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3Dプリンティング+1D=4Dで新たな価値が見える?掲載日:2019/09/30

先週海外からのニュースで、イギリスにてStratasys Fortus樹脂3Dプリンターでの電車のスペアパーツ(修理交換部品)製造が始まったことを知りました。そこからわかるスペアパーツのDDM(3Dプリンティングによる製造)成功のカギは...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

イギリスでも電車のスペアパーツを3Dプリンティングで製造へ

早いもので令和元年もあと3か月を残すところとなり、一方でまだ夏のような暑さの日があったりして「秋らしい秋」がなかなかやってきませんが、ラグビーワールドカップ日本代表の大健闘でしばらくは「熱い秋」になりそうです。筆者はラグビーについて詳しくありませんが、日本代表はいろいろな国出身の選手たちがそれぞれ得意なポジションで力を出し、それが一体となって大きな力を発揮していることが素晴らしいと思って観ています。今回の当コラムも少しそのことに共通する話題です。

先日下記の海外のウエブニュースを読みました。

“Stratasys trials first 3D printed parts installed on UK passenger trains with Angel Trains and DB ESG”

https://3dprintingindustry.com/news/stratasys-trials-first-3d-printed-parts-installed-on-uk-passenger-trains-with-angel-trains-and-db-esg-162229/

<要旨>

・3DプリンターメーカーStratasysとイギリスの鉄道車両運用会社Angel Trains、技術コンサルティング会社DB ESG、鉄道会社Chiltern Railways は共同で、実際に運行する電車車両のスペアパーツの3Dプリンティングによる製造をイギリスでは初めて開始した。

・そのスペアパーツは乗客シートのアームレスト(ひじ掛け)とグラブハンドル(シート背もたれに付く、立った人がつかまるもの)である。

Chiltern Railways の電車シートアームレスト(写真提供 Stratasys)

・最近の問題は、鉄道車両の寿命は約30年もあり、最初の部品を製造する方法は大量に作るのにはコストが安い方法だが、鉄道会社が交換するのに必要な数個だけを短期に低コストで作ることが難しくなってきている。

・ 製造には3DプリンターStratasys Fortus 450mc と材料ULTEM 9085が使われ、その難燃性と発生煙無毒性によりイギリスの鉄道車両安全規格EN45545-2による認証を得た。これにより「イギリスの鉄道車両部品に3Dプリンティングを使う主な障害を取り除くことが出来、今後幅広く使うことが出来るようになった」とのこと。

・アームレストの場合、従来の方法では納期が4か月ほどかかっていたが、3Dプリンティングでは1週間以内で94%の納期短縮に加え、1個当たりのコストダウンも50%になる。

・グラブハンドルは部品製造会社がすでに無くなっており、金型を作ると£15,000 (約200万円)、6か月かかり、3Dプリンティングなら1週間以内、金型も不要である。

・これが出来たことにより、今後より乗客の利便性を高めるため、例えばシートバックテーブルに点字でトイレの位置を示すなどカスタマイズされた部品を作る可能性を見いだしている。

以上のように多くの利点があることは分かりますが、この記事から読み取れる成功のカギは次の3つです。


単に車両や部品メーカーだけが単独で取り組むのではなく、3Dプリンターメーカー、規格認証が得意なコンサルティング会社、実際に電車を運行する鉄道会社がそれぞれの得意な点を持ち寄り、共同で開発したことにより速く効率的に成功にたどり着いたこと。


スペアパーツの3Dプリンティング製造の利点は、納期やコスト以上に、鉄道会社にとって車両の修理期間を減らすことで運賃収入が減るリスクを減らせるだけでなく、乗客の利便性と満足度を高められること。


いきなり多くのスペアパーツを対象とせず、まず3Dプリンティングで作りやすく効果の高い数点から取り組み、サプライチェーンや安全認証獲得方法を作ることで徐々に適用範囲を広げていくこと。

ところが、特に日本の場合、このように異業種企業が連携共同して開発するのがどうも難しいようで、「縦割り型組織」によるものかもしれません。実際日本でも同じようなニーズはたくさんあるはずなのですが、「連携」が出来ないためスタートすら切れないケースを筆者もいくつか経験しています。

過去にご紹介したドイツ シーメンスモビリティーのケースでも同じように鉄道会社、車両メーカー、Stratasysが連携したことで市電のスペアパーツの3Dプリンティング製造に成功した事例があります。(以下動画は日本語字幕付きです)

日本人の強みとして、ラグビー日本代表のように「チームワークで1+1以上の力を発揮する」のは得意なはずなのになぜ企業や組織同士になると連携が難しいのかは答えを持っていませんが、最近は自動車業界でも電気自動車や自動運転を競合メーカーやサプライヤの連携で行う動きもありますので、スペアパーツの3Dプリンティング製造もこれから同じように出来るのではないかと期待しています。

「ストラタシス 3D プリンティングフォーラム 2019」のお知らせ

次にお知らせです。

ストラタシス社主催「ストラタシス 3D プリンティングフォーラム 2019」が今年も開催されます。今年で7回目となる3D プリンティングフォーラムですが、3Dプリンターの最新情報や多数のユーザー様の活用事例などをご紹介いたします。弊社丸紅情報システムズ株式会社もスポンサーとして実機・サンプルモデルの展示や、当社の造形サービス・レンタルサービスをご案内いたします。本年はストラタシス製3Dプリンタを実際にご利用のお客様だけでなく、ご検討していただいている一部のお客様もご参加いただく予定です。

■専用Webサイト <詳しくはこちら>
■日時:2019年10月30日(水) 9:30開始
■会場:紀尾井町カンファレンス <アクセス>
■内容:午前は基調講演及びスペシャル講演、午後はユーザー様の事例紹介や最新情報についての多数の講演を用意しております。<プログラムはこちら>

今回筆者が皆さんにお勧めしたい講演があります。それはアメリカEckhart, Inc社社長兼最高経営責任者(CEO)アンディ・ストーム氏の講演で、同社はミシガン州に本社を置くインダストリー4.0先進製造ソリューション・プロバイダであり、下記動画でもその成果の一部が紹介されています。(日本語字幕付き)

筆者はアメリカでストーム氏の講演を聴いたことがあり、大変熱意のある方で、3Dプリンティングいよる生産治工具、機械部品の実際の例や苦労話をしてくださり、とても参考になりました。

ぜひご参加をご検討ください。

関西 設計・製造ソリューション展に出展しています

もうひとつ展示会出展のお知らせです。丸紅情報システムズ株式会社が3Dプリンター、3Dスキャナーの製品やサンプルを展示します。筆者も3日間ブースにいる予定です。

第22回[関西] 設計・製造ソリューション展
【会期】2019年10月2日(水)~4日(金)
10:00~18:00(最終日のみ17:00)
【小間番号】8-22 ブース地図はこちら

上記のようなイベントは同じような挑戦や課題を持った連携相手とつながる良い機会ですので、ぜひ積極的に活用してください。

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