製造ソリューション事業本部

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3Dプリンティングの「コストが高い」は正しい?掲載日:2021/10/05

Formnext Forum Tokyo Connect 2021 オンラインセミナーが先日開催され、筆者も聴講しました。その中で3Dプリンティングの課題として「コストが高い」という話題があり、これは昔から変わらず聞かれることですが、本当に正しいと言えるかあえて改めて考えてみると...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

3Dプリンティングの「コストが高い」は正しい?

新型コロナウイルスの国内感染者数が急増から急減し、明るい兆しも見えてきましたが、急減した本当の理由はよくわからないとの報道もありました。もちろん感染防止策は各自で続けていかなければなりませんが、感染防止についても国内だけでなく全世界で様々な情報が流れ、「本当に正しい情報」は何かが分かりにくく、また事実としてはあっても、それが正しいかどうかはそれぞれの立場、文化、考え方により異なることもあらためて気づかされたのは筆者だけではないと思います。

さて、2021年9月28、29日にFormnext Forum Tokyo Connect 2021 オンラインセミナー(主催:メッセフランクフルト ジャパン株式会社)が開催され、とても勉強になるものでした。具体的内容はお伝え出来ませんが、講演中の参加者へのアンケートやパネルディスカッションの中で、3Dプリンティングの課題として「コストが高い」という話題があり、これは昔から変わらず聞かれることですし、同感される方も少なくないと思いますが、それは本当に正しいのか、正しいかどうかはそれぞれの立場、文化、考え方により異なるのかについて、あえて、改めて考えてみたいと思います。

まず「コスト」という単語にいくつかの意味が含まれ、それを分けて考えます。

①初期投資・固定費と運用・流動費
②経費の絶対金額と、得られる利益に対する相対的価値

まず3Dプリンティングを使う場合、①初期投資・固定費として3Dプリンターを「買う」とすれば、ご存じの通りシステム価格は数万円から数億円まで幅があり、それだけの高い安いだけではなく、設置運用する場所・付帯設備に加え、運用する「ヒト」の人件費や使えるようになるまでの教育経費まで含めた場合、さらに数年の①運用・流動費としても実際に必要な「ヒト」の工数時間と人件費、型の製作保守保管や、モノの国内外間の輸送、製造プロセス変更や生産能力増減にかかる経費なども含めると、他の工法装置との比較において「高い安い」は変わることがあります。加えて、海外国内同様に、「買う」以外の「借りる・共用する」「他社に頼む」選択肢が近年増えているので、それによって①を下げやすくなってきています。

上記の講演の中では、中小製造企業が新たな自社製品ビジネスを海外のニッチな市場を狙って開発する話題があり、それには3Dプリンティングが有効だろうとのことでしたが、この場合でも新たな工作機械や金型への投資に対し、3Dプリンティングでの試作、初期生産の方が速くマーケットリサーチが出来たり、初期投資回収リスクや改良変更の時間とコストを少なくできることを考えれば、3Dプリンティングの①のコストは必ずしも高いとは言えないと考えます。

次に②ですが、これが3Dプリンティングのコストの高い安いがわかりにくい、または間違えた判断の原因でもあると思います。3Dプリンティング経費の絶対金額は定量把握出来、変わりませんが、「得られる利益」はどの範囲まで、どの期間で定量算定するかにより「経費が相対的に高いか安いか」は変わります。筆者は「3Dプリンティングで実用部品を作る検討のステップ」を下の図で説明しています。 img_3D_20211005_02.jpg

このステップで大事なことは、「つくれるか」は大きさ、細かさ、材質の大まかな絞り込みにとどめ、特に「現存品との比較」を細かくし過ぎないこと、もっと大事なのは「つくるべきか」の判定で、ここで②得られる利益に対する相対的価値も判断基準になります。この時に、利益>経費になりやすい代表的な6つのケースを上図に示していますが、「つくるべき」であれば2次加工も含め「どうやって」を検討し、ここでも当然利益>経費に出来る方法の詳細を検討します。もう一つ大事なことは「部品単位の製造コスト」だけではなく、その部品の使用、保守補修交換、廃棄含めたライフサイクル、それによる装置システムやビジネスの利益を含めると3Dプリンティングでの利益>経費になることあります。。

上記のオンライン講演の中でも海外事例で大型金属3Dプリンターによるガスタービン部品製造の事例があり、製造期間が大幅に短縮された以外の具体的な利益数値は明かされませんでしたが、部品単品の製造コストの高低ではなく、利益>経費となるから採用したことは事実だと思いますし、利益の中には燃料噴射性能を最適化するCAEベースの設計形状にによるガスタービン自体の性能や、保守補修交換も含めた利益も含まれていることは推察できました。

もう一つの視点としては「ヒト」のコストを利益と経費にどう織り込むかで結果が大きく変わるということです。ご存じの方もおられる通り、一般に企業は賃金に対し実際は1.5~2倍の経費を負担しているとのことで、3Dプリンティングによる「ヒト」の工数削減もしくはより高い価値を生む仕事に工数を使う利益を「実経費」で定量算定すれば、同じ「3Dプリンティングコスト金額」でも利益>経費となり、安いとなる場合があると思います。しかしながら欧米、韓国では労働者賃金は2000年以降2割以上上がっているのに対し、日本ではほとんど上がっていないとのことで、これも日本で3Dプリンティングのコストが相対的に高い背景になっているかもしれません。

前述のコストに含まれる①②を適した範囲設定で出来るだけ定量算定することにより、3Dプリンティングのコストはより正しくなり、その結果で高くも安くもなると考えますので、固定観念や既存のコスト利益算出方法にとらわれず、専門家や成功者の見方も取り入れながら「高い安い」の判断をされることをお勧めします。

展示会出展のお知らせ

丸紅情報システムズ株式会社は第24回 関西 設計・製造ソリューション展(DMS関西)に出展します。詳しくはこちらをご覧ください。残念ながら筆者は新型コロナウイルス感染対策の点から参加できませんが、Stratasys、Desktop Metalの3Dプリンターシステムや材料の最新情報だけでなく、GOM社の3Dスキャナ、Zeiss社の品質管理ソフトウエアなど、製造のデジタルトランスフォーメーションに役立つツールをご紹介しますので、皆様のご来場をお待ちしております。

第24回 関西 設計・製造ソリューション展
開催日時:2021年10月6日(水) ~ 2021年10月8日(金) 10:00~17:00
会場:インテックス大阪 MSYSブース:2号館3-21

主な展示製品:
Stratasys社3Dプリンター
Desktop Metal社 3Dプリンター
ハンディ型ポータブル3DスキャナZEISS T-SCAN hawk
GOM社3Dスキャナ ATOSシリーズ
ARAMIS 非接触3D変位・ひずみ測定システム
Zeiss社 PiWeb品質データ管理ソフト(Zeiss社のWEBサイトにリンクします)

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