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アメリカで見た3Dプリンティングの「!」 その3掲載日:2017/05/24

3Dプリンティング。近年のブームのおかげで、広く知られ、様々な分野で使われるようになってきた一方で、正しく理解されていなかったり、よくわからなかったり、まだまだ知られていない使い方も可能性もあります。私も日々の仕事で「?」や「!」と思うことがしょっちゅうあります。みなさんもそうかと。

そこで、3Dプリンティングの達人や、これから使おうとされる方にも、3Dプリンティングの「?」や「!」ついて、これからこちらのブログで少しずつお伝えし、また一緒により良い使い方を考えていければと思います。

前2回に続き、3月にアメリカで参加した3D プリンティング会合では…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

ミネアポリスからシカゴへ

前々回、前回はStratasys本社訪問についてお伝えしました。筆者はその後ミネソタ州ミネアポリスからイリノイ州シカゴへ移動しました。

シカゴには初めて行ったのですが、緯度41.85度でほぼ函館と同じとのことで、ミネソタと同じくらい寒かったのですが、それでも平年より暖かいとのことで、晴れれば日中のひなたは暖かく感じました。本ページ右上の写真はシカゴの中心街をミシガン湖畔から見た景色です。

シカゴは近代建築やシカゴ風ピザ(周りが高い土手になっていて、分厚くボリュームがある)が有名でおいしかったのですが、行ったのはそのためではなく、AMUGという会合イベントに参加するためでした。

Additive Manufacturing Users Group Conference (AMUG)

期間:2017年3月19日(日)~23日(木)
主催:Additive Manufacturing Users Group, Inc.
会場:Hilton Chicagoホテル

2011年に3D Systems Users Groupから発展改組された法人。あらゆるAdditive Manufacturing(付加製造、3Dプリンティングと同義)の利用者に対して教育と支援を行う。ユーザーによるユーザーのためのイベントというところが特徴で、申し込めば誰でも参加でき、とてもオープンなイベントです。

今回参加速報1600名、27社協賛となり、初回参加者の増加により昨年の1,100名から大幅増加しました。Stratasys社も最上位スポンサーとして支援しています。

下記パノラマ写真は講演会場の一つですが、期間中関連企業ブース展示や、多数の講演、ワークショップが開かれ、好きなだけ受講でき、ユーザー同士の交流も盛んに行われます。

北米と世界の3Dプリンティングの「いま」は?

AMUGで見聞きし、分かったことはここではとても書ききれませんが、何とか次のようにまとめてみました。

約2年前の「ブーム」による加熱や3Dプリンティングに対する過剰な期待は静まり、もう一度原点に立ち返り、3Dプリンティングの研究開発、教育拡大、活用は着々と進めていこうというのが共通の方向性。

樹脂、金属は共にプリンター、材料共変わらず拡大増加し、加えてセラミックやカーボンなどの新材料用のプリンターも増加し、3Dプリンティング産業全体は変わらず2ケタ規模で成長拡大を続けています。AMUG参加者が約5割増ということも成長度を表しています。

航空宇宙、輸送機器、医療を中心に実用品や治工具生産に3Dプリンティング活用が増えており、欧米では会社方針で3Dプリンティングの活用を推進している企業が多数あり、変わらず先行しているが、アジアでも特に中国、韓国、シンガポールなどで産学官共同の研究教育センターを作るなど急追しており、展示会なども多数開催されています(日本の状況はAMUGでもほとんど話題になっていなかったのが実情)。

その他北米では、スポーツ用品メーカーが実製品部品を3Dプリンティングで製造する例が増えており、例えばUnderArmour社は写真のトレーニングシューズのソールクッションをウレタン樹脂で3Dプリントし、昨年ネット上で限定発売したところ、15分で完売。開発者によれば、これは単なる見た目や話題作りではなく、アスリートの動きを計測解析し、従来より長時間トレーニングしても足への負担が少ないという効果を実現するためのカタチと材料で、実際効果もあったとのこと。好評につき第2弾をAMUG直後に発売しました。

航空機エンジンになぜ3Dプリント部品を使うのか?

世界の3Dプリンティングの「いま」を知るのにとても印象に残ったのは、General Electric(以下GE)社が設立したGE Additive社副社長の講演でした。

GE社は自社製品の航空機エンジンなどに3Dプリンティングを活用するための専門拠点を設立、研究と実践を続けており、その成果を積極的に公開しています。良く知られた例で、航空機エンジンの燃料噴射ノズルを従来工法では20部品必要だったものを、金属3Dプリンティングで1部品化し、加えて部品寿命は5倍、重量は25%減を実現しエンジンの燃焼効率も向上するとのこと。熱交換器でも大きな性能向上が実現できるため、今後の全ての熱交換器に3Dプリント部品を使うとのこと。

また今後10年間でGEグループ内に10,000台の3Dプリンター導入する目標を公言しています。また社内利用だけでなく、それらの設備とノウハウを社外に販売するとのことです。

なぜそれほどまでに3Dプリンティングを活用するのかは、上記の例にあるように、従来ではできなかった部品削減、重量削減と寿命や性能も向上するような設計を可能にする方法が3Dプリンティングであると、とても明確でした。一方、「作る」のは容易ではなく、相当の研究開発が必要であったとのことですが、「まず失敗し、先に進む」という考えで実現してきたそうです。

3Dプリンティングの「これから」と日本は?

よく日本で、「3Dプリンティングは欧米が進んでいて、日本は遅れていますね」という声を良く聞きますが、筆者はそうは思っておらず、欧米と同じ方向に進むのが必ずしも良いとも考えていません。

一方、3Dプリンティングの使い方や、産業規模としては確かに欧米と日本では「違う」のはほぼ間違いがなく、それは、3Dプリンティングはあくまでモノをつくる道具の一つであり、ものづくりの方法や流れが違えば、道具の使い方も違って当然だと考えています。

一方、言うまでもなく、日本の産業も経済も日本の中だけではなく、世界の中で動き、世界の企業と競争していかざるを得ないことを考えれば、海外企業が3Dプリンティングをどう使うかは常に知っておく必要があり、良いところは取り入れ、良くないところは日本独自の改善をしていくことで、賢く3Dプリンティングを使いこなしていくことが必要なのと、作ること以上に「設計」をどうよくしていくかが大事だと再認識した出張でした。

最後に、AMUGの展示ブースで、買えないけれども一番欲しいと思ったのは、Cincinnati社が開発した超大型プリンターとカーボン繊維入り樹脂で車体を作った電気自動車で、動画では見たことがあったのですが、実際に見て、ますます欲しくなりました。でもやっぱり買えないし、乗れないし、置くところも無いのが残念…

ではまた次回に。

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