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バイオ燃料と3Dプリンティングとの共通点は?掲載日:2021/07/19

先日「ミドリムシなどを原料とするバイオジェット燃料を初めて民間航空機に使用」というニュースがあり、その燃料を開発された株式会社ユーグレナ 出雲社長のインタビュー記事を読むと、バイオ燃料の日本のこれまでとこれからについて3Dプリンティングとの共通点に気づきました。それは...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

バイオ燃料のニュース

2年続けて「それどころではない」状況になってしまい、行事やイベントの報道もないのですっかり七夕のことを忘れていた7月7日に、下記のニュースがありました。

2021年7月7日 日本経済新聞「ユーグレナ、ミドリムシ燃料を初めて民間機に」(以下は会員限定記事)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73632570W1A700C2TB1000/

このバイオ燃料を開発された株式会社ユーグレナの創業者であり、代表取締役社長である出雲 充 氏のインタビュー記事もありました。(以下は有料会員限定記事)

2021年4月30日 日経クロステック 「燃料とプラの新市場、日本にバイオで創る」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nmc/18/00009/00043/

筆者は日経ものづくり5月号でこの記事を読みましたが、出雲氏が語られた、バイオ燃料の日本におけるいままでとこれからの課題には、3Dプリンティングといくつかの共通点があると気づき、これは偶然かもしれませんし、一方で新しい技術やモノにおいてよくあることかもしれませんが、今後の国内3Dプリンティング産業として参考にすべきと考えたことを以下にお伝えします。

バイオ燃料と3Dプリンティングとの共通点は?

①欧米と日本で普及の速さと市場規模に大きな差がある

日米欧は2050年に二酸化炭素の排出量実質ゼロを目標に掲げているとのことですが、自動車用バイオ燃料生産消費量は現在欧州、アメリカで相当多くなっているのに対し日本はほぼ無いに等しく、生産も一般利用もされていないとのことです。もちろん自動車の台数や利用人口含め、燃料の需要が違う背景はありますが、普及の速さと市場規模に桁違いの差が出来てしまっているようです。
3Dプリンティングも同じく人口や需要の違いはあるとはいえ、欧米に比べ日本の市場規模は桁違いに小さく、普及の速さも大幅に遅いと言われています。バイオ燃料も3Dプリンティングも「今すぐ無くても困らない」かもしれませんが、必要になってから始めたのでは遅く、世界の潮流から数年先を想定し、以下の対策を含め、取り組み始めるべきではないでしょうか。

②新しいエコシステムとビジネスの創出が急務

バイオ燃料は欧米や中国には既に市場があり、大きな企業が参画し、市場の拡大余地も大きいとのことですが、日本ではベンチャー企業がほぼゼロから市場を立ち上げて「1」にする段階で、1を10や100にするのに重要なのは、政府や大企業が「やる価値がある」と思う規模まで市場を持っていくことが重要と出雲氏は述べています。また、バイオプラスチックも似ていて、現状日本のプラスチック年間使用量のごくわずかしか使われておらず、そこでユーグレナ社は、まず大企業と共に約10年後に相応規模の市場を作ろうとされているそうで、日本にないバイオ燃料とバイオプラスチックのエコシステムと産業の創出を目標とされているとのことです。
3Dプリンティングも欧米中では政府や大企業が参画し、大きな市場が既に出来上がってきており、「1を10や100にする」ことが起こっていますが、日本では多数のベンチャー企業が「ゼロから1」を作ってきたものの、「10から100」にする大企業がようやく動き始めた状況かと見ています。「エコシステムと産業の創出」が必要なのも共通していると思います。また少し前のコラムでご紹介したようなリサイクルも含め、バイオプラスチックのエコシステムに3Dプリンティングも組み込まれれば良いと思います。

③問題はコスト

船や車で使われる現在の石油由来のディーゼル燃料は、技術的には100%バイオディーゼル燃料に置き換えられ、航空機向けのバイオジェット燃料は50%が置き換えの上限と決められているそうです。しかし置き換えのハードルは高い製造コストで、現状は研究費、工場建設運用費の固定費に対する生産量が少なすぎるのが理由とのことで、生産量が大きなプラントになれば現実的な価格帯になる試算が出来るそうです。それでも安価に買える化石燃料より高くなるとしても、これからの世代の消費者(環境を重視する)はこのコスト差を容認するはずと出雲氏は述べています。
3Dプリンティングも生産能力や寸法精度、品質性能に技術的課題はありますが、急速に改善進化している一方、コストがまだ桁のレベルで高いことが普及のハードルになっていることも似ていて、生産使用量が少ないことも一因ですが、消費者の価格観が変わる、例えば自分に合ったカスタマイズ品やSDGsに沿ったモノは高くても買うという変化が市場拡大につながる点でも似ていると思います。

④課題の解決方法

出雲氏は、新産業の創出ということは、まず世の中に受け入れてもらうことが先決、つまりバイオ燃料はCO2削減に貢献することを示すことが先決で、コストはこれから多くの分野と人の知恵を集めて削減していけばよく、0から1にするのはベンチャー企業がやり、1を100や1000にすることを大企業や政府に本気になって取り組んでもらいたい、と述べています。また、日本の起業家精神とベンチャー起業の欠如が日本の衰退の原因、一方0から1にするのは難しいが、1を100や1000にすることは日本の優秀な技術者なら出来るとも述べています。
3Dプリンティングにも正に当てはまると考えています。日本では普及の速さや市場の大きさで欧米中に遅れていますが、多数のベンチャー企業は3Dプリンティングを活用し「まず世の中に役立つことを示し」ていますし、あとは政府やいくつかの大企業含め「多くの分野と人の知恵を集めてコスト(3Dプリンティングのというより製造エコシステム全体の)を削減する」ことが日本に新たな産業を創出する好循環にしていくひとつのカギだと思います。

先回のコラムでご紹介したStratasys H350の下の写真のメーカーサンプル例がありますが、

 

 

 

 

植物原料でありバイオマスプラスチックと言えるナイロン11を使い、使う時に使う数だけ使う場所の近くで作り、金型に必要な鉱物資源や加工、製品の長距離輸送によるエネルギーや排出CO2の削減につながる製造販売エコシステムを作るのにこのような3Dプリンティングを使うことで、0から1、1から100にしていける可能性があると思います。

みなさんはどうお考えになるでしょうか?

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エントリークラス 金属3Dプリンター最前線

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日時:2021年7月30日(金)13:00~18:00
プログラム、参加登録は下記サイトをご覧ください。
https://go.link3d.co/jamm10

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