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3Dプリンティングによる「新しい見せ方」とは?掲載日:2017/09/06

3Dプリンティングに携わる仕事の中で出会う、様々な3Dプリンティングの「?」や「!」ついてお伝えするコラムです。

人間は「目」から多くの情報を得ていますが、文字、画像などから、最近では3D画像、VRなど「見せ方」も多様化しています。そのような中で、特に科学の世界で3Dデータと3Dプリンティングによる「新しい見せ方」が使われ始めています。その例をご紹介しますと…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

国立科学博物館 特別展「深海 2017」

今年の夏は日本各地で天候不順でしたが、みなさんはいかがお過ごしでしたでしょうか?近年異常気象が異常でなくなってきているようで、良くも悪く地球や自然は常に変化していることを今更ながら実感しています。

科学技術研究の発展で人間がわかることも増えてはいるものの、地球や自然については未知の世界の方がはるかに大きいのですが、知らなかったことを知りたい、見えなかったものを見たいという気持ちは、老若問わず人を動かすエネルギーの源で、新しい発見はまた次の発見を生むきっかけにもなります。

「ダイオウイカ」の泳ぐ映像などで「深海の自然」に注目が集まっている中、国立科学博物館で下記の特別展が開かれており、多くの来場者でにぎわっているそうです。

特別展「深海2017~最深研究でせまる”生命”と”地球”~」
会場:国立科学博物館 (東京 上野)
2017年7月11日(火)~10月1日(日)

ここでは主催でもある国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)様からのご依頼により、弊社丸紅情報システムズ株式会社も協力させていただいて出来た3Dプリンティングによる浮遊性有孔虫の模型が展示されています。

丸紅情報システムズFacebookでも紹介させていただきました。

まだ会期が残っていますので、ご興味のある方はご覧になってはいかがでしょうか。

浮遊性有孔虫とは?

「浮遊性有孔虫」のことをご存知でしょうか?本件を通じて初めて知りましたが、すごく不思議な生き物です。

詳しくは、JAMSTEC 地球環境観測研究開発センター 海洋生態系動態変動研究グループ 木元克典様のウエブサイトに詳しく解説されていますのでご参照ください。以下は上記サイトからの引用です。

 

浮遊性有孔虫とは、海洋の表層に生息する単細胞の原生動物プランクトンです。サイズは約0.1~1ミリ程度でとても小さいです。世界で約40種類が知られています。

浮遊性有孔虫の骨格は、頑丈な炭酸カルシウムで出来ています。このため、死んだ後も溶解されずに海底の堆積物の中に保存されます。有孔虫の骨格は、それが生きていたときの海水の水温、塩分、栄養の状態等の物理化学的な状態を記録しているため、海底の堆積物に含まれる有孔虫の骨格の化学分析を行うことにより、過去の海水の状態や地球環境の変遷を復元することができます。

化石も現在捕獲された生体も肉眼ではほぼ見えず、拡大してもその内部構造や、解析された骨密度分布は見えるものではありませんが、JAMSTEC様で作成された3次元データから、Stratasys J750にて拡大立体模型を作り、一般の方にもよくわかる見せ方をされていました。

複雑な凹凸と中空形状と共に骨密度の分析結果色分布を断面に表示して一体フルカラープリントしたり、白い樹脂の薄いところは光を通すことを利用して、殻の薄さをわかりやすく見せることに3Dプリンティングを上手に活用されています。

それにしても、大気中二酸化炭素濃度の増加による海水酸性化がこんなに小さな生物の骨密度を下げ、またその化石から5600万年もの前の地球の変化が観察できる、またそれを発見した方がいることに、驚かされました。

「電子雲」もわかりやすく

展示会場ではケース内の模型を外から見られるだけですが、それでも見る人が自分の見たい角度、距離から自由に見られることで、文字や画像ではわかりにくい情報や知識が短時間に伝わり、もし触ることができれば、更にその情報量が増え、残る印象や記憶も増えるでしょう。

この展示物も丈夫で軽いので、ぜひ今後触れられる模型としてご活用いただけると良いと思います。

同じようにStratasys J750の特長である、3次元データ上の色をそのまま3Dプリントできる、透明材料との複合ができることを活かして、「新しい見せ方」を実現された例を丸紅情報システムズ株式会社ウエブサイトでもユーザー事例として紹介していますので、ご参照ください。

東京大学 物性研究所 計算物質科学研究センター様
株式会社クロスアビリティ様 ご活用事例

原子は原子核の球の周りに輪のような軌道で電子が周っているイメージを本や学校で見て、それが常識だとずっと思っていましたが、実際は電子は原子核の周りの空間に存在し、その存在する確率の高さの空間位置は濃淡のある雲のように表せるそうです。

スーパーコンピュータでその電子雲(電子密度分布)を数値計算した結果から3次元データを作成され、それをStratasys J750で3Dプリントした例が下記の模型です。

これは、炭素原子だけが結合してボールのような構造になるフラーレンの分子模型形状と電子雲をピンクの点として透明樹脂の立方体の中に配置して一フルカラープリントし、表面を研磨して作られました。これにより、電子雲を手に取ってまわしながら見ることが出来、教育で使うことにより「3D映像でモニタ上だけに表示することに比べ、電子雲の状態と分子構造の関連についての理解が深まる」とのことです。

他にも富士山の周りの大気の流れを数値解した結果から作った模型もあります。

これらの良さが写真では伝わりにくいのが残念ですが、今後も弊社ショウルームや展示会で現物をご覧いただける機会を作れればと思います。

 

見えにくいもの、分かりにくいものを3Dプリンティングで見えやすく

他にも医療分野での人体模型など、多くの立体模型が実際に3Dプリンティングで作られ、使われています。

これらも、3Dプリンターが生み出しているのではなく、まず3Dプリンターが出来ること出来ないこと(大きさ、細かさ)、仕組み、材料、コストなどを知っていただいたうえで、「こんな立体物でこんな見せ方ができれば」というアイデアが生まれ、それを3Dプリンティングするのに適した3次元データを作るという、「ヒト」の発想や技術、道具が組み合わされたとき、生み出されます。

いろいろな角度と距離から見る、更に持って触れることにより、知識情報を多く正しく短時間に伝えることができる「新しい見せ方」は、科学技術や医療だけでなく、教育でも、ものづくりの現場でも大きなメリットを生み出しますので、みなさんも3Dプリンティングによる「新しい見せ方」を活用されてはいかがでしょうか?

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