製造ソリューション事業本部

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産業用ロボットと3Dプリンティングの共通課題は?掲載日:2022/03/16

最近、ロボットの研究開発を長年行われてきたお二人の方のお話を伺う機会が相次いでありました。その中で、日本で産業用ロボットが普及しない背景、課題、その改善策について触れられ、それは3Dプリンティングにも共通すると思いました。どのようなことかというと...

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

立命館大学 川村教授の最終講義

最近の世界的な大きな出来事により、これまで見えなかった社会や経済の問題、課題が浮き彫りになることが増えたと思います。その多くはやはり「人」に関わることで、そのひとつの「働く」ことについては、人やモノの流れが悪くなると急に足りなくなって機能しなくなってしまう、また社会のニーズと働く人の数や、働き甲斐と収入のバランスの悪化、格差の拡大などが起こり、その解決策としてロボットは需要も期待も大きい一方、特に日本の産業用ロボットは製造産業もユーザーの活用も期待ほど伸びていないようです。

とはいえ日本には世界的にも優れた研究者、技術者、企業が少ないわけではなく、その研究者のおひとりである立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 運動知能研究室の川村貞夫教授がご退官されるにあたり、最終講義をされ、オンラインライブ配信で拝聴する機会を頂きました。川村先生には、弊社の3Dプリンター活用事例にもご協力いただき、筆者も研究室で直接お話を伺ったことがあり、お人柄、研究への熱意に大変感銘を受けました。

ご講義の内容は川村先生の学生時代から現在までを振り返られる内容で、学ぶこと多でしたが、特に印象に残ったのが、日本のロボット研究と実用が進まない理由の一つとして、「解くべき問題が明確/妥当でない」を挙げられました。

・経営者がどの範囲までロボットに任せるか、どの範囲で利益が出るかがわからない
・開発者は経営的に解くべき問題が設定されないと技術的な解が出せない

この問題に対する解決策として

・技術と利益(経営)の両方を理解できる人が問題を設定する必要がある

を示されました。また若い研究者の方へ次のメッセージを残されました。

・破壊的創造をすべき時期であり、既存成果に騙されず、ゼロから独力で考え、つながる世界で個(虎)になることを恐れず深い思考を

これらのご示唆は3Dプリンティングにも当てはまると思います。どの範囲まで3Dプリンティングに任せるか、どの範囲で利益が出せるかの経営的な問題設定が明確、妥当でないと技術的な解も出せませんし、技術的な問題設定だけでは経営的な解も出せず、両方を理解できる人による問題設定が出来れば、解も適切になります。また3Dプリンティングでも破壊的創造をすべき時期であり、昨日の常識が明日は変わっているということが起きる時代なので、成功体験にとらわれない思考が求められることもロボットと共通しています。

展示会で見たり聞いたりしたこと

2022年3月9日(水)~ 12日(土)に東京で「2022国際ロボット展」が開催され、筆者も行ってきました。ここでも「働く」社会課題に対し、様々なロボットによる解決策の展示があり、特に人と共に働く「協働ロボット」「搬送ロボット」の展示が多く見られました。弊社丸紅情報システムズ株式会社も代理販売しているフランスの「Effibot」の展示実演を行いました。段差など床面がフラットでない環境で使える 圧倒的な走破力や作業者のイメージ通りに前後に追従してくれる唯一無二の「協働搬送」を特長としています。

また、以前より公開されているストラタシスジャパン様の活用事例で見たことのあった株式会社人機一体様のロボットもようやく実物を見ることが出来、その大きさを実感できました。肩腕の黒いカバーの部品はStratasys FortusとNylon12CF材料で作られています。これは鉄道の架線など高いところの工事、塗装、点検などを人が上ることなく、地上で操作するものだそうです。

ロボットの研究者でもある人機一体 代表取締役社長 金岡様のご講演も聞くことが出来、そこでもロボット普及の課題と解決策についてのポイントは大変勉強になり、これも3Dプリンティングとの共通点がありました。

・ロボットとは「汎用」であるべきで、それにツールを持たせていろいろなことに使う

・ロボットで行うことは自動化ではない。人の能力の拡張(+協働)

・人の苦役を無くすことが目的で、そのためにはロボット(特に人型)でなくても良い

・ロボットについての技術は既に十分にあるがビジネス化できていないことが問題

・これまではレイヤー(ロボットの研究、製造、SIer、ユーザーなど)がひとつずつバラバラなのが問題。人機一体はロボット産業のサプライチェーンを作るプラットフォーマーを目指す

上記の「ロボット」を「3Dプリンティング」にそのまま置き換えてもいいくらい、現状の課題と解決策は共通していると思います。

その他にも興味深い展示があり、凸版印刷様が展示された自走式テレプレゼンスロボットは、ロボット自体はアメリカのメーカー製品ですが、人と協働、機能を実現するために、滑らかな形状の樹脂外装(赤い部分)を3Dプリンティングで作られたそうです。

また、弊社のユーザー事例でもご紹介しているトライエンジニアリング様は、昨年11月に名古屋の展示会で発表された、シールテープを複雑な立体に貼るロボットの実演展示をされ、そこには3Dプリンティングによる樹脂の実用部品が多数装着されていました。これまで熟練した人でないとできなかった作業で、ロボットでも容易ではないそうですが、「人不足への対策」需要の高まりからか、予想以上に検討依頼が多く来ているそうです。

セキュリティーの課題も共通

最後に宣伝です。先日もネットワークセキュリティへの海外からのサイバー攻撃や、身代金目的の侵入により製造業が被害を受けたニュースがありました。ロボットも3Dプリンターもデータで動き、何らかのネットワークに接続するもので、セキュリティー対策も共通の課題です。

弊社丸紅情報システムズ株式会社は、既存設備のネットワーク設定を変更することなく、脆弱性攻撃や不正アクセスを防止するトレンドマイクロの産業向け次世代IPS、産業向け次世代ファイアウォール「TX ONE」を販売していますので、こちらのサイトをご覧いただき、ご質問、ご相談があればお問い合わせください。

ロボットも3Dプリンターも「使うこと」が問題でもなく目的でもなく、経営面、技術面で特に「人」に関わる様々な課題を適切に設定し、またその解決に人、モノ、お金をいつ、どのくらいかけるのかは、社会や経済の環境によっても変わりますので、その時に対応しやすいよう、これからも展示会などで最新情報を得ておくことはどなたにとっても大事なことだと思います。ご参考まで。

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