを既に自分で学ばれた方も多いと思います。一方でなかなか3Dプリンターに直接触る機会が少ない、または無い方が自習でDfAMを学ばれるのは難しいかと思います。

またDfAMと言っても基本だけでは最適な設計が出来ないことも多く、現実はほとんどの設計が「応用問題」だと思います。そこで、学ぶのが難しい方にとってはやはり「知っている人に相談」が速いと思います。もちろん社内に3Dプリンター技術者がいらっしゃればその方に、いらっしゃらない場合は各地の産業工業技術センター相談窓口に聞いてみるのも良いですし、特定の工法や材料を想定している場合は、それを販売しているメーカーや販社に聞いてみてください。

筆者の方でも日本でDfAM教育を受けていただく機会を何とか増やそうと動いていますので、情報はまたこのコラムでお知らせします。

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