製造ソリューション事業本部

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2024年の3Dプリンティングはどうなる?掲載日:2024/01/10

2024年最初のコラムは、毎年恒例、今年の3Dプリンティングはどうなるかについて予測をしたいと思います。世間は昨年以上に振れ幅の大きな年になるかもしれませんが、その中で3Dプリンティングがどうなるかを予想すると…

筆者紹介

丸岡 浩幸

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリング技術部アプリケーション推進課スペシャリスト。Stratasys樹脂3Dプリンター、DesktopMetal金属3Dプリンターの国内外の活用情報収集発信、より良い活用方法提案、開発業務を主に担当。

2024年も宜しくお願い致します

新年あけましておめでとうございます。2024年もこのコラムを通して、3Dプリンティングについての様々な情報、話題をお伝えしていきますので、引き続きお読みいただけますよう、よろしくお願い致します。

まず、国内では元旦に大きな災害や事故が発生し、言うまでもなく災害や事故はカレンダーに関係なく起こるものですし、同じ日に世界では戦いや争いが起きていて、筆者と同じく手放しで新年を祝える気持ちになれなかった方も多かったかと思います。一方で、数年集まれなかった知り合いや親族と集まって話すことが出来、コロナ禍で失われた時間を少し取り戻すことが出来た年末年始でした。

また、昨年末のコラムでお知らせしたとおり、弊社丸紅情報システムズ株式会社本社は2023年12月25日に移転しました。最寄り駅は飯田橋駅で、JR「飯田橋駅」 東口より 徒歩5分のところにあります。 場所はこちらをご覧ください。
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新オフィスは固定した個人の机が無い「フリーアドレス」式で、筆者もサラリーマン人生で初めてのことですが、実際働いてみると、個人的に好きな、窓から外や空が見える席を選べたり、スペース効率がいいので広々と感じたり、社員同士が顔を合わせやすいとてもいい環境です。また来社されるお客様の受付や会議室は28階にあり、そこからは下の写真のような景色が見られます。
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飯田橋には仕事で何度か来たことがありましたがほとんど知らない街なので、今年は少しずつ探検していこうと思います。

2024年の3Dプリンティングはどうなる?

2017年から始め足掛け7年目となるこのコラムの今年初回は例年通り、今年の3Dプリンティングはどうなるかについて、世間は昨年以上に振れ幅の大きな年になるかもしれませんが、その中で筆者が見聞きした情報と個人的な感覚、少し希望的観測による勝手な予想をお伝えしています。

日本の年末年始休暇の間でも海外では曜日通り働く地域も多く、特に3Dプリンティング関係では、年末年始に旧年の振り返りや新年の見通しについて、また新商品やイベントのお知らせなど普段以上の情報が発信されます。それらも参考にして、世界、日本国内の3D プリンティング市場がどうなりそうかを以下の通り予想してみました。

前回のコラムで、2023年は3Dプリンティングの技術や活用の「境界」が広がり変わる年だったと書きましたが、2024年は「分岐」の年になるとみています。

・技術の分岐

ご存じの方も多いと思いますが、国際工業規格でも3Dプリンターの原理は大きく7種に分類されていて、もちろんそれに当てはまらない原理の装置も既に出てきていますが、複合を含めた新しい分類が増えることに加え、1つの分類の中でこれまでは小さな枝だったものが大きな枝に分かれていくとみています。例えば材料吐出法(MEX)では、フィラメント材料から細いノズルで溶融吐出するのが「幹」でしたが、ペレット材料やペースト材料を溶融または搬送吐出するという「枝」が急速に大きくなっていて、これらは技術や制御、材料も「似ているけれども違う」ことが多く、大きな分野として枝分かれして発展すると思います。一方、それでフィラメント式が衰退したり減ったりすることもなく、高速化、大型化、多色化の進化で伸びていく大きな枝になると思います。また、結合剤噴射法(BJT)も20年以上前からあった「幹」ですが、バインダーで固めて完成という従来の枝と、固めた後に焼結することでバインダーは無くなってしまう方式の「枝」も急速に大きくなり、その中でも更にインクヘッドや主材、バインダーの枝分かれが進み、似ているけれども違う「幹」になっていくと思います。

もう一つの技術の分岐は「AIをどう使うか」です。昨年は「生成AI」が話題となりましたが、3Dプリンティングの世界でも、今年は「AIをうまく使うかどうかが課題」とする海外の記事があり、これはプリンター・ソフトウエアメーカだけでなく、ユーザーにとってもこの先の大きな分岐の年になることが考えられます。

・使い方の分岐

筆者もこれまで長い間、3Dプリンティングの使い方は大きく分けて「試作」と「DDM(ダイレクト デジタル マニュファクチャリング=実際に使う、治工具・型を含めた機能するものを作る)の2つであり、歴史的には、初期はほぼ使い方は「試作」でしたが、年々「DDM」の割合が増えていると説明してきました。この2つは間違いではなく、これからも大きな「幹」であり続けますが、実際にはその幹の境目が無くなってきたり、逆に大きな枝が分かれ、「試作」「DDM」でひとくくりにできない使い方がよりはっきり分かれてきたりすると思います。例えば、見た目、手触り、内部組織まで最終製品と限りなく近づける試作品と、機能性能を近づける、またはとにかく早くまずアイデアをカタチにする試作品では、ニーズも異なり、適するハード、ソフト、使う場所、使う人も異なるので、これまでは「何にでもそこそこ使えるプリンター」が使われてきましたが、これからはそれぞれのニーズを高いレベルで満たすツールに枝分かれが進むと思います。また、昨年の世界的な経済の変動、大国の景況悪化、サプライチェーンの問題などから、製造の自国回帰の流れが起きたことと同時に、DDMへの技術的、投資対効果の課題が想定より大きいことが明らかになったりしたことで、3Dプリンティングを試作用途で使う割合がまた増えてきている傾向にあるようで、今年はユーザーにとっても試作開発に3Dプリンティングをどう使うかが、今後の分かれ道になるかもしれません。一方、DDM用途が増えるかどうかは、3Dプリンターの再現性と信頼性、アフターサポート含めた稼働冗長性が今年どれだけ向上するか、また買う側もそれらをコストや成形品の外観・寸法だけでなく、選ぶポイントにしていけるかが今後の分水嶺になるとみています。

・成長の分岐

これまで3Dプリンティング市場のいろいろな統計でも、「3Dプリンターが何台、いくら売れたか」が成長の核だった時代が続いていたと思いますが、今年以降は「サービス」や「材料」も成長の核になり、それぞれが連携しながらも別々の率で成長をしていくと予想しています。
また3Dプリンター産業においても、これまでは少数の欧米企業が全世界に広く売る図式から、特に中国で見られるように、各地域のメーカーが各地域で売るという成長地域の分岐が起こるとみています。
他には、10年ほど前に起きたブームで爆発的に増えたデスクトッププリンターも、当時の見込みより需要が増えなかったり、競争による淘汰もあったりしましたが、最近はデスクトッププリンターも大きく2つに分かれる傾向にあり、これまで同様「安く、小さく、個人やホビー向け」というプリンターと、「小さいけれど、装置も材料も高性能で、高額」で、工法もMEXだけでなく、PBFやVATもあり、材料種も増えてきたことから、それぞれが別の需要と市場で分かれて成長するとみています。ユーザーにとっても、これまで高機能、高品質の部品を作るには大型高性能プリンター導入という一択だけでなく、小型高性能プリンター多数台併用するという選択肢が増えることは良いことだと思いますし、それでも大型高性能プリンターが適する使い方もあり、それぞれの需要で選ぶものは分かれていくと思います。
買う側、使う側においても、3Dプリンティングを含めたデジタルエンジニアリング、デジタルマニュファクチャリングを今年どう使うかが、今後の成長の分岐点になる可能性は否定できないと思います。導入する場合は装置、材料だけでなく、買い方もリース・レンタル・サブスク、もしくは単なる外注ではなく、協働開発を経た製造委託も含め、選択肢が大幅に増えた現状を理解して最善の選択をする、またはまず小さく始めて、柔軟に変えながら活用を拡げていって最善にたどり着くことが重要になると思います。

昨年末に国内でも品質に関する大きな問題が報道され、起きた背景には開発期間の短縮、厳守の圧力があったとも聞こえてきますが、試作検証サイクルの期間短縮と質の向上の両立に3Dプリンティングを含めたデジタルエンジニアリングが即効性のある改善策になる可能性もあると思います。
世界全体には製造産業が直面した原材料価格高、物流停滞や価格高、人材不足や人件費高、グリーンやCO2削減対策など、喫緊課題対策に対して3Dプリンティングが有効である認識が製造大企業中心に広まり、今年は3Dプリンティング産業に追い風となるという見方と、これまで投資マネーや高金利下での借り入れに頼ってきた企業と、実ビジネスで利益を上げられるようにしてきた企業で成長の明暗が分かれるという見方もあるようです。

国内経済や国際競争力復活の処方箋について年末年始の報道の中で、日本の企業も消費者も、「先の不安」からお金を使わなかったマインドを「先の希望」にお金を使うマインドに変えること、価値のある製品やサービスや人材には相応の金額を払う常識が広まること、などがありました。上記の喫緊課題に対しても大中小企業の投資が遅れていたことが日本の3Dプリンティングの低成長につながっていたとすれば、今年はそれが良い方に変わり、この先良い方に向かう分岐の年になることを期待しています。

今回は「分岐」の視点で今年の3Dプリンティングの変化を予想しましたが、VUCAといわれる時代に1年で起こることの予想は何の意味もないのかもしれません。それでもみなさんにとって3Dプリンティングに関わる変化を知っていただき、その時、それぞれの選択肢や分岐点で少しでも良い方向を選んでいただくきっかけになり、お互いに良い1年につながればと願いつつ、今年も様々な情報をお伝えしていこうと思います。

TCT Japan 2024出展のお知らせ

丸紅情報システムズ株式会社は下記の通り「TCT Japan 2024」展示会にブース出展します。

開催日時: 2024年1月31日(水)~2024年2月2日(金) 10:00 ~ 17:00
会場: 東京ビッグサイト 東3ホール ブース番号  3A-13
参加費:無料
主催:株式会社JTBコミュニケーションデザイン

出展製品、参加事前登録など、詳しくはこちらのお知らせをご覧ください。 みなさまのご来場をお待ちしております。

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