製造ソリューション事業本部

TEL : 03-4243-4123

なぜ宣伝会議賞のトロフィーが3Dプリンティングで?掲載日:2017/06/06

3Dプリンティング。近年のブームのおかげで、広く知られ、様々な分野で使われるようになってきた一方で、正しく理解されていなかったり、よくわからなかったり、まだまだ知られていない使い方も可能性もあります。私も日々の仕事で「?」や「!」と思うことがしょっちゅうあります。みなさんもそうかと。

そこで、3Dプリンティングの達人や、これから使おうとされる方にも、3Dプリンティングの「?」や「!」ついて、これからこちらのブログで少しずつお伝えし、また一緒により良い使い方を考えていければと思います。

今回の話題は、広告業界で歴史と権威ある宣伝会議賞のトロフィーが初めて3Dプリンティングで作られました。その理由とそこから学ぶことは…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

宣伝会議賞とは?

みなさんは「宣伝会議」という月刊誌をご存知でしょうか?

広告宣伝業界で長い歴史もあり、有名な雑誌です。

以下宣伝会議ホームページからの引用です。

 

”1954年、日本初の広告マーケティング専門誌として創刊。広告を中心に販促、PRと企業のマーケティング・コミュニケーション活動を扱う専門誌です。 「マーケティング&クリエイティビティ」をテーマに、最新の理論や手法、事例を紹介。売上の拡大、企業ブランド向上に役立つ知識と情報をお届けします。”

その宣伝会議社が毎年開催している「宣伝会議賞」というコンテストイベントがあります。
以下宣伝会議賞ホームページからの引用です。

 

”宣伝会議賞は、広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたはCM企画という形で応募いただく公募広告賞です。”

昨年第54回が開催され、もちろんプロのコピーライター、広告関係者の応募が多いのですが、中高生部門もあり、一般のだれでも応募できるという開かれたコンテストです。

すごいのはただのコンテストではなく、課題が協賛企業から実際に広告したい商品やサービスのコピーやCMを考えるということで、応募作品が実際の広告に使われることもあるそうです。

ただし、賞を勝ち取るのは簡単ではありません。先回の応募総数は40万点を超え、第一線で活躍中の一流コピーライター、クリエイターの方々が審査され、グランプリは選び抜かれた1点のみ。どれほど受賞が難しいか、お分かりになると思います。

そのような歴史と権威ある賞ですが、54回目の先回初めてトロフィーが3Dプリンティングで作られ、今年3月10日の表彰式で受賞者に授与されたのです。

筆者はこのトロフィー製作プロジェクトに関わったので、表彰式にご招待をいただきました。

初めてトロフィーが3Dプリンティングで作られたのはなぜ?

今回、一般部門のグランプリ 、コピーゴールド、CMゴールド 、眞木準賞の各1名ずつ、計4名の受賞者に授与されたトロフィーです。

(筆者撮影)

写真のトロフィーはレプリカで、受賞者名はダミーです。上の正8面体がトロフィーで、グランプリは1辺100mm、他の3賞は70mmです。台座にピタッと乗せられるようになっていて、簡単に手で持てるようになっています。台座には賞名と受賞者名が刻印され、世界で1つしかなく、受賞者だけが受け取れるものです。台座の他の面にも宣伝会議賞や宣伝会議誌のロゴが刻印されています。

これを作った3Dプリンターは「Stratasys J750」。インクジェット方式のフルカラープリンターなので、今回の台座のように印刷ではなく、擦れても消えない文字として刻印ができたり、解像度が高いので、滑らかな面やシャープなエッジができることが特徴です。

実は、このトロフィーがなぜ、どのように作られたかが、宣伝会議2017年5月号 64-65ページに特集記事として掲載されています。もしご興味があれば、バックナンバーご購入の上読んでみてください。

主役は人とデザインと3Dデータ

今回のトロフィー製作に至った背景を簡単にお伝えします。

株式会社フジテックス様は「環境商社」として環境機器、販促資材など様々な商材を扱われております。実は弊社本社と同じビルに入居されていることでご縁が出来、今回のトロフィー製作協賛プロジェクトを企画運営していただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

アーティストであり、2020年東京でのスポーツイベントの大会エンブレムをデザインされた野老朝雄さんが今回の宣伝会議賞の公式ロゴマークとトロフィーをデザインされることが決まっていましたが、本プロジェクトの主旨に共感していただき、トロフィーを3Dプリンティングで制作することが決まりました。

野老さんは様々な工法による作品、商品を創作されてきましたが、3Dプリンターを弊社ショウルームで初めてご覧になり、仕組み、材料、利点欠点を知っていただいたことで、3Dプリンティングを活かしたトロフィーをデザインされました。

その後筆者も含めた関係者で何度も打ち合わせし、アイデアを出し合い、「宣」の字をモチーフにした宣伝会議賞ロゴマークを立体化するデザインに。頂上から見るとロゴマークが浮かび上がります。

このプロジェクトから学ぶ大事なことは、野老さんが3Dプリンティングの特性や価値を理解され、それを前提に特性を生かせるカタチを生み出された創造力と、そのデザインを3Dデータに出来たこと。あくまで主役は人とデザインと3Dデータで、3Dプリンターはそのきっかけと、最後に作る部分を担った「脇役」であったということで、これが3Dプリンターの本来の、大きな価値だと考えています。

トロフィーに込められた想い

このトロフィーにはカタチだけではなく、いろいろな意味が込められています。まず野老さんは、現在使える最新プリンターと材料を出来るだけそのまま使うことで、「今」という時間を表現できると考えられ、敢えて後仕上げをせず、プリントのままの表面とされました。

また、トロフィーを黒1色にしたのは、印刷インクでも黒は最も時間がたっても変わりにくいとのことで、記念として長く飾ってほしいとの想いがあったそうです。

その他に、デザインを決める前にラフな形状でモックアップを作って実際に持ってみた結果、グランプリは賞の重さを実感できる「重量感」を出したほうが良いとなり、トロフィーを上下2分割でプリントし、中に金属の錘を入れて接着封入する構造にしました。

表彰式の記念撮影のとき、並ばれた4名の受賞者の皆さんが、トロフィーを見せ合いながら微笑んでいらしたのを拝見し、筆者もうれしく、またホッとした気持ちになりました。

トロフィーから学ぶ、DDM成功のカギは?

このトロフィーは、最近徐々に広がりつつあるDDM(Direct Digital Manufacturing,3Dプリンティングによる実用品直接製造)の例と言えますが、このプロジェクトを通じ、他のDDMにも役立つ成功のカギを学ぶことができます。

①3Dプリンティングを知り、プリンターと材料を決めてからデザイン、設計をする方がより良い

デザインや設計をほぼ終えてから3Dプリンターや材料を選ぶことがあり、それでも良いのですが、今回も初めに3Dプリンティングの原理、特性、利点欠点をみんなで共有してからデザインを始めましたので、プリンターの良さを活かしたモノを作ることが出来ました。3Dプリンターは脇役ですが、それを活かすにはまず知ることが大事です。

②3Dプリンターだけでなく、いろいろなものを組み合わせてみる

3Dプリンターにも他の機械と同じく、出来ること出来ないこと、得意なこと不得意なことがあります。よって、必ずしも3Dプリンターだけでモノを作ろうとするとうまくいかないことがありますので、例えば安価な金属部品を組み合わせてみる、敢えて分割してプリントしてから接着するなど、ひと工夫することでより良いものができることがあります。

③デザインの初期に、まず作って現物で評価共有する

大まかな大きさやカタチがきまったら、まずモックアップを作って、立体物を見て、持ってみて、動かしてみてデザインと設計を練り上げていくと、新しいデザインやより良いカタチが生まれたり、特に複数人のプロジェクトでは関係者間で「感覚」を共有することが出来、より速く良いものが作れます。

今回のトロフィーのように、独創的なデザインで、1つだけ、または少量だけのモノを作るのにDDMは大きな価値を生み出します。みなさんのお仕事、生活の中でもDDMが役立つことがきっとあると思います。ぜひ探して、試してみてください。

ではまた次回。

3Dプリンターのことなら
お気軽に当社へ
お問い合わせください

TOP