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今年のStratasys 3Dプリンティングフォーラムから見えたことは?掲載日:2018/11/07

2018年10月26日(金)に東京でStratasys North Asia 3Dプリンティングフォーラム Japan 2018が開催されました。ストラタシス社から新製品情報のほか、今回は例年に増して国内外のユーザーから活用事例発表があり、中身の濃いイベントでした。どのような内容だったかというと...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

Stratasys 3Dプリンティングフォーラム とは?

本題の前にお知らせです。

ひとりの大学生が、自身の片耳難聴により「ときどき感じる不便」を自分で解決しようと思い立ってから、得意分野を持つ仲間を集めて、3次元CADや大学の3Dプリンター「Stratasys Connex」を使いこなしながらメガネ型補聴器を短期間で開発し、アメリカでのイベントで好評を得た「asEars(アズイヤーズ)」の話を筆者が知り、ぜひ多くの方に知っていただきたいとの思いで作った記事が弊社丸紅情報システムズホームページ内「Infinite Ideas」にて公開されました。ぜひこちらをご覧下さい。このようなものづくりが、これからの社会やビジネスを変えていくのではと思っています。

それでは今回の本題に移りましょう。弊社丸紅情報システムズ株式会社が正規販売代理店となっている3DプリンターメーカーのStratasys(ストラタシス)社が毎年開催、今回で6回目になったStratasys 3Dプリンティングフォーラムは、東京 紀尾井カンファレンスで2018年10月26日(金)朝9:30から懇親会が終わった夜8時まで開催されました。Stratasys社からの最新情報や国内外のユーザーの皆様からの活用事例のご講演、弊社をはじめスポンサーブース展示があり、長時間ではありましたが、大変中身が濃く、筆者にとっては短く感じられたイベントでした。ご来場いただいた皆様には、この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。

弊社丸紅情報システムズブースでは、既にお客様事例としてこちらで公開させていただいている株式会社トライエンジニアリング様が設計、最近導入されたFortus900mcで作られた、自動車製造現場で使われる手持ち治具などを展示しました。同社の東様からは、どのように3Dプリント治具製造事業「3D-PRINT-JIG」を立ち上げ、拡大されてこられたかをユーザー事例としてご講演もいただきました。

一方、今年はStratasysプリンター製品ユーザー限定のフォーラムでしたので、ご参加いただけなかった皆様には申し訳なく存じますが、いくつかの話題と筆者が感じたことを含め、このコラムでお伝えしたいと思います。

4Dプリンティングから等身大フィギュアまで

今回興味深かったユーザー事例講演の概要をご紹介します。

まず、先回のコラムで4Dプリンティングについてご紹介しましたが、偶然今回のフォーラムでも4Dプリンティングの研究事例が紹介されました。

ニュージーランドのVictoria University of Wellington 校デザイン学部インダストリアルデザイン・プログラム担当ディレクターのRoss Stevens様から、最近の研究成果の一つとして、Stratasys ポリジェットマルチマテリアルプリンターConnexで硬質・軟質の一体造形品に水圧を加えることで「生物」のような動きをするものを作り、カラープロジェクターを連動させ色彩表現を加えた「物体アニメーション」作品Hydrophytesが動画とサンプルで紹介されました。まずは下記ウエブサイトの動画をご覧いただきたいのですが、http://made.ac.nz/project/hydrophytes/

幻想的な映像で、実際には存在しないけれども本当に生きているような生物らしい動きを実現しています。3Dプリンティングに「動き」や「光」という1Dを加える4Dプリンティングのひとつの可能性を見出せる事例でした。

次に、ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社様から、「ドニーテール(Do-nite-ll)」が紹介されました。これは株式会社ケイズデザインラボ様のSUPER SCAN STUDIOとのコラボレーションによる事業で、モデル人物の形状と表面色を高速高精度で撮影して、それを最適に編集して3次元デジタルデータ化し、それからStratasys マルチカラープリンターJ750で出力することで、高品質な等身大フィギュアを制作するサービスとのことです。当日はサンプル展示もありましたが(写真撮影禁止でした)、ちょっとドキッとするぐらいモデルに似ていて、驚きました。もちろんこれまでも同様のフィギュア制作サービスはありましたが、多くは縮小フィギュアで、「等身大」と「高品質カラー3Dプリンター」の組み合わせが新しい価値を生み出すことが新鮮でした。

どちらの事例ももちろん3Dプリンターがあるからこそできることですが、それ以上に人の創造と、3次元デジタルデータを作る技能が重要であり、それがあれば市販プリンターを使っても、他に真似のできないモノやビジネスを作れることを再認識することが出来ました。

多数のユーザー活用事例から見えてきたことは?

今回は前回以上に多くの国内Stratasysユーザーに皆様から活用事例をご紹介いただきました。個々の内容はここではお伝え出来ませんが、ご講演を拝聴したり、懇親会で個別に伺った全体を通じて筆者が感じたこと、また皆さんにお伝えしたいことをまとめてみます。

・一般に、日本での3Dプリンティングの活用は欧米に対して遅れているといわれることがありますが、産業、教育研究どちらにおいても、様々な分野で活用は増えており、また個々の活用レベルは世界的にも同等以上の「使いこなし」をされています。

・活用に成功されているユーザーには、いくつか共通した「コツ」や「ステップ」があるように見えます。1つ目は、いきなり3Dプリンティングで高度な活用に取り組まれたユーザーはほぼ無く、まずは「社内試作品」を作りながら3Dプリンティングの長短所を理解し、次に社内で使う道具や治工具のような「実機能品」を作り、その経験知識から社外に販売する「実製品」を作るステップを段階的に行われています。2つ目は、3Dプリンティングだけで課題を解決しようとせず、元々持っている技術、機械、ネットワークを組み合わせて、品質・コスト・時間=QCDのバランスを目的のレベルまで到達されています。

・特に製造企業では、現状樹脂、金属、ゴム、CFRPを作るために「型」を使っている工程に3Dプリンティングを活用することで利益を得られているようです。単に「型レス化」や金属型から樹脂型への置き換えではなく、設計から加工工程を含めて「創り変える」ことがポイントのようです。。

・一方、3Dプリンティング活用を社内で推進する「ハードル」や「悩み」も共通している傾向があり、組織内、特に経営層の方々や、「変えることに抵抗する」方々から理解や協力を得る苦労や、それを克服されるための努力は共通しているようです。例えば、3Dプリンティングについての情報だけでなく、まずは3Dプリンティングや成果物を実際に見て、使って体験していただくことは大きな効果があるようで、あるお客様では、3Dプリンターブームをうまく活用して経営層から理解を得たり、否定的だった社内の方々に、とにかく3Dプリンターを使う環境を用意した結果、今では3Dプリンターをなかなか手放さない方に変わった例も示されました。同じようなハードルや悩みをお持ちの方々にも参考になるのではないでしょうか。

・日本では海外に比べ、特に活用方法の情報が分散していて、ユーザー同士が情報交換共有することで課題解決したり、活用拡大につなげられる「場」が少ないことを感じておられる方が多いようです。欧米豪や中国、韓国、シンガポールなどでは、国の支援もあり、産学官連携で情報を集約共有するハブ組織や施設を作り、成功している例が見られますが、残念ながら日本ではそれらが無く、またすぐに出来そうもありませんが、日本には独特の「草の根的」ネットワークを活用する文化があると思いますので、まずは民間でこのようなイベントを増やし、ネットワークを活用していくことが当面できることかと思います。弊社としましても販売代理店の立場として、このような場を増やしていかなければならないと、改めて実感しました。

このように、既に3Dプリンティングを活用されている、またはこれから活用を考えている皆さんが成功される道は百社百様かと思いますが、先駆者のユーザーの皆様から何かのヒントを得る、またこのような場所で自社の事例を公表されることで、課題に対する解決策を他のユーザーから得ることは活用成功のカギの一つですので、次回はぜひご参加いただくことをお勧めし、またこれからもこのコラムを通じてそのような情報をお伝えしていくとともに、逆にお尋ねいただければお伝え出来ることも多々ありますので、遠慮なくお問い合わせいただけることをお待ちしております。

 

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