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ものづくり基礎力低下と3Dプリンティングの関係は?掲載日:2021/05/26

日経ものづくり誌 2021年4月号(株式会社日経BP社)の特集記事「ものづくりの基礎が危ない」を読み、アンケートでも「日本のものづくりの基礎力の低下が危機的な状況だと思う」回答者の割合が非常に多い結果に驚きました。それと3Dプリンティングの関係を考えてみると...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

日本の「ものづくりの基礎力」は低下している?

最近のニュースで、日本企業の決算発表の今年の傾向が「K字型」ということを聞きました。それは右肩上がりで好調の産業、企業と右肩下がりで不調な産業、企業が大きく分かれたことをKの右側の形に例えたものということでした。これは日本国内の話ではありますが、世界の国や地域でも、特にこれからワクチン接種の早い遅いで経済活動や景気の回復に差が出てくるのではないでしょうか。日本は先進地域よりワクチン接種が遅れていることで経済回復が遅れる懸念も聞かれますが、例えば半導体供給不足により自動車の生産ラインを数日止めなければならないなど、特に日本経済の大きな割合を占める製造産業がKのどちらになっていくかはコロナだけの問題ではなさそうです。

さて、最近はオンラインに偏りがちですが、アナログ的な情報収集として筆者は会社で購読している日経ものづくり誌(株式会社日経BP社)を読むようにしていて、メーカーの設計者だった若いときからの習慣でもあり楽しみでもあるのですが、先日読んで驚いた記事がありました。それは2021年4月号の特集記事「ものづくりの基礎が危ない」です。

参照:株式会社日経BP社 日経クロステック URL
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nmc/18/00088/

内容は記事をお読みいただくとして、幅広い製造産業関係者へのアンケートでは「日本のものづくりの基礎力の低下が危機的な状況だと思う」「技術者からものづくりの基礎力が失われつつあると思う」回答者の割合は非常に多く、筆者の感覚や想定を大きく上回るものでした。

一方、3Dプリンティングに携わっていると、3Dプリンティングを使うことにより「設計者が深く考えずに設計してしまうようになる」とか、金型が要らなくなるので「日本が世界に対し優位な金型に関する技術技能が失われる」というような声を聴くことがあり、その話とも関係があるとも感じました。

もちろん「ものづくりの基礎力」は単純なものでもなく、見方により異なると思いますが、筆者個人としては、時代や環境と共に求められる「ものづくりの力」は変わっていくのではと考えており、時代に関係なく必要であるけれども低下したり失われつつある基礎力はあるかもしれませんが、特に若い世代の技術者には、これから先のものづくりに求められる力を得ている方も多くいると思いますし、それを伸ばせないことも同じぐらい「危機」ではないかと思っています。

3Dプリンティングとものづくり基礎力の関係

ものづくりにおいて人の経験による技術や技能の力は時代が変わっても重要で、デジタルでは置き換えられないことが多く残ることは言うまでもありません。上記のアンケートの中でも、読み方によれば「デジタル化」がものづくりの基礎力が失われる要因と考えられている個所も見られ、また「実物を使った試験・実験の減少」が要因の上位に挙げられていたり、基礎力の低下で革新的製品が生み出せなくなることが製造業の競争力に与える影響を懸念する声がありましたが、デジタルも「使い方」なので、頭で創造したことを直接3D CADですぐに立体にし、CAEで最適形状に短時間で近づけ、3Dプリンターで実物評価をするサイクルを速く回せる能力や技術はこれからの国際競争の中で必要な力になると思いますし、上記の要因や懸念の対策になるとも考えられます。

また、3Dプリンターで実用部品を作る場合でも、先回のコラムでも触れた「寸法誤差偏差」や「物性」を求めるレベルにしたり管理したりするのを、単に装置、材料、制御だけに原因対策を求めてしまう技術者と、原理や起きている現象を理解し、装置から得られるデータやシミュレーションのデータを活用し、適した設計形状や加工条件を速く導きだせる技術者では「持っている力」は違いますし、それはこれまでとは違う教育や経験で身に付けていく力で、そういったこれから求められる力の増強にも日本の製造業は目を向けていく必要もあると考えています。

ちょうど数日前に海外から届いたニュースで、アメリカの3Dプリンティング実用研究組織のひとつである「America Makes」は中学生を対象として、3Dプリンティングの基礎から活用技術を学ぶプログラムを完成させ、実践しているとのことでした。
https://3dprint.com/281724/america-makes-finishes-pilot-program-of-virtual-3d-printing-education-for-middle-schoolers/

興味深いのは、この教育の狙いは、単に教師が生徒の前で3Dプリンターとダウンロードしたデータでモノを作ることを見せるというものではなく、将来若い人たちが3Dプリンティング産業で何らかの仕事に就ける可能性を高めるための実務的教育とのことで、これは「これから求められる力」を見据えた取り組みの例だと思います。日本でも特に若い方々に対し、例えば筆者も教材作成のお手伝いをした3Dプリンティングの基礎も含む製造業向け設計者育成研修「ゼロから設計マン」(株式会社 XrossVate)のようなオンラインでも計画的、効率的な教育を活用するなど「失われつつある力を取り戻す教育」と共に「新しく求められる力を伸ばす教育」も企業が仕組みとして用意する必要があると考えます。みなさんはどうお考えでしょうか?

Stratasys社から3つの新プリンター製品発表

プラスチック射出成形の歴史は、ネットからの情報によると1920年代にドイツで最初の射出成形機が開発され、欧米に遅れて日本では1940年代に最初の射出成形機が開発され、1950年にはほぼ無かったプラスチック製造技術は現在日本のものづくりに欠かせないものになっていますが、3Dプリンティングの技術進化発展が既存の加工技術より速いと予測されている理由は、加工制御がほぼデジタルデータで出来ること、また加工中起きている現象、例えば積層中の温度をセンサーでデジタルデータとして得ることが出来、そのデータをシミュレーションや制御にフィードバック、管理しやすいためと言われています。よって3Dプリンターが進化する過程や技術者、利用者が必要とする技術や知識は射出成形とは異なると思います。そのような進化の例として海外では新しい3Dプリンターが続々と開発されています。ストラタシスジャパン社が5月21日にオンラインで開催したマニュファクチャリング・フェスに参加され、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、先日Stratasys社から3つの新しい製品が発表されました。

F770 – 大型3D造形をリーズナブルな価格で実現するFDM方式3Dプリンタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Origin One – DLP方式で最終製品クラスの造形モデルを創り出す、クラス最高精度P3テクノロジー採用の3Dプリンタ

 

 

 

 

 

 

H350 – SAF™テクノロジーを採用し、精密で多くの部品を造形するのに適した粉体造形方式3Dプリンタ

 

 

 

 

 

 

これらの製品でもセンシングが性能向上に活用されています。このような新しい装置についても、その原理と特性を理解し、デジタルデータを元に使いこなしていくことが活用の成否を分けると考えています。

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