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全日本学生フォーミュラ大会は今年もアツかった!掲載日:2017/09/21

3Dプリンティングに携わる仕事の中で出会う、様々な3Dプリンティングの「?」や「!」ついてお伝えするコラムです。

今年も全日本学生フォーミュラ大会が開催されました。丸紅情報システムズ株式会社は3Dプリンティングによるレース車両搭載部品の設計、製作支援により今年も2チームを協賛しましたが、その結果は…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

全日本学生フォーミュラ大会とは?

今年で第15回となりました「 全日本 学生フォーミュラ大会 -ものづくり・デザインコンペティション-」(主催:公益社団法人自動車技術会)が2017年9月5日(火)~9日(土) 、エコパ(小笠山総合運動公園・静岡県)にて開催されました。

大会ホームページはこちらをご覧ください。

大会趣旨をホームページから以下に引用します。

主役である学生が自ら構想・設計・製作した車両により、ものづくりの総合力を競い、産学官民で支援して、自動車技術ならびに産業の発展・振興に資する人材を育成する。

国内だけでなく、海外含めた大学、短大、高等専門学校、専門学校によるチームが参加して、ほぼ1年間かけてレースカーを開発設計製作し、走る競技だけではなく、設計、デザイン、プレゼンテーション、燃費など様々な競技の総合得点で順位を競います。事前審査を通過した94チームが参加、内10チームが電気自動車でした。

今年の結果はこちらをご覧ください。

筆者は9月9日最終日に大会会場に行きましたが、晴れてとても暑く、それ以上に競技は白熱して、学生の皆さんの熱意や、感動の涙も見られ、とてもアツい1日でした。

今年の結果の特長として、これまで総合上位に上がれなかった電気自動車ですが、名古屋大学EVが、内燃機関の強豪を抑えて4位に入るなど、電気自動車が着実に進歩しており、市販乗用車同様、電気自動車が内燃機関と同等以上の性能になる日も近いと感じました。

名古屋大学EV

 

 

協賛チームの結果 ①東京理科大学

東京理科大学は昨年に続き、空気をエンジンに取り込むためのサージタンクとそこからエンジンの4つの気筒に空気を送るパイプをFDM(熱溶融積層法)の樹脂3Dプリンター「Fortus」により製作、車両に搭載し、昨年の総合20位から大きくジャンプアップし、総合9位を獲得、日本自動車工業会会長賞も受賞されました!

サージタンクは昨年の経験と知識を活かし、また流体シミュレーションによる最適な内部形状から、ABS樹脂での3Dプリンターで作ることを前提に、当社からのアドバイスを受けて3次元CADで設計、そのデータから丸紅情報システムズが造形、それを大学の方で黒色に塗装しました。タンクは規定上の限られたスペースに収まる形状で、従来金属板を曲げ、溶接して作っていた時にはできない滑らかな形状で、エンジン性能も向上したとのことでした。

インテークパイプは、今年初めに新発売となったFortus用新材料「Nylon12CF(カーボン短繊維含有強化ナイロン12樹脂)」を初めて採用し、エンジンとサージタンクをつなぎ、ガソリンを噴射するインジェクタ取付け部を一体化した、金属加工では難しい曲線パイプを作りました。材料の特長である高と耐熱性、耐薬品性により、ジョイントホースの金属バンドによる締め付け力にも耐え、エンジンに近いにもかかわらず問題なくレースを終えることが出来、学生の皆さんもその性能に驚かれていました。

 

協賛チームの結果 ①東海大学

東海大学は丸紅情報システムズが3年連続で協賛し、今年もサージタンクと、V型2気筒エンジンに空気を分配するパイプを同じくFortusにて製作しました。こちらも昨年総合35位から今年は26位と大きく順位を上げられました。3年ぶりにエンデュランス競技を完走できたことで、チームの皆さん、リーダーは終了後感動の涙を見せておられました。

サージタンクは同じくABS樹脂で造形後、大学の方できれいにカラー塗装されました。丸紅情報システム(MSYS)ロゴとチーム名ロゴは立体文字で一体造形され、目立つようにわざわざ別色で塗装していただきました。過去2年で蓄積された設計ノウハウから、空気の圧力によりタンクに生じる応力をコンピュータ解析し、その結果から最適な位置にリブを設計したことがよい結果につながりました。タンク容量も小さくすることでエンジン応答性向上につながったとのことです。

 

インテークパイプは東京理科大学同様Nylon12CF材料を採用し、インジェクタ取付け部位一体、曲線パイプとしました。V型2気筒エンジンにつなげるため、左右別に最適形状となっています。

 

 

DDMは利点を生かし、欠点を補う最適設計が成功のカギ

協賛した2チームがそれぞれ好成績を上げられたことで、微力ながらかかわった人間としてもほっとしたと同時に、実際にレースという厳しい環境で、樹脂3Dプリンティングによる部品が実用出来ることがわかり、こちらとしても大変勉強になりました。

一方、他にも3Dプリンティングによる同じような部品を使われたチームがありましたが、テスト中に破損してしまい、接着剤で補修された例も見られました。

これらの結果から、レーシングカー部品に限らず、実使用部品、実使用治工具を3Dプリンティングで直接生産するDDM(Direct Digital Manufacturing)を成功させるためのカギを学ぶことができます。

①企画構想の段階から、3Dプリンティングについて知り、DDMのメリットが出やすい部品を選ぶ

今回協賛した2チームとも、基本的な車両のレイアウト、部品構成の段階から3Dプリンティングについて当社で学んでいただき、一緒にどの部品をDDMかするかについて検討しました。「3Dプリンティングだから何でもできる」というのは誤解で、大きさ、材料が適し、設計の自由度を活かすことで性能向上に大きく貢献する部品を選ぶことで、DDMの利点を最大化することができます。

②解析を活用しながら、3Dプリンティングの利点を生かし、欠点を補う設計を行う

3Dプリンティングで吸気系の部品を作る大きなメリットの一つは、空気の流れ、圧力に適した形状にできることですので、まず流体解析によりおおまかな内部形状を設計し、出来るだけそれに近い形状で設計を行うと効果が大きいです。

またサージタンクは、樹脂で作るとどうしても材料強度により空気圧による変形が懸念されますが、適切な補強外リブを追加すれば必要な剛性が得られます。形状が複雑ですと最適なリブの位置は容易に決められませんので、まずコンピュータによる強度解析から変形が大きくなる箇所を把握し、そこにリブを追加することで、樹脂の強度不足を補うことができます。

このように、従来金属で作られてきた部品も、適切な材料と適切な設計により樹脂3Dプリンティングで製造できることがあります。もちろん軽量化だけではなく、従来出来なかった形状による性能向上も大きな利点となります。

また来年に向け、どのような新しいDDM実用パーツがうまれ、成果につながるのか、筆者も今から楽しみにしています。

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