製造ソリューション事業本部

TEL : 03-4243-4123

金属BJプリンターを量産に使う自動車メーカーは?掲載日:2022/12/05

先日11月25日に、Desktop Metal社がドイツの大手自動車メーカーからバインダー ジェッティング(BJ)金属AMシステムの 大型注文を受けたニュースが配信されました。これが意味することや、これに関連して「3Dプリンターの精度は?」の質問について考えると…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

Studioシステムの教育への活用例

8回目の感染拡大や国際サッカー大会など、次から次へといろいろな波が押し寄せるうちに、今年も早いもので師走の月になりましたが、つい先日、月には関係なく精力的に走り回っておられる熱い先生方にお会いする機会がありました。その方々は先々回のコラムでご紹介しました国立奈良工業高等専門学校 機械工学科 谷口准教授、須田准教授で、先日弊社に来られお話を伺うことが出来ました。まず、同校で導入されたDesktop Metal Studioシステムで学生が作られたステンレス製「変形ロボ」の実物をご持参いただき、拝見することが出来ました。

img_3D_20221205_01.jpgimg_3D_20221205_02.jpg

数年前に学生が学校正門入口に展示しているT-6テキサン(自衛隊の航空練習機)を変形ロボになるように自主的に3Dデータ化し、材料吐出法樹脂3Dプリンターで実際に作った時のデータを使い、小部品はランナーで一体化してプリント、脱脂焼結後、分離組み立てされたそうです。これも使う3Dプリンターの原理、特性、限界を理解した上で設計する、正にDfAMの実践であり、素晴らしい教育への活用だと思います。また、両先生は、例えば理論座学より早期にCAEを体験させることで、それにより工学への興味や理解を高めることなど、高専ならではのデジタルものづくり教育の実践に積極的に取り組まれておられるそうです。「習うより慣れろ」「鉄は熱いうちに打て」「好きこそ物の上手なれ」というキーワードをおっしゃっていましたが、これは企業の教育でも有効で、3Dプリンティング含めたデジタルツールはこの教育法にも合っていると思います。


金属BJプリンターを量産に使う自動車メーカーは?

前回のコラムでドイツ フランクフルトでの展示会「Formnext」についてお伝えしましたが、その翌週の11月25日に下記のニュースが配信されました(英文のみ)。

https://ir.desktopmetal.com/news/press-releases/detail/136/desktop-metal-receives-9-million-order-from-major-german

筆者概要和訳

Desktop Metal社は本日、ドイツの大手自動車メーカーからバインダー ジェッティング(BJ)金属AMシステムの 900 万ドル(約12.5億円)の注文を受けたと発表しました。パワートレイン部品の大量生産に使用されます。これは、同じ自動車メーカーから 12 か月足らずで 2 回目の注文であり、量販自動車のパワートレイン 部品デジタル製造をサポートするために注文された生産用 AM システムの注文総額は 1,690 万ドル(約23.4億円)になりました。

この文書以上の情報はなく、「ドイツの大手自動車メーカー」はどこなのかは想像するしかありませんが、これまで海外でも航空宇宙、医療歯科で先行していた金属3Dプリンティングでの実用部品量産ですが、自動車メーカーにも広がり始めることを示しています。ただし、これまで金属部品の製造にはほとんどの場合PBF(粉末床溶融積層方式)が使われてきましたが、上記は小部品多量生産にBJを使う初めてのケースとみられ、このような使い分けが今後広がっていくと考えています。これから徐々に詳細が明かされることも考えられますので、その他の自動車メーカーの動きも含め、注目していきたいと思います。

このようなニュースをお伝えしますと、「BJは自動車部品製造に使える精度、強度が出せますか?」と質問されることがあります。前回のコラムでご案内した11月30日の弊社Desktop Metal Shopシステムご紹介ウエビナーでも、ご参加の方から「精度は?粗さは?」のご質問を複数頂きました。それに関しましてこの場をお借りして、ご批判をいただくことを承知の上で、皆さんにお問いかけをしたいと思います。

「3Dプリンターに対し、精度は?の質問は、使う方にとって本当に意味があるでしょうか?」

まず筆者が樹脂製品メーカーで設計として勤務していた経験上、成形品の精度は設計形状、材種、金型、成形条件など使う側の複合要因で作り、かつPDCAサイクルで管理維持していくものであり、加工装置だけで決まらないと考えています。工作機械も位置決め精度という評価指標はありますが、加工品の精度は刃物、カッターパス等でも変わると思います。3Dプリンターも設計形状、材種、積層厚さ、硬化収縮補正拡大率含め、精度は使う側の複合要因で作るものであり、プリンターだけで決まるものではありません。3D プリント成形品の寸法形状精度についてはこちらのように過去にも何度かこのコラムでお伝えしていますが、一般論としての「精度は?」「粗さは?」「強度は?」のご質問には、仮に定性的に「良いです」、定量的に「±0.2㎜です」と答えたとしても、そのまま鵜吞みにされる方はおられないと思いますし、鵜呑みにされることは「危険」でもあります。3Dプリンターは素形材と形状を同時に作る装置である故の特殊性もあり、一方で寸法形状誤差が生じてもデジタルデータで容易に速く改善が出来、品質計測管理もデジタルデータとソフトウエアで科学的、効率的な管理も出来ます。3Dプリンターやプリント品の品質は、ISO/ASTM 52900シリーズなどの工業規格を基にされるなど、使う方にとっても意味のある方法とデータで今後は評価、議論される方が良いと思います。この課題については展示会、イベント含めた機会に直接意見交換をさせていただき、お互いのより良い理解を深めていければと希望しています。

ロールスロイスはかつて自動車の性能を聞かれても「必要にして十分」とだけ答えていたと聞いたことがあります。工業製品としての3Dプリンターの性能について「必要にして十分」と答えれば怒られること間違いありませんが、ある意味では、使い方、使う方の要求によっては「必要にして十分」が正解なのかもしれません。上記のドイツ自動車メーカーにとっても、精度も強度も使う側として作りこんでいくのに「必要にして十分」なBJシステムを選択したと推察しています。


「メタルジャパン」展示会に出展します

丸紅情報システムズは、「第9回 メタル ジャパン(高機能 金属展)」へ出展致します。
当社ブースでは、Desktop Metal社 金属3Dプリンター「Studio システム2」やバインダージェット方式の「Shopシステム」プリンターも実機展示紹介します。その他新しいものも含め多くのサンプルモデルをご覧いただけます。皆様のご来場をお待ちしております。

開催日時:2022年12月7日(水) ~9日(金)
10:00 ~ 18:00(最終日のみ17:00)
会場:幕張メッセ(千葉県千葉市) ブース番号:25-50

詳しくはこちらのウエブサイトをご覧ください。

3Dプリンターのことなら
お気軽に当社へ
お問い合わせください

TOP