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「2021年版ものづくり白書」から見えることは?掲載日:2021/06/09

2021年5月28日に経済産業省ウエブサイトで「2021年版ものづくり白書」が公開されました。そこでは3つのキーワード「レジリエンス・グリーン・デジタル」がありましたが、それらから見えてくることや、3Dプリンティングとの関連は...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

「2021年版ものづくり白書」とは?

既にご存じの方もいらっしゃると思いますが、2021年5月28日に経済産業省ウエブサイトで「2021年版ものづくり白書」が公開されました。これは毎年公開され、21回目になるそうです。このコラムでも昨年の内容はこちらでお伝えしました。

製造産業は日本のGDP の2 割以上を占めている(2019年時点)とのことで、重要かつ経済、社会、教育など様々な分野が関わることからか、経済産業省、厚生労働省、文部科学省が共同で作成しています。以下のURLからPDFファイルでダウンロードすることができます。

2021年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2021/index.html

 

 

 

 

どういった文書かは本文から以下に引用します。

「この文書は、ものづくり基盤技術振興基本法(平成11年法律第2号)第8条の規定に基づく令和2年度のものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策に関する報告を行うものである。(中略)「ものづくり基盤技術」とは、工業製品の設計、製造又は修理に係る技術のうち汎用性を有し、製造業の発展を支えるものとしてものづくり基盤技術振興基本法施行令で定めるものをいう。」

この施行令は平成11年(1999年)6月に施行されて以来改訂されていないようですし、「3Dプリンティング」は基盤技術とは認められていないので「3Dプリンタ」で単語検索しても全文で4回しか出て来ず残念ですが、全体としてはアンケート結果や企業の具体例なども多く示され、製造業の課題と展望の中から3Dプリンティングとの関わり含め、見えてくることがあると思います。

製造業の課題と展望 3つのキーワード

2021年度版の要点を表している3つのキーワードが、総論のタイトルになっている「製造業のニューノーマル/レジリエンス・グリーン・デジタル」です。カタカナばかりでなんとなくわかりにくいのですが、第1 章「我が国ものづくり産業が直面する課題と展望」の中でこう書かれています。

ニューノーマルでの生き残りに向けて
レジリエンス ―サプライチェーンの強靭化―
グリーン ―カーボンニュートラルへの対応―
デジタル ―デジタルトランスフォーメーション(DX)の取組深化―

筆者の個人的な理解で要約すると、製造業の現状は不確実な社会に加え新型コロナにより売り上げ、利益、設備投資、特に若い世代の労働人口、働く人の給与も右肩下がりで、生き残りへの課題はあらゆる急変を想定してものづくりが途切れないよう様々な手を打っておくこと、脱炭素に取り組むことで海外での取引や投資が得やすくなること、それらの課題解決のため、ものづくりチェーン全体でデジタル活用を進めること、といったところでしょうか。

もちろんこれらは「総論」で、「官民一体で推進」と示されているものの実際に何からどう取り組むかは各企業次第だと思います。また3つの中でまず手を付けやすいのはデジタルだと思いますが、ものづくり白書の定義を引用しますと、

デジタル技術とは、ICT(Information and Communication Technology: 情報通信技術) やIoT(Internet ofThings: モノのインターネット)、AI(Artificial Intelligence: 人工知能)周辺技術(画像・音声認識など)、RPA(Robotic Process Automation: ロボティック・プロセス・オートメーション)

ものづくりの工程・活動におけるデジタル技術の活用状況については、「活用している」とした企業(以下「デジタル技術活用企業」という。)が54.0% に上り、「活用を検討している」も合わせると、デジタル技術の活用に積極的な企業は、7 割を超えている。これは、「活用していない」とした企業(以下「デジタル技術未活用企業」という。)のおよそ3倍であり、ものづくり企業におけるデジタル技術の導入・活用への関心の高さがうかがえる。

デジタル技術の活用有無にかかわらず、
ものづくり人材の育成や能力開発が、ものづくり企業において、大きな経営課題となっていることがうかがえる。

デジタル技術活用企業に対して、デジタル技術を活用する理由や狙いについて問うと、「在庫管理の効率化」、「作業負担の軽減や作業効率の改善」、「開発・製造等のリードタイムの削減」が上位となっている。

とのことで、FAXをメールにしたのもデジタル活用なのかはわかりませんが、筆者としては活用している企業が54%しか無いことに少し驚きました。また日本企業が得意な「カイゼン」がデジタル活用の理由や狙いになりがちなのかもしれませんが、仕事の仕組みを変えずに道具だけをデジタル化するのと、仕事の仕組みを変えるためにデジタルを使うのとは大きな違いがあると思います。3DCADも3Dプリンターの活用もこれまでは前者が多く見られましたが、ものづくり白書が「取組深化」としているのは後者だと思われ、加えて「カイゼン」から「創造」への活用を増やしていくことがより重要な課題だと思います。

「サプライチェーンの強靭化」についても、3Dプリンティングが有効であることは過去のコラムでも触れましたが、平時から3Dプリンティングを理解、部分的でも活用し、また社内プリンターと社外プリントサービスを併用しておくことで有事の際にうまく活用できるということ、もしくは3Dプリンティングを主とした製造プロセスを作っておくと、それは変化に強いサプライチェーンであると言われています。

続く第2 章、第3章はどちらもものづくり人材教育に関することで、重要度、危機度の高さを表していると思います。これは先回のコラムでも触れた「ものづくり基礎力の低下」に通じる課題ですが、「デジタル活用能力」は、特に若い世代の方々には特別ではなく、既に身に着けている方も多いので、むしろそれを活かせる環境を整え、伸ばす教育がものづくり人材確保、ひいては企業の国際競争力強化にプラスとなると考えています。

オンラインイベントのお知らせ

これまでもこのコラムでご案内してきました、「AMオンラインカンファレンス」の第9回目が開催されます。今回も様々な立場の方からの情報提供講演、筆者も参加するパネルディスカッション、バーチャルテーブルでの会話を通じ、新しい情報収集と人のつながりを作る機会にしていただければと思います。

第9回 AMオンラインカンファレンス
日時:2021年6月18日(金)14:00~18:00
プログラム、参加登録は下記サイトをご覧ください。
https://go.link3d.co/jamm9

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